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憑き甘く  作者: ネイブ
夏休み
32/34

夜会襲撃事件2

1のその後。

何時もより大分短いです。

 暗闇で膝を抱え(うずくま)っていた。ベットからは()えた匂いがして使う気になれなかったからずっとそこで寝ていた。

 トイレは辛うじて綺麗だったけど、衝立(ついたて)も何もなく剥き出しだった。窓のない壁には勿論装飾や壁紙はない。ドアは鋼鉄でドアノブはなかった。


 何時も寝ている場所から一番近い隅の壁に(もた)れて蹲り直した。

 ご飯も冷たくて美味しくない。食べないでいたら無理やり口に突っ込まれたから、大人しく食べる事にしている。だけど、昨日寝る前に胃がむかむかして吐いてしまった。


 ……あんたも面倒な子ねェ。全部ぶっ壊しちゃえば良いじゃなァい?……


 内側から響いて来た声にビクリと背筋が震えた。耳を塞いで首を振った。

 怖い。誰。いや……知りたく、ない……何も、云わないで。

 話しかけられた声を拒否して震えていると溜息を吐かれた。不機嫌丸出しの声で、内側から更に声が響いた。


 ……もうすぐお時間よォ?それにしてもあんた、あたしに負ける前にアイツらに壊されちゃいそうねェ。ツマンナーイワー。……


 鉄の扉が嫌な音を立てて開いた。隅っこに更に引っ込み縮こまる。

 またあの人達がやって来たんだ。扉から入る前にこっちに向かって何かの魔法――……“拘束”とォ“服従”ねェ……――を掛けてきた。身体が動かなくなり、呼吸が荒くなる。苦しい。

 猿轡(さるぐつわ)と手錠と足枷をされた。首輪を引かれ立ち上がる。目隠しをされている所為で何も解らない。

 よたよた引かれるままに歩きだす。何度か転びかけたけど、それも鎖で引かれて無理やり歩かされた。


 あぁ、今日もまた、変な事をされるんだ。

 胸の中に重たい重石(おもし)が乗ったような気がした。台の上に乗る様に指示されると体が勝手に動いた。よたよたゆっくりと上がる。


 体中に何かを巻かれて、針が突き刺さった。痛い。

 だんだん、頭が真っ白になってくる。手足が痺れてきた。猿轡が外された。耳に獣みたいな声が聞こえた。最初は解らなかったけど、自分の声だったらしい。こんな声をしていたのかな。もう忘れちゃった。


針から何かが出てきて体中がひめいをあげてる。

いたい。


 あたま……が……とけ、……が……ちぎ、れ、ちゃう……しんぞ……あぁ、い、いたい!いたいよぉ!

 からだからなにかがでていったきがした。ごっそりと。そしたら、いたいのがなくなって、ピーって音が聞こえるようになった。

 荒い、獣みたいな息遣いの合間に色んな人間の声が聞こえた。



「「「「「「「「「「なんて事だ是非献体してもらいたい気味の悪い殺処分奇跡王家に仇なす化け物研究が何処かの部位をうちに心臓まで裂いて」」」」」」」」」



 誰か助けて。

 誰か助けて。

 誰か。誰か。誰か。誰か。


 何度も何度もそう願っても、また今日も誰も助けてくれなかった。

 ちゃんと解ってる。内側の声が教えてくれた。色んな人が動いてるって。誰かが何かをしてくれていて、助けようと頑張ってくれているて、ちゃんと知ってる。はずなのに。


 お友達にも、弟にも、パパにもママにも、会えない。人間じゃないかの様に扱われる。化け物めって、罵られた。

 内側から響く声が怖かった。何も聞きたくなかった。でも、唯一の話し相手だった。あの日々があったから、少しだけだけど、あっちのことを少しは理解する事が出来た。


 日付の感覚はなかったけど、多分そんなに長くなかったんじゃないかと思う。

 内側の方も、何もしなかった――できなかったから、かもしれない。


 気付いたらパパに抱きしめられていて、ママが泣いていた。気付けば自分の家の、慣れ親しんだ部屋のベットの上に慣れ親しんだ髪と顔で――親しみの無い色の瞳をした人間が、居た。


 この化物は、誰だ。





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