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死して八年、デスナイトとして蘇る。――この食い荒らされた世を切り裂き、狂った因果に復讐を  作者: Tiny Abomination in a Jar


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共犯者

工房の余熱がまだ残る中、銅ドワーフ崩壊後の銅屑が石畳に熱みを帯びて光っている。




「俺の、俺の魔鉄鋳剣まてつじゅうけんが……! 次に試す時は一言断れと言っただろう!」




ラクドンの咆哮が静寂を切り裂いた。彼は斬り伏せられた剣の傍らに伏し、溶け落ちた裂傷をなぞりながら顔を青くさせている。彼は俺の手にある星紋の長槍を指差し、鉄灯を震わせるほどの怒声を上げた。




「嗚呼、なんてことだ! 一体全体どうなってる!? なぜ俺の剣がこんな姿に……そもそも、そのハムレットってのは何なんだ!」





俺は彼の興奮した肩を押さえ、指先で槍身の流れるような星芒をなぞり、落ち着いた口調だが断固とした堅気で言った。




「そう熱くなるな、老いぼれ。……ハムレット。それはこの槍の名であり、ある故人の名だ。不条理を拒み、運命を呪い、そして最後に『沈黙』をもたらした男のな」




前世の人々は「生きるか、滅びるか」の問いだけを覚えているだろう —— 俺は槍身を回し、星紋が炎の下で細かき光りを広げる。最も衝撃的だったのは、彼が海より生還した時、瞳に残るのは破壊だけだったことだ —— 彼はこの汚らわしい世界を、自らを含めて滅ぼすと選んだのだ。




ラクトンは黙り込み、地面の魔鉄の破片を見下ろし、あごの濃い髭の下の顔は複雑そのものだった。




「この槍があれば、あの鉄塊どもに相手になっても、絶対に負けない」私はハムレットを挙げ、槍先が空気を裂き澄んだ轟きを響かせた。五日間、鍛造、捻じり、エッチング、焼き入れを経て、ついに傑作が生まれた。



俺は工房の奥へ向かおうと足を踏み出したが、突然足を止めた。




身辺には慣れ親しんだミントと柑橘の清冽な香りも、シダー、蜂蜜、白茶の柔らかな香りも消え、空気には銅錆と余熱の臭いだけが漂い、俺は一瞬見失った。




振り返ると、工房中央の長テーブルのそばで、二人の姿が身を屈めて眠っていた。警戒も鋭さも消え去った、穏やかな寝姿だ。




シルヴィアはラクトンの用意した絹布団に包まれ、まるで丸まった幼獣のようにテーブルの隅に身を寄せている。銀色の長髪が布団に散らばり、汗で湿った数本が滑らかな額に張り付いている。頬は柔らかな布団の山に埋もれ、鼻尖が少し赤く、長いまつ毛が垂れて眼下に浅い影を落とす。均整の取れた呼吸が緩やかに上下する、そばり冷ややかだったエルフの少女に、儚く柔らかな雰囲気が生まれている。布団の縁がずり落ち、細やかな足首が覗き出ている。以前の戦いで彼女は負傷したのだろうか?包帯が白い肌に対して際立っている。




クレアはシルヴィアの隣に坐り、冷たいテーブルの脚に背を寄せ、頭を少し横に傾けてシルヴィアの肩凭れている。整えられた白い修道服に埃がつき、襟元が少し開いて繊細な鎖骨が覗いている。深茶色の長髪は緩く束ねられ、数本の毛髪が頬に垂れ、穏やかな顔立ちを一層蒼白に見せている。眉間には僅かに皺が寄り、眠りの中でさえも消えない疲労が残っている。柔らかな呼吸がシルヴィアの髪の上をそっと撫でる、春先の柔らかな風のように、静かで安らかだ。




俺は足音を殺して近づき、二人の眠り様を見つめ、胸の緊張が静かに解けていった。ラクトンも追って来て、この光景を見ると、元の怒りは完全に消え、小声でつぶやいた。



「この二人、本当に疲れ切ったんだろう」




「静かに」



俺はラクトンに指を立てて黙らせ、二人をそっと見守り続けた。




ウォルスが去る前の真心にあふれる告白を思い出す。結局のところ、シルヴィアであれ、クレアであれ、彼女たちは俺にとって到底何なのだろう?




