第4話 言葉の揺れ
「そういえば一応ジョブを聞いておくぜ、俺は戦士だ、見たところ剣士っぽいが...」
ヴォドスはオルコスの腰にぶら下げてる剣を指差して言うと、オルコスは首を横に振る。
「いえ、俺は魔法剣士ですね。バフも前衛もやれるつもり....ですね」
冒険者のレベルがわからないので断言ができない。Aランクなので弱いなんてことはないとはわかってる。それでも心の傷が疼いてしまう。
「なるほどな、ではルーキー、よろしく頼むぜ!」
オルコスたちはクエストを受けたダンジョンの攻略に歩いて向かっていた。場所は森の奥地のようで木々の間を抜けていく。
ダンジョンは魔王が生まれると、そこから至る場所に自然発生する。攻略難度はバラバラでダンジョン自体の魔力で強さを計測する。
勇者パーティはダンジョンの発生を止めるために魔王を倒しにいき、冒険者は出現したダンジョン自体を攻略して停止させるのだ。
「なあなあ、魔法剣士はやはり魔法も剣もつかえるのか?」
オルコスにそう聞いたのはジョブは“格闘家”、緋色の短髪のケモミミ少女であるフォニャンだった。彼女は好奇心の目でオルコスを見つめていて、オルコスは答える。
「魔法は補助魔法ばかりかな、攻撃魔法は使えないし僧侶の領分に近いかも」
「じゃあ僧侶剣士じゃないか?」
「....いや....学校で習った話だと新しい現象や物質を操るのが魔術師、生物の強化や回復といった既存の物を変化させるのが僧侶の魔法って感じ....だね」
「なーんか難しいんだな」
フォニャンは混乱して目を瞑って整理し始めていると後ろから声をかけられる。
「バカにややこしい説明は可哀想だろ? 簡単に言うと魔法の中に魔術と秘術の二つがあるから魔法剣士なんだよ!」
「なるほどなる....って今バカっていったな!!」
「へっへ、バレちまったか」
フォニャンが怒りを向ける飄々としたこの男、デンタ。ジョブは剣士。
2人が争ってるとジョブ“射手”の女がデンタの頭を掴んで引き寄せる。
「まーた、喧嘩して。今回は新人の子もいるんだから先輩らしくしなさいな」
「へい...」
女の名はレルン。弓使いでありがっしりとした体格と顔の傷からは猛者という雰囲気を醸し出している。
レルンは笑いながらオルコスに話しかける。
「まあこんな感じだが仲がいいんだ。気にしないでくれよ」
「なるほど....わかりました」
「そんな畏まんなくても良いんだがね」
そんな他愛無い話をしていたその時、ドスっと鈍い音が鳴り、ヴォドスが怒鳴り声を上げる。
「モンスターだ!全員武器を構えろ!!」
全員が武器を構える中でオルコスは剣も抜かずに前を見る。それはライオンの体に山羊の頭、そして蛇の尾を持つキマイラであった。
キマイラ....視認3体。魔王城に近いと確かにこんな生物はいるけど....なぜこんなところに...?
