第14話 嫌いな理由って
魔王軍との戦いは日中夜続いたが、オルコスの全体付与の補助魔法に加えて僧侶や他魔法剣士の補助魔法も重なり、戦線は押し返され、そしてついに、全てを倒し切るのであった。
「終わった...んだよね....」
息を切らしてその場にへたり込むオルコスや、やり切ったと安心し切る冒険者達や勇者達、だがその中でリアスだけが不満な表情を見せていた。
それを見たオルコスは、ふらふらになりながらもリアスの方に歩き出すと、手を差し出す。
「お疲れ...!」
リアスはそう邪気のない笑顔を見せる。
それを見たリアスは、不満げな表情のまま立ち上がると手を出し———
拳をオルコスの顔面にぶつけた。
「いつだ.....!! いつ俺が.......!! 俺が助けを求めた.....! 勘の悪いてめえにわかりやすく聞いてやるよ....! なぜ追放されたお前がここに来た...!!!?」
顔がジンジンと痛み熱を帯びる、その中でオルコスは本心を口にする。
「そんなの....リアスに死んでほしくなくて....」
「うるせえッ.....うるせえんだよ偽善者が!!!!」
地面に転がるオルコスに罵声を浴びせるリアスを見て、皆が止めようとするが、マルンはリアスではなく皆を止める。
「俺は...俺は.....オルコス....ッてめえが大っ嫌いなんだよ....ッ!!」
「嫌いって....どうして.....?」
オルコスは訳が分からず、疑問を問うと、リアスは言う。
「てめえのせいでパーティが全滅しそうになったのを忘れたのかよ゛!?」
リアスはそこまで言うと息が切れたのか、深呼吸を挟むと、少し落ち着いた口調で言う。
「はあ......ッてめえが前に俺がしくじって死にかけた時...てめえは俺を背負って逃げようとしたよな.......ッはあ........その結果味方に無理な戦闘を強要し....逃げるのも限界で道に迷って.....俺たちは全員餓死しかけた....ッ!!」
リアスのその怒りの表情を見て、オルコスは何も言えず、俯き口を紡ぐ。
「あの時は偶然ッ.......他パーティが攻略しに来て助かったが.....運が悪けりゃ皆死んでた.....! てめえが俺を見捨てれば起きなかったリスクだッ...!!! てめえのエゴのために....全員を犠牲にしようとしたんだぞッ…!!」
オルコスはそれを聞いてゆっくりと立ち上がる。
皆も動けなかった。それは今まで何度も見てきたことだったから。オルコスはその場で組んだパーティメンバーのために危険を省みず飛び込む。そのことを....皆が知っていたから。
「いつもそうだ…てめえは周りを見ずに動く…お人好しなんだからなッ....!!!!」
オルコスはリアスの前に来ると、ゆっくりと頭を下げる。
それでもなお謝る、そんな痛々しいオルコスに皆の心が痛むがその次の瞬間、オルコスはリアスの顔面をぶん殴る。
「ぐ…!?」
突然の一撃でリアスはその場に倒れるとオルコスは手を振るわせながら言う。
「うるさい.....! なんだよ....なんだよソレ....!そんなことで俺を追放したのかよ....! 言ってやる...言ってやるよ....」
ゆっくり立ち上がるリアスを見て、オルコスは息を思いっきり吸うと叫ぶ。
「善いことして何が悪いんだよボケ!!!」
リアスは拳を振りかぶるとさらに本音と共に拳でオルコスの頬を殴りつける。
「善良なだけで生きられるほど現実は甘くねえんだよッ...!!!」
「ぐが....ッ!?」
オルコスは拳を受けてよろけるも地面に伏すことはなく、拳を向ける。
「というか....!だったら実力不足なんて嘘つくなよッ...!!!」
「ぐは......!」
「それを追放理由にしたら...ッ! 倫理観でてめえは反論するだろうがよッ!!」
「ぐが....!?」
拳と拳がぶつかり合う殴り合い。それはまるで子供の喧嘩だった。だが、子供以上に本音がぶつかり合っていた。
「お前は民間人も助けて....通りがかりの人も...盗賊すら見捨てられねえ....もう限界なんだよッ.....お前の甘い考えは...いつかパーティを全滅させる...!だから追放したんだよ.....ッ」
リアスは顔を腫らしながらもオルコスを睨みつけるとさらに続ける。
「何より気に食わねえ.....ッ! 俺が見捨てようとしてお前が救った時......俺が冷徹な人間としか思えない.....ッそれも嫌なんだよッ...!!!!」
オルコスはその言葉と同時に拳をくらい、地面に倒れると大の字になる。空は青く、雲は白い。そんな中でリアスは続ける。
「追放して清々した.....なのにどうだ......民間人を救えないと判断して見捨てるたびに....分からなくなるッ....! なぜ目の前の人間を救えないのかって....後悔しかしていない....そんな自分も.........気に食わねえ...ッ」
リアスに目には涙が溢れそうになっていた。必死に押さえつけて流れてこないものの、その目は確かに潤んでいる。
「......そうかよ........」
オルコスはそう呟いた。
簡単な話だ。追放されたのは、実力不足でも、連携でも、迷惑でも、誰が悪かったわけでもない....
ただ......根本的に考え方が違ったからなんだ。




