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第10話 頭を下げる大切さ

 さらに数ヶ月。リアスのいる勇者パーティは着々と魔王の城へ向かっていた。


 「すごいなあ....やっぱり俺は実力不足だったんだな....」

 勇者パーティの進み具合の書かれた新聞を見ながらオルコスは感心していた。


 この頃には「実力不足」という言葉は決してネガティブな意味だけが含まれてはなく。むしろ肯定的に受け入れていた。


 あくまで身の丈にあった通り生きれば人は幸せに生きられる。そう解釈して今を生きているのだ。


 「オルコスオルコス! なんで紅茶と一緒に優雅に楽しんでるの? 私は紅茶もいいけどコーヒー派!」

 マルンがそう元気に宣言するとオルコスは笑う。


 「そっか、じゃあ今度カフェにみんなで行ってみない? いいところ知ってるんだ」

 「いくいく!!」

 

 マルンは嬉しそうにそう言って首をコクコクと縦に振る。

 

 そうしてマルンや、他冒険者何人かを連れてカフェに着く。


 「オルコス、俺こういう店行ったことないんだが...大丈夫か...?」

 「え、別に普通....にはいかないか。俺も普段は行かないし」

 それを聞いたデンタは少し安心すると疑問になったことを聞く。

 「じゃあなんで知ってるんだよ...」

 「えっと、昔の知り合いに紅茶好きがいたんだよ」


 

 *****


 「かっはー!! やはり紅茶はうまいなあ!」

 そう言って紅茶を味わうノーゲンを見てオルコスは苦笑いで聞く。

 「紅茶ってそんなお酒みたいに飲むものですっけ....」

 「なーに言ってる! 紅茶は一気飲みが一番いいんだなあコレが! それにみろ!」

 ノーゲンはそう言って指差すと、その先には飲んでは即座におかわりを要求するフェルスがいた。

 「おかわり、求める...」

 「こっちはこっちで何やってるのかな....」


 やばいやつ2人を相手にしてオルコスはドン引きするが、ノーゲンは続ける。

 「こうやって休日に仲間と過ごすってのも大事だぜ? 仕事をする上でもなぁ!」

 

 「そ....そうなんですね...」



 


 


 「まあそんな感じで紅茶好きがいたんだ。紅茶は一気に飲み干すんだよ」

 「いやちげえよバカ」



 5人はノーゲン流ではなく啜るように紅茶を楽しむ。

 「ふにゃ! 熱っ!!」

 フォニャンは紅茶を口に含んだ瞬間にビクッと震え、デンタは笑う。

 「ばっかでぇ、文字通り猫舌なんだから冷ましてから飲めよ」


 「誰が上手いことを言えと....」

 オルコスはそう苦笑いでツッコむ。


 「いやあ、失敬失敬...ってまたバカって言ったな?」

 「流石に言葉のあやだって.....今回だけは...」

 「今回だけはって言ったぞこいつ!ねえ!」

 デンタの言葉にフォニャンは怒り、マルンはそれを見てクスクスと笑う。

 

 「2人は仲良いんだから〜」

 「「ちげえから!」」

 

 シンクロした。






 そうやってカフェを出て、次はどこに行こうかと話し合ってると怒声が耳に入る。

 「——このやろ...!」


 「どうしたんだろ、何かあったのかも...!」

 「ちょっとどこに!」

 「なになにー?」

 そう言ってオルコスは迷うことなくその声の方向に走り、3人もそれについていく。




 そこには大男が小さな少女を平手で叩く瞬間だった。パチンと音が鳴り響き、あたりを人々が囲うようにしている。

 「ちょっと失礼...!」

 オルコスはその人混みを抜けると、少女と大男の間に入り込むようにする。

 「なんだ? てめえがガキの親か?」

 「ち....違います。ただ....どうしてこの子を叩くんですか? 何か理由があるなら....教えていただけないでしょうか....」


 相手にもきっと理由があるはずだ...それを聞かないとまず始まらない。そう考えて相手を怒らせないようにオルコスは土下座で割り込んだのだ。

 「なんだあ?部外者が入ってくるんじゃねえよ!」

 大男を逆撫でしたのか、大男はオルコスに対してさらに強く言い、デンタやフォニャンが止めようとするが、その瞬間全員が驚く行動をオルコスが取る。


 「お願いします!! どうか教えてくれませんか!?」

 オルコスが見せたのは土下座であった。


 「え....」

 3人とも、というか全員が驚いていた。フォニャンが人混みを抜けると戻るように催促するがオルコスは土下座をやめない。

 「やめなって! オルコス関係ないじゃん!」

 「知りたいんだ! なんでこうしてるのかって!」

 「恥ずかしいからやめてー!」

 意志の固いオルコスとフォニャンの言動を見て、大男もドン引きするが、頭が冷えたのか口を開く。


 「その.....あれだ、こいつが俺の財布を擦ったんだ....それでついやっちまった。俺が悪いとは思ってねえが...まあ、なんだ」

 「そうなんですか! ありがとうございます!」

 オルコスは頭をペコペコと下げると少女の方を向く。

 「君は.....どうして盗ったのかな?」

 「....お腹が空いて.....」

 少女は泣きそうな目でそういうと、事情を察したオルコスは言う。

 「孤児院はわかる?」

 「わ...わかんない....」

 オルコスは地に膝をつくと少女の目線に合わせて言う。

 「人の物は勝手にとっちゃいけないよ。困っているなら国に君たちみたいな子を助ける場所がある。あとでお兄さんが一緒に着いていくよ」

 オルコスはそう邪気のない笑顔でニコリと笑うと、大男の方を向く。


 「事情はわかりました。首を突っ込んで申し訳ありません...彼女は俺がなんとかします....もしそれでも不満なら俺を殴っても....」


 「いやいい。ついカッとなってやっちまったが、無実の人間殴るほど落ちぶれちゃいないんでね」

 大男はオルコスの目を見て言うとオルコスは再度頭を深々と下げる。


 「君も謝るんだ」

 オルコスの言葉で少女も頭を下げると大男は言う。


 「次やったらタダじゃおかねえ。兄ちゃんに感謝してしっかり更生するんだな!」



 大男はそう言って去っていった。


 「じゃあ行こうか?」

 「行こうかじゃねえ、なーんで厄介ごとに首を突っ込むんだよ本当に...」

 「まあ助かってよかったじゃーん」

 マルンは楽観的にそう

言い、フォニャンとデンタはその行動に呆れて笑うのであった。

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