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第8話 大丈夫だよ

 「ねえねえオルコス、今日は私とパーティ組もうよ!」

 「うん、いいよ」

 マルンの言葉に二つ返事でオルコスは了承する。最初のクエストから1ヶ月。あれからオルコスはずっと冒険者として生きていた。固定パーティは組まずに色んな人とパーティを組んでいた。特にマルンと組むことが多いが...



 「オルコス〜! こんど飲み行かねえか!?」

 「よおオルコス! ボドゲしようぜボドゲ!」

 「なあオルコス!今度Aランクのクエストあるんだが手伝ってくれね?」

 オルコスは冒険者ギルドで随分と馴染んでいた。全員に誠実で腰が低く勉強熱心で、いわゆる“良い奴”として彼は知れ渡っていた。


 「オルコス、ではこのクエストを受けよ! 村の近くのミノタウロス討伐!」

 「うん、わかったよ。他に誰かいると助かるな....」

 オルコスはそう悩んでいると何人かが立ち上がる。

 「じゃあ俺が手伝おうか?」

 「俺も手伝うぜー」

 男たちはオルコスにそう言うとオルコスは笑顔になる。

 「良いんですか!? 助かります〜」

 「ああ! 頑張ろうぜ!」

 デンタはオルコスの肩に腕を回して馴れ馴れしくいうが、心地よい。

 「へへ、良いのかよ? マルンちゃんとデートしなくてよお」

 「あはは....違いますよ〜」

 マルンはキョトンとした顔で聞いている。おそらく冗談とわかっていないのか、マルンは笑う。


 「違うよ〜、私たちただの友達だからね〜?」

 「うん、それじゃあデンタさん、ダウンさん、キースさん、お願いします」

 男たちは快く了承すると、受付嬢にクエストを言う。

 「Aランクのミノタウロス討伐をお願いします」

 「はい〜! 承りました!」

 受付嬢は相変わらず営業スマイルで答えると依頼を受注するのであった。



 




 「よし、倒したな!結構手強かったぜ〜」

 ミノタウロスの死体に乗るデンタは余裕そうに答える。


 「そうだな。やっぱりすげえ補助魔法だよお前」

 「いやあ....ありがとうございます....!」

 オルコスはペコペコと礼をしつつ照れていると、マルンは自分自身を指差す。

 「私は!? 私は!? 私頑張ったよ!」

 自信満々にマルンは言うと皆が「頑張った」と労う。マルンは嬉しそうにドヤ顔を作る。



 「それじゃあギルドに戻ろうぜ!」

 「ですね...!」

 そうやって仕事を終えて帰る5人であったが、ギルドに戻るとその扉の前で誰かを探しているような貴婦人は目に入る。


 「ん、どうしたのかな...困ってるのかも」

 オルコスはその貴婦人が困ってるように見えて迷わず飛び出す。


 「どうしました? 何かお困りですか?」

 オルコスがそう声をかけるとマルンがその貴婦人を見て反射的に言葉を出す。

 「ママ! どうしたの?」

 マルンの言葉を聞いてオルコスは驚くが、貴婦人はマルンを見て一目散に近づくと抱きしめる。


 「マルンちゃん〜、ようやく見つけたわ! 怪我してな〜い?」

 「うん! 別に〜!」

 マルンはいつも通りの声で楽しそうに言う。それを見て微笑ましく思うも、オルコスはマルンに伝える。

 「一応クエストの報告....いいかな? 全員で報告しないといけないからさ」

 「うん〜わかった!」

 マルンは貴婦人から離れるとオルコスについてこうと歩き始めるが、貴婦人は言う。

 「マルン? 家に帰って家業を継いでくれない? 実は最近大変で」

 貴婦人はにこやかな笑顔でそう言うと、マルンは少し考えると首を縦に振る。

 「うん!いいよ〜」

 マルンがニコニコとそう返したことで貴婦人は笑顔になる。

 「ありがたいわ! いい子ね!」

 「えへへ〜」


 そうしてギルドに一向は入り、貴婦人はギルドに入るころには消えていた。


 「マルン、冒険者を止めるの?」

 「今すぐじゃないよ〜、ここは好きだもん!」

 マルンのニコニコとした笑顔を見て、オルコスは親孝行なんだなと思いつつ、少し悲しくなる。当たり前を失うような。そんな気分というのだろうか。

 

 そんなことを考えていた。



 この時までは。










 それから数日、何日か空けてマルンの母は来るも、マルンはのらりくらりとその場限りで話すものの、冒険者を止める気配はなかった。


 貴婦人が来る頻度は増えて、表情は段々と曇っていった。そしてさらに数日が経ち.....


 ......マルンはギルドに来なくなった。



 最初は母親のところに行ったのかと思ったが貴婦人はまだ来ている。だからマルンは帰ってない...はずなのだが。


 貴婦人は冒険者たちに聞くようになり、少し迷惑に感じ始めていた。オルコスもまたよく聞かれるが、わからないとしか言えない。オルコスはどうすればいいのかと迷った末、マルンが泊まってる宿に行ってみることにした。


 宿屋のマルンの部屋の前に立つと、オルコスは扉を叩く。

 「マルン、オルコスだよ。ちょっといいかな」

 

 返事はない。オルコスは少し待ってみるもののそれでも反応がなく、オルコスは一言口にする。

 「これは俺の独り言なんだけどさ。どうしようもない時は....人に相談してみると、少し気持ちが楽になるそうだよ....」


 それはネアの言葉の受け売りだった。


 *****


 「心っていうのは身体以上にずっと大切なんです、だって楽しいって思えない人生はとても大変ですから!」


 「そっか....やっぱり心を早く治すことは大切ってこと?」

 オルコスの言葉にネアは少し悩むそぶりを見せると首を横に振る。

 「そうとは限りませんね。治る速度は人それぞれですし、今が大変なら何もしない時間だって大切です。だから肯定も否定もせずに、“大丈夫だよ”って受け入れてあげてくださいね?」

 


 



 「マルン、それじゃあ俺は行くよ。大丈夫。俺は君の味方だよ」


 そう言ってオルコスは立ち去ろうとした時に、ゆっくりと扉が開く。


 開いたドアの隙間から見えたのは涙の跡が残るマルンの顔であった。

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