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異世界クロスオーバー 〜世界を渡り歩く俺が最強になるまで〜  作者: ノル川一二三
第1話 黄金剣世(オーロ・ソードワールド)
5/8

5 ダイヤモンドとアメジスト

 突如現れた、剣客。

 その正体は定かではないが、紛れもなく剣を携えた勇者であった。


「何だお前は……?」

 リーダー格と思われるのゴロツキが訝しげに尋ねる。


「——僕はジャック。

ダイヤのジャックと言えばよくわかってくれるかな?」


「ダイヤ……まさか、金剛刃ダイヤモンド・ブレードの……!?」

 ゴロツキの一人は何かに確信したように狼狽した声を上げた。


 ご名答、と言わんばかりにジャックはロングソードをゴロツキに差し向ける。

 俺には何だかよくわからないが、どうやらすごい人物らしい。


「さぁ、今すぐここを立ち去るんだ。ここに倒れている彼のようになりたくなければ」

 ジャックの剣先が倒れたゴロツキへと向けられる。


 何というか……助けに来てくれたのは有り難いのだが、挑発してるようにしか見えなかった。


 その挑発とも取れる警告に、ゴロツキたちが反応しないわけがなく、もはや俺のことなど目もくれずジャックへ襲い掛かった。

 ジャックはその場を離れようともせず、ただじっと剣を構えている。


 どういうつもりなんだ……?

 複数相手に一人で立ち向かうなんてバカのやることだ。俺はジャックへ加勢をすべく、大地を蹴った。


「——君はその場を動くな!!」

 ジャックが俺へ視線を向け、予想にもしない言葉を投げかけた。


 あいつ何言ってるんだ……!? このままじゃ勝てるわけないのに……!




 心配をよそにジャックは微笑を浮かべる。


 次の瞬間には片方のゴロツキの武器が宙に弾き飛ばされていた。

 一瞬何か起きたのかわからなかったゴロツキは慌てて腰元から新たに短剣を取り出し再び襲いかかる。

 しかし、ジャックの剣戟はその上を行く。

 対する二人の攻撃をヒラリヒラリと躱し、余裕の表情を見せる。その立ち居振る舞いにはゴロツキたちにはない落ち着きがあった。


「卑怯者だな、彼ら2人に対して3人がかりで襲いかかるなんて。しかもその内1人は女性だ、恥ずかしくないのかい?」


 勇者の挑発にかかったゴロツキの一人が馬鹿正直に前から突っ込み、直後、背後を取られる。

 ジャックの扱う金剛刃ダイヤモンド・ブレードの刀身が白色に輝く。白光の一閃を受けたゴロツキはその場に倒れ、宙には剣の残光だけがある。




 しかし、その隙を狙ったリーダー格のゴロツキが勇者に襲いかかろうとしていた。




「――ジャック、私もお供します!! 行け、紫水刀アメジスター!!」

 草陰から新たな一人の少女が現れ、ゴロツキの一撃を持ち前の短剣で防いでいた。


 ギリギリのところでジャックを助太刀したのは、見た目こそ幼いが、これまた歴戦をくぐり抜けてきたような風貌をした女剣士だった。

 小柄だが、立派な剣を掲げ、凛と咲く花のような少女。


「助かったよ、ユピシー」


「まったく、挑発して背中を取られるなら命がいくつあっても足りませんよ」

 ジャックの仲間らしき女剣士、ユピシーは少し離れたところから、軽率なジャックの行動を諌める。




 最後のゴロツキは一旦、二人の剣客から離れ体勢を立て直していた。形成逆転に流石に焦りを感じているのか、苦渋の表情を浮かべている。


「これ以上、彼らに手出しをするなら容赦はしない。即刻立ち去るがいい」


 ジャックは最後に残ったリーダー格のゴロツキに再度警告する。

 しかし、最後のゴロツキは現在進行形のピンチであるにも関わらず、ニヤリと笑って見せた。

 その表情にジャックは何かを察した。


「しまった! まだ生きていたか――!」

 ジャックが斬り伏せたはずのゴロツキの一人が立ち上がる。その一人は完全に油断していた女剣士、ユピシーの方へ殴りかかろうとしていた。ユピシーも遅からずそのことに気づいたが、最早避けきれないことを悟り頭を抱えてうずくまった。






