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第2話 距離が近すぎる少女

 「どうしよう....かな....」

 昼の街のベンチでオルコスは空を見上げていた。


 公園で遊ぶ子供たち、街を歩く人々。空を飛ぶ鳥。

 皆がいつも通りの日常を送っていて、自分だけが異物であるようなそんな気持ちだ。


 何をすればいいかわからない。そんな時にリアスの言葉を思い出して、ふと口にする。

 「冒険者....か......」



 冒険者はギルドに登録し、モンスターの討伐や護衛などのクエストを行う仕事であり、魔王を倒す勇者パーティとやってることは似てるが目的が違う。

 「自分に実力に合わせて....身の丈に合う仕事をしろって....」


 オルコスは自身の顔を叩くと立ち上がる。

 「うだうだするのはこれでおしまい! まずは仕事だ仕事! 冒険者だってやれるはずだ!」


 オルコスはそう気持ちを一新すると、冒険者ギルドへと走るのであった。



 冒険者ギルドの前についたオルコスであったが、足が進まなかった。

 初めて入る業界なこともあり緊張している。ノーゲンは冒険者上がりなのでなんとなく話は聞いている。


 

 *****


 「———冒険者は依頼をこなすことで給料が入るんだが、逆にいうと失敗したらどんだけ頑張ろうが金は出ねえってわけだ」

 「めっちゃ大変なんだ....固定給になってからやっぱり助かりました?」

 昔の話をするノーゲンにオルコスは質問するとウンウンと頷く。

 「そうだなぁ! やっぱり身体を壊して休養の間も金が出るから安心して休めるのはでかいなぁ、冒険者は体調管理が一番重要だなぁ」



 ....なんてことを言ってたな....まあいいか。緊張するけど入ってしまおう。


 オルコスはそう心の中で笑いながらギルドの扉を開くのであった。



 ギルドは思ったよりもずっと賑わっていた。テーブルには笑い合う者や、壁に乱立した依頼書をまじまじとみる者。受付で依頼の報告をする者などがいて、オルコスはどこにいけばいいのかわからずオロオロしていた。


 「ねえねえ、大丈夫?」

 「はっはい...!?」


 緊張してるところに後ろから声をかけられてオルコスは返事をしてバッと振り向く。


 するとそこにはいかにも魔術師という風貌のとんがり帽子を被った少女がいた。オルコスと同じくらいの10代半ばで、自分より小さい。長い黒髪の明るい雰囲気でオルコスに話しかける。

 「そんな驚かないでよ〜、それでどうしたのかな?」

 「え....ああ、うん.....実は冒険者登録をしようと思っていて....それで何処に行けばいいのかなって...思ってました...」

 「なるほどね〜!私も最初はわからなくて困ったよ!だって初めてって色々不安だもんね!私もさ〜」

 随分と饒舌な少女だなとオルコスは思いつつ首を縦に振り、話に合わせる。


 「それでね!それでね!」

 「あ、それで登録できるところって....何処なん...ですかね?」

 あまりに話が長く、オルコスは遮るように聞いてみると少女は答える。

 「あ、そうだったね! あそこの受付に並んで、冒険者になります!っていえば良いんだよ!」

 「はい...ありがとうございます」

 少女は受付を指さしてそう言うとオルコスは礼を言う。

 「別に敬語はいらないよ〜、私の名前はマルン! 君の名前は?」

 「わかった、俺の名はオルコス....よろしくね」


 「うん! よろしくね!」

 マルンはそう言ってオルコスに手を振り、オルコスも軽く手を振りつつ、受付に並ぶ。



 

 そしてしばらくすると自分の番が来る。

 「こんにちは! 本日のご用件をお教えください!」

 「えっと、冒険者の登録をしたくて...」

 「はい! 冒険者登録ですね!番号を呼びますので、しばらくお待ちください!」

 受付嬢はオルコスに数字が書かれた札を渡しオルコスはそれを了承すると適当なテーブル席に座る。


 「.....にしても....仕事する場所ってよりコミュニティって感じだな....」

 テーブル席が多く、そこではいろんな冒険者が話している。聞き気がなくても耳に入るほどで、最近あった嬉しかった話や噂など仕事に関係ない話が多い。パーティの勧誘や仕事の近況報告なんてのもあるが多くはなかった。



 「隣いいかな!?」

 「問題な....いいよ」

 それは先ほどの少女マルンでオルコスは敬語で言いそうになるがタメ口に直して言う。目上なら少し考えるが同年代だし良いだろう。

 マルンはオルコスの横に座るとオルコスは話す。

 「とりあえず待ってるようってさ」

 「そうなんだね! そういえばオルコスはどうして冒険者になろうとしたの?」

 「....えっと....まあ色々あってね。仕事を何しようって考えたら冒険者がいいかもってなった」

 「へー! ちなみに君ってジョブはあるの?」

 「ジョブは魔法剣士だよ、まあ実力はちょっと足りないけど....」

 オルコスは実力不足と言われたのもあって自信なさげに証明となるカードを見せるとマルンは笑う。

 「魔法剣士のジョブがあるなんてすごいね! 十分すごいよ〜。ちなみに私は魔術師だよ!」


 ジョブというのは戦闘職の用語で、資格のようなものである。例えば戦士や魔法使いなど、それぞれ必要な能力を身につけることで登録証が手に入り、公に名乗ることができ、冒険者や勇者などはたいていは何かのジョブを持っている。



 「魔法剣士って剣士と魔法使いのジョブとは違うの? 試験は違うの?」

 マルンはグイグイと距離を詰め、椅子を真横まで寄せてくるとオルコスは距離が近いなと思いつつ話す。

 「剣術を学ぶことのほうが多いけど、剣士とより専門性は下がるかな...ほら、剣士って剣の修復だったり双剣術とか、魔物の弱点位置とか覚えてるじゃん。僕は剣術と補助魔法くらいしか学んでないから」


 リアスが昔はよく自慢してたな....剣士のジョブも魔法使いのジョブの持ってたから...まあ今じゃそんな話できないだろうけど...


 なんでこうなっちゃったんだろう....



 

 オルコスは少し寂しい気持ちになるが、マルンはそんなこと気にせずに話を続ける。

 「そうなんだね! じゃあ基礎魔法学あるあるでも話しちゃう!? 二つの技術体系を学ばされるとは思わなかったよね!」

 「あー.....うん、それは確かにそうだね。魔法二つで——」


 「43番でお待ちの方〜、受付までお願いします〜」

 それは受付嬢の言葉だった。オルコスの数字であり、それを聞くとオルコスは立ち上がる。

 「呼ばれちゃった、とりあえず行ってくる」

 「うんうん! 行ってらっしゃい!」


 そうしてオルコスは受付嬢のところへと向かうのであった。

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