「旅の始まり」
聞いたところによると、僕はエアリアという方の所持品であるようで、この宿屋(?)というところに連れてこられて、現在にまで至っていると。
どうやらそのエアリアというのが僕の命の恩人なのか。
所持品というところが引っかかるが、ここまでいい待遇を与えてもらった以上、文句はいえまい。
しかし、エアリアというのはどういう方だろう?
名前からして女性だが、もしそうだとしたらどうやって僕をここまで連れてきたのだろうか?
ここに泊まっているということはお金は持ってるだろうけど。
僕のリュックまであるのだから、あの輩共にまで敵対してリュックを奪ってくれている。
女性一人の力でそんなこと出来る訳が無い。仲間でもいるんだろうか?
まあ、どの道助けてもらったことに感謝だな。
さて、今彼女はギルドの依頼を受けに行っているという。
帰ってくるまで時間がかかるらしい。
少し寝るとするか。
――
目が覚めた。
「ん?」
美しい女性の顔が目に入ってきた。
表情は険しいがその美しさは女神かと思えるほどだった。
僕が今まで見た女性の中で一番美しいかも知れない。
「ん? 気がついたか」
僕の声に気づいたのだろう。女性が僕のほうへ視線を向け、声をかけてきた。
「もしや、貴方が」
この部屋にいるということは、ここが彼女が泊まっている場所。僕を泊めてくれた場所なのだ。
「怪我が治ったら伝えてくれ。所持品という扱いから解放してやる」
とりあえず、経緯を聞いてみた。
何でも僕が輩共にやられているところに彼女が通りかかったらしく、普通に助けたという。
うん。それもう普通じゃないから。
「これで罪が消えるといいんだが」
彼女のこの言葉が印象に残った。
――
怪我が治った。
彼女と別れることになったんだが……。
「待って!」
僕は彼女を呼び止めた。
「どうした?」
「貴方に付いていきたいです」
咄嗟に出た言葉だった。
迷惑かもしれない。
でも、このまま元の生活に戻っても意味がないような気がして。
僕は彼女に何か期待してるのかもしれない。
彼女は旅をしているという。
その旅に付いてくることによって僕の中の何かが変わるのかもしれない。
「迷惑だ。帰れ」
「どうしても貴方に付いて行きたいんです。お願いします!」
「私に付いて行ってどうしたいというのだ?」
「分かりません。でもこのままだと何か納得が行かないんです」
「根拠になってないな」
「貴方の旅に付いて来る事によって何か得ることが出来るかもしれないんです。お願いします!」
「……私の旅は甘くはないぞ?」
「それでも付いて行きたいです」
「……勝手にしろ」
こうして僕と彼女の旅が始まった。