会議室②本日は企画会議をお送りします
いつもの、あの会社からお送りします。
『Love Situation』
略して『らぶシチュ』は、新しく発売された乙女ゲームである。
テーマは「禁断の愛」という、そこはかとなく年齢制限を感じさせる作品に仕上がっている。
[ゲーム発売一年ほど前]例の、とあるゲーム会社の会議室にて
〜恒例の企画会議をお送りします〜
「……なるほど、『禁断の愛』か」
本日の佐々木部長は、まだ普通の顔です。いつもどおりの、眼鏡が素敵な美形様でいらっしゃいます。
「はい、『乙女の夢』を詰め込んでみました」
田中…、自信満々だな。俺はお前の出す企画書を、まったく信用していないぞ。……頼むから、あんまり部長を怒らせないでくれよ。
「『禁断の愛』ということで、主人公と攻略対象は『年の差』恋愛にしました」 ……ふーん、思ったよりまともか、…ん?
企画書をめくった部長の顔が引きつった。なんだ、なにがあった!?
「……田中、何故コイツはランドセルなんだ?」
え、今回の主人公って小学生?
まさか!?いろいろ条例に引っ掛かるんじゃないか!?確かに、話題にはなるが……。
……田中、すげえアイディアだしたなあ。
えーとなになに……『主人公』→平凡。逆ハーも可。
……雑な説明だな。でも、着てる服はブレザーだよな。小学生じゃないじゃん。
じゃあ攻略対象か。『年の差恋愛』って言ってたもんなぁ。どれどれ、相手は……下が小学生、上が二十代後半から五十歳って、どういうことだ!!乙女ゲーの範疇を超えてるだろう!?
「で、年の差だけではあまり禁断っぽくなくて」
「……田中、これは『禁断』ではなく『犯罪』だ」
「え〜?でも五歳とか十歳さんて大した『年の差』じゃないし。いっそのこと、有り得ないくらいのがいいかと思ってー」
……田中っ!アホー!部長に対して、口調が砕けすぎだあぁ!
うおお!般若様が降臨されたー。超怖えぇー。眼鏡がめっちゃ光ってるぅ!!見えないけれど、般若様の後ろにどす黒い怒りのオーラを感じるぜ。……今、うっかり居眠りとかしてたらやべえな。資料を見てよう。
「でー、わざわざつじつまを合わせるために、キャラ考えました」
なになに。
小学生→妹の友人
中学生→友人の彼氏
二十代後半→姉の夫
三十代→新婚教師
四十代→友人の親
五十代→義理の父
……あと、隠し攻略対象が……同性?
「兄とか弟とか、叔父とか教師とか、ありきたりじゃないですか」
……だからってわざわざこんな、需要のなさそうな攻略対象を作るな。
「ネットで『禁断の恋』を調べたら、『不倫』『浮気』『略奪愛』『複数股』『同性愛』って出たのでキャラ付けのために入れときました」
田中、いらんことをするな。
般若様が大魔神様に進化されてしまったではないか。怖すぎて、俺にはもう直視ができないぜ。
「……あれ?」
「山本?……どうかしたか」
やべっ!つい口に出してしまった。部長もこっち見てるっ!
「いや、なんか攻略対象のページに『犬』がいるんですが……」
やっぱ、見間違いじゃないよな…。『ポチ』雑種。雄。主人公のペット。
「あ、それ『究極の禁断の愛』です」
……田中、お前ってやつはアイディアとか目の付けどころとかはいいのに、ホント残念な奴だよ。
佐々木部長の様子は……、ダメだ。すげえ悪い笑顔だ。無茶振りする気満々だ。
今回の会議で決まったこと。
テーマ『禁断の恋』
主人公『高校生』
攻略対象『年の差は±10歳』
裏テーマ『複数股』と『略奪愛』
……『乙女の夢』ってこれでいいのでしょうか?
あ、親友とペットは攻略対象として採用だそうです。
ありえない『禁断の恋』の方が、ありそうな気がする不思議