「エアリア・シューデンベルグ」
エアリア。エアリア・シューデンベルグ。
彼女の名前だ。
僕はエアリアに尋ねていくことにする。
気になることだ。
「今更、こんなことを聞くのもあれですが、なぜ僕を助けに?」
「気まぐれだ」
ここで僕は彼女の「これで罪が消えるといいんだが」という言葉を思い出していた。
なぜ、僕の前でこの言葉を呟いたのだろう。
今更、その言葉の意味を尋ねる気にはなれない。
「気まぐれでそこまでしてくれるんですか?」
「悪いのか?」
「いえ、いいことだと思います!」
「他に聞くことは?」
彼女の険しい顔と口調を聞くと、尋ねる気持ちにはなれない。
それに彼女の格好もだ。冒険者だからかもしれないが、いかつい。
しかし、彼女のことが気になる。
美女だからというのもあるかもしれないが、純粋に僕の気持ちがそうさせた。
とりあえず、冒険者ということなので、ギルドでどういった依頼を受けるか聞いてみた。
「一応いろんな依頼は受けるが、基本的に報酬が高い依頼を受けることが多いな」
報酬が高いということは難易度もそれぐらい高いということだ。
彼女には他に仲間がいるようには見えない。
つまり一人で高難易度の依頼を受けてるということになる。
「もういいだろう。私の素性をあまり聞かれたくはない」
そう言われたので尋ねるのはここまでにしておいた。
――
「この依頼を頼む」
「これですね。はいランカーエースNo75、エアリア様」
ランカーエースという言葉が気になった。
「エアリアさん。ランカーエースというのは」
「ああ、それは」
ランカーエースとは世界に100人しかいないと言われる冒険者に与えられる称号で特典としてはそれを誇示できる衣装を与えられたり、ギルドの依頼報酬が上がったり、ギルドカードに記載されるので印籠みたいに使えるといったところだろうか。
しかし、エアリアの格好は普通の冒険者だ。
とてもランカーエースの格好だとは思えない。それについても尋ねてみた。
「あまり、私という存在を知らせたくはないんだよ」
エアリアはそう言うと口をつぐんだ。
まあ、人には知られたくないことの一つや二つはある。
僕もこれ以上は聞かないようにした。
依頼を受けれるのは明日とのことなので、今日、僕たちは近くの宿屋に泊まった。
――
「な、何だ!?」
大きな音がして僕は目を覚ました。
部屋のドアが蹴破られている。
「エアリア、お前を殺せば!!」
大柄な男性がハンマーを振りかざしエアリアに襲いかかって来た。
エアリアは素早くそれを回避し、居合い斬りのような剣さばきで男の首筋に剣をあてた。
「グッ!?」
「これ以上やるというなら命はないぞ」
「女の癖に!」
「その油断が仇になったな」
「ランカーエースはお前のような女がなっていいものではない」
「実力があってこうなったのだ」
「グッ! この!!」
男は首筋に剣を当てられて尚、抵抗した。
エアリアの剣が動いた。それと同時に男の首が吹き飛んだ。
血がドバーッと吹き出るかと思いきや、そうはならなかった。
なぜだろう。
「真理の剣が斬れるという判断を下したということは、こいつは愚かものか」
真理の剣?
初めて聞く名前だ。
――
宿屋の騒動が終わった翌日、エアリアはギルドの依頼を受けにいった。
僕は気になったことがあるのでギルドに訪れた。
「おう。あんちゃん」
ギルドの中に入った途端、突然声をかけられた。
「何ですか?」
「真理の騎士エアリアと一緒にいるとは珍しい」
こいつ? エアリアのことを知ってる?
真理の騎士とは何だ?
「おっ、その目はエアリアが何者か聞きたそうな目だねえ」
そいつは説明してくれた。
エアリアはランカーエースNO75。
知ってるものからは”真理の騎士”という愛称で呼ばれている。
なぜ真理の騎士かというと、それは彼女の持ってる武器が要因らしい。
というのもエアリアは絶対に善いものは斬らない。いや、斬れないんだそうだ。
また、冒険者で一人で女というだけでも珍しいのに、女の中で一人だけランカーエースにまで上り詰めたとてつもなく珍しい人材らしい。
「あれだけ仲間を引き連れないランカーエース様がお前を引き連れるとはな」
そいつは物珍しそうに僕を見つめる。
しかし、こいつは一体何者だ? 彼女のことをここまで知ってるなんて。
「なあに、ただの情報屋だよ。これくらいのことは知ってる」
そいつは僕の心の中を読んだかの如くそう答えた。
「お前も含めて、不思議だな」
僕はその言葉を聞いた後、ギルドを出た。
エアリアは絶対に善いものは斬れない。どういうことだろうか?
エアリアが言い放った”真理の剣”という言葉も気になるし。
彼女の謎は深まるばかりだ。