地獄の業火
これから諸事情で投稿頻度が遅くなります。あらかじめご了承ください
「詳しいルールを解説するぞ」
ゼトンは椅子に腰かけ、テーブルの上に専用のルールブックをぺらぺらしながら言い始めた。飛鳥とナナシはその反対側に椅子に腰掛け話を聞いている
「ルールはトーナメント型の大規模レース、参加人数は三人以上、誰かがリタイアしても、全滅しなければ一人だけゴールしても良いんだ」
「ふむふむ・・・」
ナナシは視線をいつの間にか持っていたメモ用紙に戻し、すらすらと書いている
「んで、計三回勝利し、優勝した人には市民権を得られる、一人分で誰にでも渡せば、ソイツはフェルム・アストラーテで生活できる権利を得られる」
「・・・それ以外のルールは?」
「ねえな、まあ・・・生かすも殺すも自由って感じだ、俺の仲間は銃で撃たれて死んじまった」
「・・・」
沈黙が落ちる、ナナシは少し悲しそうな眼でゼトンを見ていた
「あぁ、すまねえな、しんみりした話は苦手なんだが・・・どうも話しちまう」
「全然大丈夫ですよ、それで先輩が乗る機体は?」
「そうだったな、見た方が早い」
三人はガレージに移動した、錆びたシャッターが開き、そこにはほこりを被った、少し古いバイクがぽつんと寂しく置いてあった
「『S/R』通称『エア』2059年製のガソリンバイクだ」
「ガソリンか・・・珍しいな」
フェルム・アストラーテ、というより世界の基準的に、今はガソリンではなく魔石を使った機器の方が、エネルギー効率もよく環境にも配慮されている、そして何より石油を節約できる。それ以来ガソリンを使った乗り物より、魔石を使った乗り物の方が一般的になっていった
「仕方ねえ、このバイクも古いしな、新しいバイクを買う余裕なんてねえし」
「・・・」
飛鳥は無言で埃を払い、バイクに跨る、ゼトンから貰ったメインキーをオンにし、クラッチを握る、そしてエンジンスタートボタンを押すと・・・
ドドドドドドドド・・・と静かに、しかし力強くエンジンが鳴った、排気ガスが部屋に広がり、生々しい熱気があたりを包み込む
「・・・良いな、気に入った」
「な・・・なんか変な匂い・・・」
「仕方ねえよナっちゃん」
「ナっちゃん?」
ナナシは不思議そうにゼトンを見たが、ゼトンはナナシを一瞥してバイクに目線を戻し、腕を組んだ
「これは排気ガス、かつてこの星を熱で温め、世界中を地獄の業火に包み込んだガスだ」
「わぉ・・・」
「おい!何しているゼトン!」
突然の怒号に三人はガレージの外を見る、そこには水色のウェーブが入った髪に、鋭い青紫のツリ目、ムスッとした顔に猫の耳に尻尾がある、ゼトンとは色が違う青黒のライダースーツを身に纏った獣人が立っている
「おー、ヒューちゃん、こっちに来いよ」
「ヒューちゃんって呼ぶな」
「ヒューちゃん?」
「俺はヒューリーだ、アンタらがナナシと飛鳥ってやつらか」
「・・・よろしく、これから一緒に——」
「出てってくれ」
一瞬で凍り付いた
「何言ってんだよヒューちゃ」
「出てってくれと言ってるんだ」
「ま、待ってください」
「良いか、アンタらみたいな素性がまだ未確定の奴を仲間に入れるつもりはない」
ヒューリーは飛鳥に近づき、その青紫の瞳を向けた
「そのバイクは亡き友人のモノだ、悪いが降りてくれ」
「待てヒューちゃん!」
ゼトンが声を張り上げ、ずかずかとヒューリーに近づく
「飛鳥達の力が無いと俺たちはレースに参加できないんだぞ!」
「だからと言ってスパイかどうかすらわからない奴を入れていい理由にはならない」
「・・・(確かにそうだよね・・・ヒューリーさんが言っていることも正論だし・・・)」
「・・・」
飛鳥はバイクに跨ったまま、じーっと見ていた
「良いか、ゼトンよく聞け、たった一人だけなんだ、俺らは十分頑張った、誰か一人でも犠牲になれば俺たちは救われる」
「待てヒューちゃん!」
ゼトンが声を張り上げ、ずかずかとヒューリーに近づく
「飛鳥達の力が無いと俺たちはレースに参加できないんだぞ!」
「だからと言ってスパイかどうかすらわからない奴を入れていい理由にはならない」
「ヒューリーさん・・・」
「良いか、ゼトンよく聞け、あと一人、たった一人だけなんだ、俺らは十分頑張った、誰か一人でも犠牲になれば俺たちは救われる」
ヒューリーの言葉に、一瞬でゼトンの頭に血が上った
「何言ってんだヒューちゃん!俺はもう、誰も死なせねえ!」
「いつも口だけだろ、その言葉を口に出してから、今まで何人死んだ?」
「ぐ・・・っ」
「あと一人、あと一人の犠牲で俺達は救われる、老人を残して行けばいいだろう」
パチン!!!!
乾いたビンタの音が響いた
「・・・老人をのこすだぁ?良いか、今回はマジだ、もう誰も死なせねえ」
「へぇ?」
ヒューリーはゼトンの服を掴み、ぐいっと引き寄せた
「口だけではなんとでも言える、それはお前が一番わかっているだろ」
「・・・」
「おい」
飛鳥が止めに入った
「お互いを潰し合う余裕があるなら、乗るバイクのメンテナンスでもすればどうだ?」
「・・・そう、だな・・・」
ゼトンはバッと腕を払いヒューリーを払いのけ、ふらふらと歩く、ガレージに肩がぶつかっても気にする余裕もないようだ
「・・・今回は貸しだ、飛鳥とやら」
ヒューリーは飛鳥の方を向き、すぐ顔を逸らした
「でも信用したわけじゃないからな」
そう吐き捨てると、ヒューリーも出て行った
ヘルクロスレース開催まで、あと二週間・・・
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