工場にて
アドバイス下さい
感想でもいいです
―くもりというには雲が少なく、はれと言うには雲が多い
半端な空・・。
灰色で縁取られた四角い空
ここは、どこか現実の世界の奥の奥。
もしかしたらもっと奥かもしれない
古びた造船工場・・・。
錆びたトタン壁にポツリポツリとしずくが落ち始めた頃
「雨降ってきた!急いで!!」
屋根の上に居る少年に、長い黒髪をおさげにした少女は
朽ちた梯子を持ちながら周りを伺った。
「だってまだ終わってないって・・」
少年は、釘をくわえながら下にいる少女に言った。
冷たい追い打ちは次第に大粒の雨となり少年の作業を遅らせた。
ガンガンガンガン・・・
トタンに釘を打ち付ける作業は単純だが逆に飽きやすいのが
現実だった。
大粒の雨は風と混ざり更に追い討ちをかけてくる。
「なんでこんなことになったんだっけ!?。」
少年は絶やすことなく釘を打ち付けた。
「もとを言えば全部あんたが悪いのよ!!」
雨は少女の服を殴り黒髪をえぐった。
赤と蒼と翠と灰色の空と風景の時間。
事件は起こった。
「スイマセン、、」
時計の針は午前10時を指していた。
「完全集合は午前8時のはずだぞ」
大きな男は腕組みをして少年をにらみつけていた。
男の後ろでは少年と同じぐらいの子供がせっせと持ち場の作業を
こなしながらもクスクス・・・と笑い声が絶えなかった。
「1156号!聞いているのか??!」
大きな怒鳴り声がトタン造りの工場全体に広がった
「君の代わりなんざいくらでもいるんだぞ!!
時間に遅れることは、死罪に匹敵する」
「ハイ。。」
少年は一生名前で呼ばれることはない。
それは死んでからもこれからも・・・・。
一人の人として認められていない。
【モノ】として一種の道具として扱われる。
「さぁ行くぞ1156号」
男は少年の細い手首を握り歩きだした。
継ぎ接ぎだらけの鈍色の床。
少年の視線の先の向こう
赤い服を着た少女が一人。
「待ってください」
声は震えていたがその声は透き通るようにキレイで
まっすぐに聞こえた。
「なんだね?1201号」
沈黙が続いたのち少女は重い口を開いた。
「死罪はあんまりだと思います。それに毎日毎日、朝早くから
夜遅くまで働いているのだから遅刻だってします!」
少女は紅い眼に涙を浮かべながら男に訴えた。
「1201号私に口答えする気か?君も死罪だ!」
男は少女に近寄る。
静まり返る工場内。
屋根裏の扇風機だけが相変わらずカタカタと陽気に回っていた。
「おーい!ここの屋根がめくれておるよ誰か
直してはくれまいかな」
工場の向こうからかすれた声のおじいさんの声が聞こえた。
姿は見えない。
音声だけの声だった。
空はゴロゴロと喉を鳴らし闇色の雲が辺りを覆った。
「はっはい!長官、こいつらがやります。少々お待ちを」
男は大きいくせにペコリとお辞儀すると少年と少女の背中
を押してこう言った。
「命拾いしたなクズども・・」
2人は黙って歩きだした。
工場の外に出たとたん少年は視線を合わさずに少女に言った。
「あれ、魔法だろう?」
冷たい風が頬を滑った。
「そうだけどそうじゃないわ」
蒼い草を踏みながら行く先はもちろん壊れた屋根。
「嘘じゃないのか?」
「嘘だけど嘘じゃないわ」
朽ちた梯子を屋根に立てかけ少年を促す
少年は不思議そうに梯子を上がっていく。
そこには、さっきおじいさんが言っていたように本当に
トタンがめくれていた。
「デタラメ言っていたんじゃなかったのか。。」
トタンの上は足場が悪くめくれたトタンは風化によるもの
だった。
この下はさっきの子供たちが作業をこなしている。
戦争。
魚雷。
造るために。
そして何より勝つために。
トタン屋根の割れた隙間からもれる黒い煙とホコリ、熱風
は子供たちの働く環境を物語っていた。
「ちょっと〜!早く修理しなさいよ!見つかるよッ!!」
大きい声だけど小さい声で言った。
「うぃ〜」
少年は錆びた釘を口にくわえてトンカチを片手に屋根直しを
し始めた。
「おぉ〜君たちは良く私がしてほしかったことが分かったな!」
さっきのおじいさんの声だ。
屋根の下。
かすれた声。
「光栄です。長官、私たちは時間に遅れた罰を受けている
までです」
少女はひざまづいて頭を下げる。
「また1156号か・・。」
溜息をつくおじいさん。いや長官と言った方が良いだろうか。
後書き
上手くかけないけれど私のオリジナル作品の第一作です。
バジルコ×バジルを読んで下さった方は
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