ダンジョンは攻略しなければ内部の魔物が地上にまで溢れ出る。国の騎士団が安全に攻略しようにも部隊の編成を組むよりにダンジョン発生数の方が多くこのように冒険者が担当している。
だが勇者パーティにしかいたことがないオルコスには知り得ないことで、思考しているとヴォドスが叫ぶ。
「ルーキー! 補助魔法をかけてくれ!!」
「はい! フォニャンさんとヴォドスさんにかけました!!」
オルコスは言われた瞬間にすぐに補助魔法をかけた。ヴォドスには身体強化に斧には硬度の付与を。フォニャンには速度強化と身体強化がかかり、自身には強化付与をかけた。
2人は困惑しつつキマイラに飛び込み、オルコスも前衛として飛び出す。
ヴォドスとフォニャンはそれぞれ別のキマイラを相手取り、斧を振るう。一撃目をキマイラは跳んで避けるが、オルコスは奥のキマイラに向かうついでに先頭のキマイラの尾を切り落とし、一番奥のキマイラに攻撃を仕掛ける。
飛び出したフォニャンに対してキマイラの尾の噛みつき攻撃が向い、フォニャンは横に避けるために跳ぶが、その瞬間に勢いよく大木に激突する。
「ふにゃ....ッ!!?」
それはフォニャンにとって驚くような出来事だった。あまりにも身体が軽すぎて、制御が効かなかったのだ。
「おい!大丈夫か!!」
ヴォドスはフォニャンに声をかけるが、キマイラの攻撃を斧で受け、援護に回れない。
「私が援護するよ!!」
レルンは弓を引き、フォニャンの方に走るキマイラに矢を撃とうと構えたのをみて、オルコスは目の前のキマイラを相手しながら矢に“爆発”の付与をかける。
キマイラは矢を紙一重で避けるものの、その次の瞬間に爆発を起こして首が吹き飛ぶ。
「えぇ...!??」
レルンはその光景に驚く。彼女から見れば突然したので当然の反応ではある。オルコスは目の前のキマイラの首を二つとも一気に切り落とすとヴォドスの援護に回ろうと走る。
だがヴォドスが相手するキメラはデンタが木の上から飛び出して心臓を落下の勢いで刺し貫くのであった。
なんとかなった.....よかった。冒険者ってあんまり勇者と変わらないかも....
オルコスはそう考えて笑顔を作ると皆の方に歩く。
「とりあえずこれで——」
その瞬間、レルンはオルコスに向けて矢を向けると放つ。
咄嗟のことで困惑しながらその矢を避けるが、それは先ほど首を二つとも切断したキマイラの尾に命中した。
「キマイラは頭が三つ、つまり全部落とすか心臓を狙わないといけないんだ。勉強になったか?」
デンタはそう笑いながら言うとオルコスは首を縦に振る。
「はい....それとありがとうございます...」
「ああ! お前1人でキマイラを瀕死に追い込むとはやるじゃねえか!」
デンタはオルコスの首に手を回すと肩を組む。
「あはは....ありがとうございます...」
ヴォドスはオルコスに近づくと疑問に思ったことを口にする。
「付与するなら事前に言うべきだぜ? いつ付与したんだよ?」
「え....言われてからしましたけど.....」
「.....は...?」
オルコスはさも当然のように事実を告げるとヴォドスは困惑しながらさらに質問を続ける。
「俺が補助魔法を支持してからか...?」
「はい、そうです」
「......詠唱は...?」
「してないです」
「本当に...?」
「.....本当です」
オルコスの嘘偽りのない表情を見てヴォドスは驚きと感心を見せつつ言う。
「そんな普通ですが? って感じにいうんじゃねえ!! そうとうやばいじゃねえかよ!!」
「え...!? え...?」
やばいと言う一言にオルコスは困惑する。やってはいけないことだったのか、それとも何か不都合があるのかと考えるオルコスであったがヴォドスは冷静に言う。
「あー....まあそうだな......いや確かにすげえ技術だ。詠唱なしってのは即効性があるってわけだしな。だがこっちはそれを伝えて貰ってねえから補助魔法がついたかどうか体感で気付かないといけねえ。連携をとるためにも一応何を掛けたかとかを教えてくれるとありがたいぜ?」
「はい....すみませんでした...」
「ちなみに私の矢が爆破したのもあんたのせいかい?」
レルンはオルコスに問いかけるとオルコスは申し訳なさそうに首を縦に振る。
「初めて見たよ、あんな魔法......だったらこっちも教えてくれるとありがたい。伝えないならせめて巻き込みが発生しないような補助魔法にしてくれよ」
「.....はい」
ここでようやく理解し始める。今までリアスのパーティでは何も言わずとも補助魔法を掛ければしっかりと活用してくれた。それはみんなが上手に使う努力をしてたからで俺自身が凄かったわけじゃない....みんなが俺を追放した理由は.....今少しわかってしまった気がする。




