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憑き甘く  作者: ネイブ
1学期
21/34

夜会襲撃事件1

事件の当事者である、ある子供の視点。


 新しいくつはピッカピカ。服も新しくてママに「あなたの目の色にぴったりよ」って云われた。パパとおそろいの青い目は昔から自まんだったからうれしくって、ママに抱きついた。ママの目も好きだよって云ったら「ありがとう」って頭をなでてもらえた。


 夜会に行ってみようかってパパに云われたのが一月前。それからずうっと、とっても、とおっても楽しみにしていた。


 夜会の間は、おとなしくしていてね、っていつもよりごーかな服を着たパパとママに云われた。うんって云ったら、おでことおでこをごっつんこして、えらい子だねってパパが云ってくれた。ホントはなでて欲しかったけど、リュンユがあんでくれたかみの毛がぐしゃぐしゃになっちゃうから、我まんした。


 キラキラビカビカしたおっきいシャンデリアが頭の上にあって広間はまぶしくて、キレイだった。でもお家のシャンデリアの方が好きって云ったらパパが笑ってた。

 だってお家のシャンデリアの方がいっぱいいろいろかいてあってキレイなんだもん。


 広間でいろんな人にカワイイねっていってもらえてニコニコが止まらなくなった。

ママに、ゴキゲンね。ってからかわれたからしたくないのに、ほめられるとすぐに口が上がっちゃう。はずかしくてママのそでをつかんだらパパがすねちゃった。

 はずかしいパパ。そう云ったらまわりのおじさんが笑ってて、えらい子だね。てまたほめられた。やっぱり笑っちゃた。でもなんでほめられたんだろう。


 もうちょっとしたらパパが帰ろうねって云ってた時間になる。

 たくさん練習したオジギもちゃんとできた。何回も。しっぱいしなかった。明日、マニーにちゃんとできたよって云おう。きっとよろこんでくれるよね。

 今日の夜はパパとママとまたおねんね。何年も前からずぅっとひとりだったから、パパとママとねるのはひさしぶりですごく楽しみ。

 明日はおべんきょうも習いごともお休み。


 うん、うん。いいこといっぱい!

 やっぱり占いしのおばあちゃんが今日がいいっていってくれたからなのかな。だからこんなキラキラしたところでキレイな服を着て、いいにおいのお風呂に入ったりできたのかな。じゃあちょっと早かったのかもしれないけど、夜会に来れてよかった。


 かべの方までケーキの乗ったお皿を持って歩く。みんな真ん中の方でダンスとかお話とかしててかべの方には人がいなかった。ゆっくりお皿の中のモノを食べようと思ったからかべの方に行くことにした。

 はしっこに着いてかべにもたれたら、ふぅって息が出た。いいことがいっぱいあって楽しいかったけど、いいことばっかりでちょっとつかれちゃった。

 それにここはお友だちの声が聞こえないからちょっとだけさびしくて、好きじゃないし。パパとママが云うには安全をコウリョした結果なんだって。ここを出たらまた会えるから我まんしてる。


 今はパパとママは王様とお話し中。むつかしいお話だからごはん食べててねってママに云われたけど、もうお腹いっぱいになっちゃった。それにお料理もお家ののほうが好き。

 ミュンデとパズサガがどんな料理が出るか見てきてねって云ってたからいっぱい食べたけど、お家のグラタンのが好きだなあ。2人にもちゃんと云っておこう。

 2人のごはんの方がずっとずぅっと好きだよって。


 食べれなくなったあまくてちっちゃいケーキをすみっこでつっついてたら、女の人がいた。気づいてなかったから、びっくりしちゃった。女の人がうずくまってちっちゃくなってから気づかなかったんだと思う。

 お皿をおいて、ちょっとだけ急いで歩いて、話しかけに行くことにした。ホントは走りたかったけどマニーに怒られるかもしれないからガマンした。ピカピカのくつで、すこしだけ足もいたかったし。近づいて、ちょっとまよって、そっと女の人のそばにしゃがみこんだ。


「おねえさん、だいじょうぶですかっ?」

「…………少し気分が悪くて。ねぇ、もうちょっと近くに来てくれないかしら」


 ベールの間から見えたはだは深いシワがあって、お化しょうの粉がポロポロでてきてた。それに、くちびるがガサガサで、それはリュンユが冬になるとクリームをぬってることを思い出させた。そのガサガサの真っ赤なくちびるからゲホゲホとセキが飛び出して、女の人はとっても苦しそうにしていた。そっと背中をさするとゲホゲホとおねえさんがまたセキをした。それがとっても辛そうだったから、人を呼びに行こうと思って立った。そうしたらおねえさんに手をつかまれて止められた。


「待って。あたしは外に出れば大丈夫よ。ねぇ、あなた、手伝ってくれないかしら?」

「でも、パパとママがごはん食べていてねって……」

「まぁ、あなたのパパとママは苦しんでる人間を見捨てなさいと云ってるの?」


 なんてひどい。とおねえさんがまたセキをした。今度はさっきのより長くて声も大きかった。

 そうだ。パパとママはこまってる人がいたら助けられるやさいい人になってねって云ってたよ。弟ができたんだから、やさしくてしっかりした人にならなきゃ。それにおねえさん、苦しそうだし。パパとママのいる方を見ようとしたけど、テーブルがジャマで見えなかった。