生まれ変わってから、この世界で十六年を過ごした。前世の記憶は曇り、俺は長すぎる長さで人と人との信頼や温もりを感じたことがなかった。俺のしてきたことが正しいのか?少なくとも殺人は法律で許されないだろう。だが、殺さない方法はあるのか?前世の記憶の影響か、認められない。人間の皮を着た畜生と、規則正しく真剣に生きる人間と、同じだろうか?畜生は人を食らい、私は畜生を食らう。こう見れば、私と畜生はこのルールの前では何ら変わりはないのだ。




ねえ、クレア、シルヴィア。地獄から来て、両手に血を塗った野獣が、君たちと立ち並ぶ資格が本当にあるのだろうか?




俺たちが一緒にいられるのは、神様がくれた僅かな安息時間なのだろうか。それなのに、人生はどこから始めればいい?変化はどうやって始まるのか?泥沼の中で生きる俺が、どうやって手を引くことができるのか?それとも、変化する必要が本当にあるのだろうか?




また、以前救った子供たちや弱い者たちを思い出す。彼らが「英雄」と呼んでくれた時、冷え固まった俺の心が、本当に鼓動したのだ。彼らの目には、俺は英雄だ、彼らの世界を支える大英雄だ、聖都から来た英雄だ。




だから、英雄になる代償として、これらの罪悪感を背負わなければならないのなら、俺はこの泥沼に沈む気だ。だから、シルヴィア、クレア。もし君たちが私と共に行き、共にいたいのなら、この罪悪感も君たちが背負わなければならない日が来る。俺たちの関係は、完全に共犯者になるのだ。




ここまで考えると、胸の奥に、水を含んだ綿を詰め込まれたような閉塞感が広がる。俺はラクトンに挨拶し、息抜きに外に出ようとした。




坑口の外に出て、見上げる。満月が高々と空に浮かび、清らかな輝きが大地に降り注ぐ。だが、この満月は俺に遅くまで照らされ、足元の泥沼を照らすことも、心底の寒さを暖めることもできない。月の光は霜のように肩に降り注ぎ、クレアの修道服の白さに似ているが、その清らかな暖かさには欠けている。




遠くを眺めると、明かりが灯り、一派の平和な様子だ。工房の明かり、遠くの村の明かり、聖都の微かな光が、柔らかな海のように織り成されている。だが、その平和の裏には、どれだけの隠された悪意と葛藤が隠れているのだろうか?俺の両手に塗った血のように、この静かな夜の中に隠され、誰も知らず、誰も問いたださない。




俺は手を伸ばし、手のひらに降り注ぐ月光を捕らえる。冷たくて刺すような感触だ。




ハムレットが背中に寄りかかり、星紋が月光の下で淡い青みを帯びて光り、暗闇の中に潜む欲望と貪欲そのものに似ている。




今夜の月は美しい。だが、その美しさは鈍いナイフのように、一つ一つ私の心を切り裂いてくる。




坑口に立ち、その平和な灯火の海を見つめ、長く身動きしなかった。




どのくらい時間が経っただろう、背後から柔らかな足音が響き、馴染みの草木の香りが漂ってくる。




俺は振り返り、クレアとシルヴィアが坑口に立っているのを見た。月光が二人の髪の毛に銀色の光を降かしている。クレアは薄い毛布を持ち、瞳に心配そうな光を湛え、黙って私を静かに見つめている。




坑口から風が吹き、工房の余熱と、彼女たちの柔らかな香りが一緒に漂ってくる。




俺は突然気づいた。英雄であれ、共犯者であれ、泥沼であれ、楽園であれ。君たちが

俺のそばに立ってくれるなら、この世のすべての罪悪感は、俺が背負う。




そして、この満月が、俺たちの共に行く証明なのだ。

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