第3話 先輩との通じ方
応接室のような場所で椅子に座ると、受付嬢はオルコスに紙を渡し、オルコスは紙に名前やジョブ、スキルの有無に今までの経歴などを書いていく。
オルコスにはスキルはない。そもそもスキルを持ち人間は1割ほど。ジョブも決して珍しいものではない。オルコスは緊張しながら書ききると受付嬢に紙を渡す。
「はい! では少々お待ちください!」
そう言って受付嬢は奥の部屋に消えてしまう。
一応勇者パーティにいたし.....まあ大丈夫...だよな? そもそも冒険者ってどれくらいのレベルなんだろうか...
不安を募らせながら待っていると、受付嬢が声をかける。
「オルコスさーん、こちらへきてくださ〜い」
「あ、はーい」
オルコスは受付嬢の言葉を聞き、奥へと向かう。
そしてしばらく歩くと、塀で囲まれた空間に着く。天井は空が広がっており、大きさの幅が50mほどの場所で、そこには木製の等身大人形が10体ほど立っていた。
「オルコスさんには人形を10体切ってもらいます。タイマーをスタートしてから補助魔法を使用して、切ってください。箇所は首、胴体、脚部などを切断してください」
「わかりました、頑張ります。ちなみに何秒以内とかって....」
「何秒...? えっと、平均は5分くらいでしょうか、別に多少オーバーしても問題ないですよ」
受付嬢は秒という言葉に一瞬困惑するが、悟られないように笑顔を作り言う。
「じゃあ、準備できました」
「では行きますよ.......スタート!」
受付嬢の言葉と共にオルコスは速度強化の補助魔法を自身にかけると、走り出し人形を一瞬にして全て切り倒す。
「5秒......無詠唱で...!? え? 補助魔法使いました!?」
受付嬢はアワアワとし出し、それを見てオルコスは内心で困惑する。
「え、使いましたよ....」
なんだ? 実は俺....すごいのか...? あ、そうか。俺は勇者パーティ上がりだから実戦経験があるけど、普通は新人が冒険者になるからそれに比べるとすごいって話....だな? なんかこれでドヤ顔するのも恥ずかしいし、言わないでおこう...
「す....すごいですね...」
「あはは...ありがとうございます....とりあえずこれで大丈夫....ですよね?」
「え、あ、はい! 大丈夫です! ではまた先ほど待機していただいた部屋でお待ちください!」
オルコスは指示通りに部屋に戻り待っていると、受付嬢から紙を渡される。
「オルコスさんのAランクです! これからぜひ冒険者として頑張りましょう! パーティを組んで依頼を受けるとがおすすめです!」
「....はい! 頑張ります!」
ようやく肩の荷が降りた気がした。受付嬢の反応から大丈夫な気がしていたがそれでも不安だったのでこれでようやく安心できる。オルコスは安心すると部屋を出るのであった。
「ふう、さてどうしようかなぁ」
オルコスは依頼書の一覧の方に向かうと色々見てみる。待っている間に冒険者たちの動きを見た限りだと口頭で依頼内容を言って受理する形で行なっている。オルコスはそうやって依頼書を見ながらあたりをチラチラと確認していた。
パーティを組むといいって言ってたよな...マルンとはさっき話したし、いたらパーティを組まないか聞きやすいんだけど...いない...
勇者パーティは一級から五級まであり、その進行度報告で階級が決まって給料が払われていた。一応一級パーティに所属してたしAランクは妥当かな。実力不足なのはあくまで最上位の中ではって話なのかも....
冒険者ランクはSSからDまで、つまり上から3番目のAはいい方だし、思ったよりやっていけそうだな....
オルコスは少し自信がつき、心の落ち着きを取り戻し始めてると、声をかけられる。
「にいちゃん見ない顔だな! 新人か?」
「あ、はい...! そうです!」
それは怖面で屈強な男だった。ニコニコと豪快な笑顔を見せており、オルコスは少し気弱になるが男は続ける。
「やっぱりそうだと思ったぜ! すげえブルブル震えてたからなあ!」
「そんな震えてましたかね...」
男の笑いにオルコスは苦笑いで返すが、そこで気になったことを聞く。
「あ、もしよかったら教えていただきたいことがあるんですが....いいですかね...?」
「ああもちろんだ! 新人は色んなことを聞いて成長するもんだぜ!」
「それじゃあ...この依頼書に推定ランクが書いてあるんですけど....これってパーティ単位での適正なのか、個人での適正なのか分からなくて....」
オルコスはできるだけ腰を低く丁重に聞いてみると男はいう。
「基本はパーティ単位だな!だからCランクなら5〜6人のCランク同士で組むといいぜ!」
「なるほど...! 勉強になります!」
オルコスは深々と頭を下げると男は答える。
「そんな畏まらなくてもタメ口で大丈夫だぜ! もっと気楽にやりな! 俺の名はヴォドスだぜ」
「あはは、俺の名前はオルコスです。色々助かります」
タメ口でいいと言われたがそうすぐにやっていいものでもないだろう。
それにセクレがそんなことを言ってた気がする。
*****
「年上や上司がタメ口を使っていいっていうのは罠よ! 気をつけなさい」
「え、そうなの?」
オルコスはセクレの言葉に疑問を呈すがセクレは続ける。
「世間知らずねえ、基本的に敬語を崩すってのは同年代や年下以外にはやっちゃダメ! 敬意を持つってこともだけど、相手を不快にさせにくいのよ。何か失敗した時に普段から適当な人と態度だけでも真面目な人ならどっちがいい?」
「それは....真面目な人だね...」
「そういうこと!人間は普段の行動をよく見てるし、それは信頼にもつながるの! 勿論少しづつ敬語を崩していっていくのは良いけど、ちゃんと人間関係を見極めないとダメよ!」
「なるほどねえ」
そんな感じだった気がする....まあ俺がノーゲンさんにタメ口使おうとしたのが原因なんだけどね.....
「ではBランクの依頼で探してみようと思います。ありがとうございました!」
「ん? ちょっと待て、もしかしてAランクか...?」
「え? はい」
ヴォドスはオルコスの言葉に耳を疑い聞き返すとオルコスは平然と答える。
「だったら俺らと組まねえか? 俺らAランクを受けようと思ってるんだ!」
ヴォドスは先ほどより少し早口に焦りながらオルコスに提案すると、オルコスは首を縦に振る。
「ぜひ! 先輩冒険者と組めるなんて光栄です! あ...でも新人なのであまり期待は...」
「お、おう!わかってるわかってる! じゃあ一緒に行こうぜ!」
そうしてオルコスは初めての冒険者パーティを組むことになるのであった。