「危ねえ――――!!」

 今まで呆然と立ち尽くしていた俺は、気づくとその場に向かって走り出し、ナロート・ディバイダーの柄の部分をゴロツキの脳天に叩きつけていた。


 そのまま気を失ったのか、ゴロツキはふらふらとその場に倒れこんだ。


 最後のゴロツキは今度こそ状況を不利と判断したのか、その場から逃げるように去っていった。

 ジャックは無事だったユピシーの姿を見て安堵を見せる。

 釣られて俺も、ディバイダーを地面に降ろしため息をついた。

 しかし、これは我ながら大活躍ではないだろうか。




「……あの、あの! 助けて頂きありがとうございます!!」


 突然、さっきの女剣士に手を握られ礼を言われる。顔を見れば目に涙を浮かべこちらを見上げてくる。さっきの戦いの時はよく見えなかったが、見れば端正な顔立ちをしている。

「いや、助けてもらったのはむしろ俺の方で」


「あなたは私の命の恩人です! あの、お名前は……?」


「――あぁ、そいつの名前はショーイチ、私を必ず助けるとか言っておいて何もできなかった間抜けよ」

 今までどこにいたのだろうか。最初からそこにいたかのようにプレディは現れた。俺に対するその物言いのせいか、ユピシーはムッと顔をしかめる。


「あなた何ですか? ショーイチ様は私を助けてくれた命の恩人ですよ、間抜けなんかじゃありません」


 いや、まぁ事実なんだけどな……。


「こら、よさないかユピシー。あの人はこの国の王女、プレディさんだ。あまり失礼なことを言うもんじゃないよ」


「あら、あなたは物分りがいいみたいね、名前を教えてもらえるかしら」


「申し遅れました。僕はジャック・セラン、世界各地を回って人助けを専門にしている剣士です」


 さしずめ、勇者といったところだな。


「そんな大それたものじゃありませんよ」

 俺の言葉にジャックは笑って答えてみせる。こうしてジャックは謙遜しているが、さっきのゴロツキをバッタバッタとなぎ倒すことからわかるように相当な実力者のようだ。


「――ショーイチ様、私はユピシー。ユピシー・ドーボギーって言います! どうぞよろしく!」

 そこで俺はようやく彼女の顔を真正面から見ることになる。剣士でありながら、まだ少し幼さの残るお転婆娘、後ろで結わえた髪が時折可愛らしく揺れるのが特徴的である。

 俺が彼女に抱いた第一印象はそんな感じだった。

 鼻と鼻がぶつかりそうなくらいまでユピシーは俺に近づき、真剣な眼差しを向けている。これだけされれば忘れたくても忘れられないだろう。


「あ、あぁ……渉一だ、よろしく」

 俺は若干引き気味に返事をする。ユピシーはそれで満足したのか屈託のない笑顔で応えてくれた。

 しかし、何というか美少女に寄られて嬉しいことは嬉しいのだが、少し積極的過ぎる姿勢に俺は辟易とした。


 ユピシーか、こっちはこっちでまた実力者って感じだな……。


 ゴホン、と話を仕切り直すためジャックは咳払いをした。

「それで、プレディさん。僕たちはあなたを王国へ連れ帰るために馳せ参じました。あなたには僕たちと共に王国へ戻ってもらいます」


「ああ、やっぱりバレてたか」

 プレディはもったいぶった溜め息をつき落胆する。


「なんだか事情が見えてこないんだけど、どういうことなんだ?」

 俺の率直な質問にジャックが答えようとするのを、プレディは手で封じるジェスチャーを出してやめさせた。




「私は昨日の夜、自分の部屋を抜け出し王国を飛び出したの。さっきはその途中だったってわけ。そこに、お父様の命令でしょうね」


「私たち勇者は国王に命じられて姫様の行方を探しに来たのです、ショーイチ様」

 プレディの説明にユピシーは口添えする。


 なるほどね、こうして物語は繋がってたと言うわけか……。


「それにしても軽率が過ぎます! あと少し遅ければ……まったくどうしてこのような森に?」

 ジャックの怒ったような困ったような声音がプレディに向けられる。


 同感。とんだ迷惑な姫様だ。


「そんなの見つからないために決まってるじゃない。人を隠すのは人の中でも私の場合は目立ってしまうわ」

 その余りにも確信的な物言いに俺たちは絶句するばかりである。


「あんた、どこかを目指してたのか?」


「北の街、タニモまで行きたかったのよ。あそこは静かでのどかだから。

――そうだ、どうせなら王国に戻る前に私を北の街に連れてってよ!」


 また、そんな勝手な。


「その通りです! 今すぐ戻りましょう」

 俺の意見に賛同したジャックが説得を試みる。プレディは「何でよ、ケチ」と、頰を膨らませて抵抗する。


 この王女なら旅先でまたトラブルを起こすのは火を見るよりも明らかだ。おとなしく諦めて戻って欲しいもんだな。


「いいんじゃないですか、国王には安否だけを伝えておけば」

 そこにユピシーがなぜか口を挟む。


「そうそう、たまにはあなたもいいこと言うのね。ドーボギーさん」

「お褒めに預かり光栄でございます、お姫様」

 二人の間に得体の知れない光線が飛び交う。腰の低い男二人に口出しの余地はなかった。


「……少しだけですよ」

 あっけなく勇者は折れた。おいマジか。




「ジャック・セラン、ユピシー・ドーボギー、そしてショーイチ。王国に戻り次第、あなたたちには相応の褒美を与えましょう」


 さり気なく俺の名前が入っていることに驚く。さっきは散々に言っていた癖に、一応約束は守るのな。


「その代わり、タニモの街では私を楽しませなさい!! これは絶対よ」

 プレディはまたもや勝手な交換条件を持ち出し、天真爛漫な笑顔になるのだった。






 画して今日、泡沫の奇妙なパーティーは結成されたのである。

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