詩的な元OLと下着泥棒

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〇女性

●下着泥棒

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◯目を覚まし見た光景は

●ターゲットが目を覚ました。

◯濃い木の色の天井で

●今日こそは

◯小さい頃から見てたけど

●ずっと夢に見ていた

◯久しぶりに見た気分

●お前の下着を手に入れる。

◯体を起こせば赤い日が

●赤いレースのブラがええな。

◯部屋の窓から差し込んで、

●股に食い込むショーツもええな。

◯スズメもたくさん鳴いている。

●スズメがうるせえ。

◯OLを辞めて1ヶ月。

●下着泥棒を始めて30年。

◯実家に帰って1週間。

●このターゲットに狙いを絞って1週間。

◯都会の速度は速過ぎて

●この女はガードが固くって。

◯けれどずっと諦めなれなくて

●だけど諦められなかった。

◯身体がボロボロになったって

●ここの犬に吠えられたって。

◯心がボキボキ折れたって

●庭でマムシに噛まれたって

◯誰かに認められたくて

●やっぱり下着が欲しくって。

◯それでも認められなくて

●どうしても欲しくって。

◯頑張ってるのは何のため？

●盗んでどうするのかって？

◯働いてるのは何のため？

●下着を盗むのは何のためかって？

◯分からなくってしんどくて

●手に取って感じられるリアリティが欲しいからだよ！

◯伝う涙は何のため？

●どうしてリスクを冒(おか)すのかって？

◯会社を辞めるのは怖かった。

●それが俺の衝動(しょうどう)だからだ！！

◯全てを失う気がしたから。

●全てを失うことになったって！

◯だけど全てを手放して

●全てを手放してでも！

◯なぜか身体が軽いんだ。

●命がけでも構わない！

◯私は着替えて外に出る。

●ぐふふ……。

◯外の空気は穏やかで

●今こそ潜入(せんにゅう)の時！

◯風は優しく肌を撫でる。

●潜入成功。俺はクローゼットを優しく撫でる。

◯近くの公園には紫陽花が

●中には夢に見た下着たち。

◯深い深い青色で

●手に取るブラジャーロイヤルブルー

◯朝露に濡れて清らかで

●清楚(せいそ)な顔して攻めてやがる

◯心を洗い流してくれるよう。

●この宇宙の真理のよう。

◯空には一筋飛行機雲。

●真ん中に一筋伸びるライン

◯青から赤へと伸びていく。

●この赤いショーツもええな。

◯描く一本まっすぐに

●情熱的で官能的で

◯山の稜線超えていく

●刺繍(ししゅう)は洗練(せんれん)されている。

◯深く深く息を吸う。

●スォオオオオオオ（匂(にお)いを嗅(か)ぐ音）

◯どこまでもどこまでも

●オオオオオオオオオオオオ（引き続き匂いを嗅ぐ音）

◯私の身体を満たしてく

●俺の身体を満たしていく

◯新しい力とエネルギー。

●まろやかでコクのある香り

◯苦しくて苦しくて

●甘くて甘くて

◯堪らなかったあの日々も

●もう堪らん！！！

◯辛くて辛くてしんどくて

●深くて高貴で新鮮(しんせん)で

◯受け入れられなかった決断も

●俺の全てを許容する。

◯今は良かったと

●下着泥棒をやってて良かったと

◯心の底から思えるよ。

●心の底から思えるよ。

◯目線を下げれば水たまり。

●ふと窓の外を見れば警察(けいさつ)が！

◯澄み切る空を写してる。

●殺し屋みたいな顔で俺を見ている。

◯私はぬかるむ地面を蹴って

●俺は一か八か

◯水たまりへと踏み込んで

●女の部屋から出て廊下(ろうか)へと

◯風を切って走り抜け

●汗まみれになり走り抜け

◯全身の力で踏み切って

●全身の力で踏み切って

◯空の向こうへ飛び込んだ。

●空の向こうへ飛び込んだ。

◯この水たまりを超えられたなら

●警察の頭上を超えられたなら

◯未来へつながる気がして

●まだ下着泥棒を続けられる気がして

◯水たまりを飛び越えて

●だけど俺に翼(つばさ)はなくて

◯どこまでもどこまでも

●どこまでもどこも

◯地平の果てまで飛べる気がした。

●地面に向けて落下した。

◯——私の人生は、これからなんだ。

●——俺の人生は、これから牢獄(ろうごく)生活(せいかつ)！

終わり

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