第4話 魔物
異界学園キョウの世界には人類を襲う魔物が存在する。
魔物、と現代人が聞いて頭に思い浮かべる存在。殆どそのまんまの存在と考えてもらっていい。
人類と魔物は常に生存権の鍔迫り合いを繰り広げている。どちらが有利とは言い切れず、均衡状態にある。人類の生存圏を人界、魔物の生存権を魔物界と呼ぶ。
魔物にはクラスがあり、上位クラスの魔物程強力だ。中には知性を獲得した魔物も存在する。上位クラスの魔物は人類より数段強力な力を有しており、それが数の上では上回る筈の人類が魔物を駆逐できない最大の要因となっている。特に魔王と言われる魔物界の最奥に存在するといわれる魔物は次元の違う強力な個体とされ、人類の最大の脅威と目されている。魔物界の最奥から出てこないことが救いとされているが、いつ人類圏に姿を現すか分からず、魔王に比する力の育成が現在の人類の課題とされている。
数では人類、質では魔物が上回っており、それ+αの差が微妙な均衡を築いているのが今という時代であり、子供から老人まで魔物と戦う悪夢の時代とも言われている。
ヴァルハラ学園もまた子供を戦場に駆らせるシステムの一つであり、現在そのシステムに乗っ取り、僕たちはエリアB――人類と魔物の生存権が重なる境界線とされるエリアのB地区という意味――に特殊兵装で武装し4マンセルで向かっていた。そして戦場に到着する。
「う」
戦場には既に死体の山が築かれていた。大半は魔物のものだ。だが、中には人間の死体もある。思わず、呻きが漏れた。
「全体としては優勢みたいね。ま、この程度の魔物相手ならね」
冷静にリアクションするキサラ。この程度の魔物、というのは動物が黒ずんだようなフォルムの魔物たちに対する評価だろう。
低級の魔物は動植物の姿を取るものが多い。狼、兎、犬、獅子、サイ、カバ、そんな動物型の魔物の死体がこの場には築かれていた。強力な魔物は前世の世界には存在しないユニコーンやワイバーンやドラゴンなどの幻獣や、人型のフォルムを取ることが多い。人型のフォルムを持つ魔物は魔人と呼ばれ多くの場合知性を持ち、人から恐れられている。この場にその高クラスの魔物は存在してないようだった。
「大群体というから数だけ揃えてきたみたいね。この調子なら何とかなるかも」
キサラの言葉に本郷タケシと夢川アユムが応える。
「まだ分からんぞ。強力な個体が混じってる可能性が高い」
「あーし、雑魚だけ相手してたい。特に魔人とか来るのマジで無理」
キサラは頬を掻きながら、
「あはは。魔人なんて来たら逃げるしかないわね。流石に現れないと思いたいけど、っと。魔法展開」
キサラがその手に持つ警棒のような形状の武具を握りしめる。そして、飛び掛かってきた黒く禍々しいライオンのような魔物の突進を交わしざま、警棒を振り抜いた。
「プラズマ・グラヴィティ!」
警棒が紫電を纏う。腰に打ち付けられた警棒から黒いライオンの全身に紫電が走り抜けた。キサラが警棒を振り抜き終えた時、黒いライオンは既に事切れており、ずざざ、と地を無防備に転がった。本郷タケシが口笛を吹く。
「流石だな。雷の魔法と雷を纏う特殊兵装【サンダー・バウ】の合わせ技。これが雷の魔術士吉祥院キサラか」
「ふふん。大口叩くだけはあるでしょ。次々行くわよ」
「あ、うん。あ、もう一匹来た。えっと」
黒いライオン型の魔物がもう一匹襲い掛かってくる。僕は手に握った剣型の特殊兵装高周波ブレードのスイッチを起動した。ライオンの突進を躱し、
「ふっ」
すれ違いざま胴体を両断する。ライオンは血と内臓を撒き散らしながら転がり死んだ。
(うん。十分体が動くな。問題ない)
「あなた」
「ん?」
「獅子型の魔物は下級魔物の中では強力な部類に入るのだけれど、いやにあっさり倒したわね」
「え、あ、それは」
バン。
背中を一つ叩き、キサラは笑顔を見せた。
「やるじゃない。見直したわ!」
「……えっと、どうも」
「さぁ、次が来るわよ。今の調子でドンドン頼むわね」
「ああ。うん」
襲いくる魔物たちを僕たちは次々と倒していく。その活躍は他の4マンセルより数段際立っていた。キサラがその最中、笑みと共に言った。
「この戦い、何とか生き残れそうね」




