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異世界クロスオーバー 〜世界を渡り歩く俺が最強になるまで〜  作者: ノル川一二三
第1話 黄金剣世(オーロ・ソードワールド)
4/8

4 A面 剣の世界

 第1話スタートです! お楽しみください!!

 気がつくと俺は森の真ん中に突っ立っていた。


 耳をすませばどこか遠くから音がこだましている。聞こえるのはキィン、キィンと金属同士がぶつかる音。




 どうやら、俺は――――

「……剣の世界に、来てしまった……?」

 やべえ、帰りたい。


『――気分はどうじゃ? 渉一』

 空から「作家になろう」の神、ナロウの声が聞こえる。しかし姿は見当たらない。


「どうもこうも、お前……俺だけを放り出して、自分は高みの見物かよ!?」

『いけないか? 神がなぜ貴様のような人間に付き合う必要がある。それにその世界を望んだのはそなた自身じゃ。まずは黙って歩くことじゃな』


「誰がいつ望ん――」

『反論は許さん』

 今頃、向こうの世界でナロウが生意気にドヤ顔をしている姿が目に浮かんだ。


 こうなってしまうともうどうしようもない。覚悟を固めて森の中を突っ切るしかない。

 しかし何もこんな場所からスタートさせなくても、ファンタジーなら王国か小さな町からのスタートでもいいじゃないか。


『わがままを言うな、これはゲームではなくて物語なのじゃ。入り込む以上、話に沿うしかあるまい』


 ……なるほどね。

 俺自身、この作品はあらすじしか読んでいなかったので詳しいストーリーは知らないが、セオリー通りに行くなら恐らくこの先勇者に出会うことになるはずだ。そしてその勇者こそがこの物語の主人公……のはず。


 それにしても、勇者に、剣の世界、か。

 俺も片手に巨大な剣、《ナロート・ディバイダー》を抱えてはいるものの、こいつはどこか頼りない。質感はプラスチックっぽいし、軽いし、無駄にでかいし、おまけにこれっぽっちも切れ味が無さそうなのである。

 下手すりゃハサミよりも切れないんじゃないか?


 とにかく一番の問題はその大きさによる携帯性の悪さだった。全長170センチ程のその剣は俺の身長とほとんど同じくらいのサイズである。持ち手はあるが、長い時間片手で抱えるには適さないだろう。

 よって俺はブレード部分を右腕と脇で挟むようにして抱えるのだった。

 側から見れば等身大パネルを抱えるオタクのようなものだろうか。もっともこの世界の文明にそんなものは多分ないだろうけど。




『どうやら、そちらの物語も動き出すみたいじゃぞ。後は自分で考えて進むことじゃな』

「なっ……ちょっと待てよ!」

 唐突にそれだけ伝えると、ナロウは二度と言葉を発することは無くなった。




 いよいよ始まるであろう本番を前に、俺は足がすくむのをひしひしと感じていた。

 ナロウによる、始まりを告げる言葉の直後、森の奥から人の気配を感じた。どうやら、誰かがこちらに向かって走ってきているらしい。

 どんな人物かわからない以上、俺は持ち前のディバイダーを構えることになる。いざという時はこいつで相手をするしかない。

 じりじりと、すり足をしながら奥の様子を伺う。もちろん背後の確認も怠らない。


 すると、俺が予想していた森の奥からではなく、真横のけもの道からその人物は現れた。


 飛び出したのは、屈強なモンスターでもなく、主人公然とした勇者でもなく、一人の美しい女性だった。

 こんな鬱蒼とした森には似つかわしくない、華々しい女。純白のドレスを身にまとったその姿は見る者全てが納得するような高貴さを備えていて、まるで一国の王女のようだ。


「ちょっとあんた、この辺で勇者を見かけ――」

 見かけなかったか? と続けようとしたのだが、俺の質問が終わる前にその女はドレスの裾を持ちながら走り去っていった。最初から聞く耳を持たないようなその態度に俺は少し腹が立った。

 ただの女とは思えないほどのスピードで、その女は俺の視界から遠のいて行く。


 通り越して少ししたところでようやく俺のことに気がついたのか、女はこちらに顔を向けた。




「――何してるの!? あなたもすぐに逃げなさい!!」




 女の切羽詰まった声が俺にかけられる。よほど慌てているようで、俺に構うのも精一杯のように見えた。


 え、――逃げる?

