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第二章 第七話



『大気よ、刃となり、舞え!』


 雪菜の『命令』によって、固形化した空気が宙を舞い、残りの蜘蛛の糸を切り裂く。

 結局、それがトドメになった。

 雑木林の上でのたうちまわる糸は未だにあったものの、もう追加もなく……中空に空いていた世界の穴も塞がったようだ。


「……ホントに使えるんですか?

 この男は……」


 能力を解除して銃を虚空に消し去った碧は、表情一つ変えず、だけどどこか呆れた声で気絶している少年を見下ろす。


「ホントにあの時の方と同一人物でしょうか?」


 雪菜も倒れている速人を見下ろして、ため息を一つ吐く。

 いや、部下が揃えてきた状況証拠、そして自分の記憶、碧の言葉……それら全てを統合しても、前回の戦いで暴れ回った人物は、この黒沢速人であると証明している。

 だが、今日直接会った限りでは、普通の人間に見えた。

 あの暴れっぷりも、凶器を思わせる雰囲気も、狂気そのものに滲んだあの瞳も、そしてあの凶悪な能力も。

 それら全てを欠片も感じないほど、普通の人間としか思えないのだ。


 ──その挙句に……コレである。


 吹っ飛ばされたことによって頭から血を流し、気を失っている彼は、怪我の再生すら行っていないようなのだ。

 桁外れの治癒能力は、夜魔の基本的な能力だというのに……である。


「……取りあえず、屋敷に運びましょう」


「はい。お嬢様」


 二人は揃ってため息を吐くと、横たわったままの黒沢速人という少年の評価を、一時的に保留にしたのだった。


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