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詩集  作者: 新村彩希
25/30

高音のかき鳴らす音が支えて

僕は今日もここに立っている


甘い声も揺蕩う色になったのなら、

この世にいないだろう

酸いも甘いも舞い散り寥々

言の葉は黄落し 僕の中に積もり続ける


笑い損ねた僕の夕焼けに染まる物語

風も花も海も歌い 心から嘲ってみせた

伝えられない思いも 全部捨てて

さようならしよう、きっと過去の記憶と


寂寞を増す旋律に誘われて

僕は今日もここに立っている


波の音が僕と重ね合わさったら

きっと次へ進みたい

酸いも甘いも見限られた心を

紛らわすためには この感情に名前をつけよう


泣き損ねた僕の星色に染まる物語

風も花も海も黒く塗られ 心に通る声もない

伝えられない後悔を捨てきれずに

その初めての気持ちの名はきっと「恋」だった


いつの間にか時は過ぎて

笑う顔も真っ白な部屋も

「大丈夫だね」って言い合ったことも

かすれ忘れ去っていく


白い布に映るその景色に

僕はどう映っていましたか?

僕はどんな人でしたか?


伝え損ねた僕の実に不甲斐ない物語

風は花は海は朝日に 柔らかく照らされた

こんな最後なら君も許してくれるかな

「さようなら」しよう、君と僕とこの世界に


ふと、笑った顔があるように見えた


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