 ……ちょっとくらいなら出てもだいじょうぶだよね。


「お外に出たら、よくなりますか?」

「えぇ、えぇ、もちろんよ。悪いんだけど、手を貸してくれるかしら」

「はい」


 大きな扉を2人でガンバっておして開けた。とびらの外にはだれもいなかった。入るときはヨロイを着たおにいさんたちがいたのに、どうしたんだろう。おトイレかな。


「こっちが良いわ。お庭なら風も吹いていて、きっと楽になれるもの」

「……………………」

「どうかしたの、あたしはお庭に行きたいの。あぁ苦しいわ。お願いよ。早く行かせてちょうだい」

「あ、はい。こっちですよ」


 ヘンなの。あの広間を出たのにお友だちがいない。もしかして、広間から出たの気づいてくれてないのかな。おむかえに行くねって云ってくれてたのに。


 お庭に着くと、おねえさんがふん水の近くにいきたいっていったから、いっしょに行く。実はふん水のところに行きたかったから、ちょっとうれしいかった。

 シャワシャワと水がながれててとってもすずしい。お月さまは雲が多くて見えないけど、風がちょっとつよいから、そのうち出てきてくれるかも。空を見てぼんやりしていたらおねえさんがうめいた。


「だいじょうぶですか?」

「………………」

「?苦しいですか?やっぱりだれか人を――」

「あぁ、いいのよ。いらないことしないでも。それにしても、アンタってホントにオイシソーねェ」


 おくすりとかもらってこよう。そう思って歩き出そうとしたらおねえさんがすくっと立ちあがった。びっくりして思わず後ろにひっくりかえった。服……よごしたらおこられちゃう。

 って、そうじゃなくって。


「もう……へーき、ですか?つらくないですか?」

「もっちろんよォ。元気元気。だから、オネエサマに食べらてみましょ」

「……え?」


 真っ黒いベールの間から見えるくちびるは、どこもガサガサしてなんかなかった。とってもツヤツヤで、お月さまの明かりもないのにギラギラ光ってた。あのおっきなシャンデリアのある明るいところで見えてた時よりも、ずっとはだが白くてシワなんかどこにもなくてツルツルしてた。キレイに両方のはしが上がった口から、白くて長いキバが見えて、それはだんだんのびていったみたいに見えた。

 気のせい、かな。

 

 いや、それよりも食べるって、何を?


「耐えられたらァーアンタの、勝・ち。負けたって、アンタは負けた事も解んないんだからだァーいじょおぶよ」


 歌うよにささやくおねえさんにブルリと体がふるえた。おねえさんがこっちに手をのばしてきたのをよけようとしたけど、いつのまにかアゴをつかまれてた。ムリヤリ顔が上を向かされた。するとおねえさんが顔を近づけてきた。

 その時大きな風がふいた。お友だちの声がして“にげて”って云ってた気がするけど、もう、うごくことなんてできなかった。だって、ベールがゆれて見えちゃったんだ。

 風でうごいた雲からお月さまの明かりがふって来て。

 

 ほっぺたについた赤いよごれと、真っ赤なドブみたいに、にごったひとみが。

 にごったひとみのおくが横にキュウッとちぢまって、黒いところがたて長になった。すこしずつ、にごった赤の中ににごった金色がもれてだしている。きたないのに、どうしても目がはなせなくてまゆがギュッと真中によった。気もちわるい。

 おねえさんはだんだんと笑顔になっていった。


「ゲームよ。ゲーム。勝ったらアタシをあげるわ。ま、ないでしょーけど」

「べつに、いらないです」

「うっさいわよ。下等な人間の餓鬼の分際でごちゃごちゃ云わないでよねェ?」


 お腹をぐーでたたかれて息ができなくなった。目のまわりがチカチカしてお星さまがとんだ。

 いたいって云うか、苦しい。うめいてたらまたおねえさんが笑った。近くで聞くと耳がいたくてクラクラした。この笑い声、キライ。


「フフゥン、負けたらアンタをもらうのよォ。アッハハハ、精伝令を食べれるなんてアタシったらなんってこ・う・う・ん!小細工はある程度しておくもんねェ」

「あ、え……?」

「アッハハハハハハハ!!なーにが、精霊に愛された、よ。精霊を殺しちゃえば唯の無能な餓鬼じゃないの、ツマンナイわねぇ。ま、時間もないしィ?そろそろいただいちゃおうかしらね」


“頼む、逃げてくれっ”“叫んで!”“あぁ、どうして”“近寄れない……!”“すまんすまんっ助けに行ってやれない!”“殺される!!”


 ことばがでてこない。どうしてかわかんないけど、逃げなきゃって思った。でも体がうごかない。おねえさんがだんだんおおいかぶさってきて、体がうごかなくて――――。



 その夜、小さな子供の絶叫が華やかな夜会の幕を引く事になった。




制約が多いと書きづらいですね。

10歳ぐらいのイメージなんですけど、漢字って何処まで使うべきでしょうか。

一文入れ忘れて修正しました。投稿から10分経ってないってどういう事だ。ホントすみません。


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