 そこでようやく、俺の質問は無視されたわけではなく、無視せざるをえなかったということに気がついた。


 謎の女が通ったけもの道の奥からは3人のいかついゴロツキらしき連中が押し寄せていたのだ。何やら物騒な武器と格好で、女を絶対に捕まえてやろうと、息巻いている。

 その鬼気迫る勢いに押され、何も関係ない俺の方まで無意識に女の後を追って駆け出していた。


「――おいあんた! なんであんなやつらに追われてるんだ」

 俺は女の横にまで追いつき、息が上がるのを承知で質問した。

「知らないわよ! 奴ら人を見たらとりあえず襲いかかるような連中よ。特に私みたいな王室の人間はね!!」

「あんた……やっぱり王女だったのか」


「当たり前でしょ! あなたこの国にいる癖してそんなことも知らないの……ってあなた剣を持ってるじゃない」

 謎の王女は俺が右腕に抱えていた大剣に着目していた。

 剣……嫌な予感がする。きっとこの王女様は二言目にはあの言葉を――――




「戦ってよ! 私のために」

 ああ、やっぱり。


 王女の威圧的とも高圧的ともとれる命令の前に俺は為す術なかった。

 決心するや否や足を止め、身体を180度反転させる。


 ゴロツキたちも俺の意思を理解したのか、走ることをやめていた。

 しかしどうしたことか、ゴロツキたちの興味は俺の方へはあまり向けられていないようだった。

 驚くことに俺に命令した王女までもが足を止めていた。


「何してるんだ、あんたは逃げろよ」

「あなたに戦わせる以上、私もここから離れるわけにはいきません」


 その言葉に俺は呆れざるを得なかった。

 変なところで義理堅いんだな。まぁ、それが王女たる所以なのかもしれんが。


「――私、プレディ。あなたは?」

 王女……プレディは後ろから俺に語りかける。こんな時だと言うのに肝のすわった女だ。


「俺は……渉一だ」

 どう名乗るべきか一瞬ためらって、そんなことに迷っていられる状況でもないと再認した俺は正直に本名を名乗った。

「ショーイチね。あなたへの褒美は惜しみません、その代わり必ず勝利しなさい」




「勝ってやるさ」

 とカッコつけて言ったのはいいものの、勝てる見込みはない。一人一人を狙い打ちできれば勝機はあるかもしれないが、まず不可能だろう。

 相手はとっくに成人を迎えたような屈強な男3人、それぞれが斧なり剣なり、大きさだけに頼った粗暴な武器を持っている。


 対してこちらにまともな得物はない。

 確かに剣を持ってはいるが、ナロウ曰くこれは対主人公用のものらしいし、おまけに俺は剣を振るった経験がまるでない。

 せいぜいこの剣が果たせるのは鈍器としての役割くらいだろうか。


 正直今からでも逃げるよう説得したいのだが、どうもこの王女様はプライドが高そうだ。一度自分の言ったことは絶対に曲げないのだろう、相手のことにしても自分のことにしても。

 ゴロツキたちもどうやらもう待ってはくれないらしい。俺がディバイダーを構えたなら、すぐにでも襲い掛かってきそうな雰囲気だ。




 ――どうする……どうすればいい……!!

 俺が迷いためらい続けていると、ゴロツキ連中の一人が不自然にバタリと倒れた。

 ゴロツキの背中には鮮やかな一閃が走っている。


 誰もが息を飲む状況、プレディの目はただ1人のもとへと向けられていた。

 軽装に盾と剣、赤いバンダナを額に巻いた立ち姿。






「――よかった、間に合ったみたいだ」

 この状況をひっくり返した存在。

 現れたのは一人の勇者だった。

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