エピローグ 殺るしかないか
「牢屋に拘留して尋問、か。まぁ収まる所に収まった感じだな」
翌日。4人の処遇を言い渡された僕はホッとしていた。何だかんだであの3人――爆咲サクラは除く――にも情が湧いていたし、根っから悪い奴ではなさそうだったし、有益な魔法の使い手だしで、死ぬのは憚られたからだ。
「正直死刑でも全然おかしくなかったからね。有益な情報を引き出したいっていう学園の思惑が透けて見えるわね」
「まぁね。そりゃ実利含めての判決だろうからね。まぁよかったよ。死なずに済んで」
「うーん……妙に思い入れするわね。いや、長い時間を共にした仲間なんだし当然の心情なのかな」
「そうだね……そうかもしれない」
自分でも妙に思い入れしている自覚はある。それはスパイという関係ながら仲間として活動してきた過去が関係しているのかもしれない。闇蔵アキラの記憶の中に確かにある、共に過ごした時間の記憶が。
(本当、複雑な過去を持った奴だよな。こいつも)
「しかし、アキラもこれから大変よね。魔人ガルティアの討伐。死刑の方が生易しい刑かもしれないわよ」
「確かにねー。魔人ガルティアは強いからねー。どうなることかなー……」
……いや、本当どうなるんだ自分。あの魔人ガルティアだぞ。七賢魔の一人。暴力の魔人がルティア。果たして今の僕に討伐が可能なのか……。
「ま、アキラなら大丈夫よね。なにせ、アキラだものね!」
キサラちゃんが無邪気な笑顔を浮かべて言ってくる。そんな無邪気な信頼を寄せられたら、
「……うん。大丈夫だよ。なんたって僕だからね」
そう答えるしかないだろう。だが、言葉にすると何とかなるって気がしてくる。うん。どっちにしろやるしかないんだ。ならば前向きな気持ちで向かって言った方が良いだろう。うん。
「でも、アキラも本当複雑な立場よね。魔物界に捨てられて、魔人に育てられて、元魔人のスパイで、同じスパイ仲間とも親交があって、頭がごっちゃになるわ」
「まぁ、自分でもそう思う」
「でもね。私、そんなアキラと出会えてよかったわ。だから、今度の任務も無事に帰ってきてね」
「キサラちゃん……う、うん。そのつもりだよ。僕もこの学園には愛着があるからね」
「うん。私も。学園っていいわよね。大好き」
そんな会話を交わしながら、僕たちは教室へと向かう。その途中
「あ、アキラ」
「キョウくん」
キョウ君と合流する。キョウくんは何気ない調子で、
「色々大変だったらしいな。アキラの素性には俺も驚いたよ。でも、アキラはアキラだ。これからも」
スッ。
手を指し伸ばしてくる。
「よろしく」
「……本当いい奴だよ。君は」
ガシ!
その手を握り返す。熱い手の感覚。僕の素性を知って尚変わらぬその態度が僕には嬉しかった。やはり一大カミングアウトという気持ちで明かした素性だけに親しい人間ほどどんな対応をされるか不安だったのだ。
「ふふ。本当キョウっていい奴よね」
「やめろよ二人とも。照れるだろ」
3人で廊下を歩いていると4マンセルの本郷タケシと夢川アユムも合流した。僕に対しての態度は、
「おう、アキラ。大変だったらしいな」
「まぁ、あーしらに黙ってた報いってことで」
カラッとしたものだった。改めて思う、僕はこの学園という舞台が好きだと。この学園に通えてよかったと。そして決意する。これからも学園に通い続けるために。
「七賢魔の一人、暴力の魔人ガルティアをぶっ殺すしかないか」
2章 スパイ容疑編 完




