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死して八年、デスナイトとして蘇る。――この食い荒らされた世を切り裂き、狂った因果に復讐を  作者: Tiny Abomination in a Jar


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原子の胎動

工坊の側門に辿り着いた瞬間、耳を刺すような金属の摩擦音が吹き付けてきた。ドワーフの悲鳴と、重量物が叩きつけられる鈍い衝撃音が交錯する。柵は既に粉砕され、折れた木片には暗褐色の血がべっとりとこびり付いていた。黒曜石の如き鎧を纏った三つの影が、巨大な鉄斧を振るい、ドワーフたちの群れを蹂躙している——アイアン・ドワーフだ。


奴らはドワーフと同等の背丈ながら、その肉体はより厚く、鈍色に沈んでいる。装甲の継ぎ目には禍々しい溝が刻まれ、感情を排した暗紅色の眼窩が、兜の奥で冷たく光る。重厚な斧が風を切るたび、錆びた鉄の臭いが立ち込めた。職人たちの槌が奴らの装甲を叩いても、火花を散らすだけで白条一筋すら残せない。逆に凄まじい反動が腕を痺れさせ、一瞬の隙に鉄斧が肉を断ち、骨を砕く。


「ここを死守せよ! 奥へ通すな!」 俺は叫び、大剣を握りしめて先頭を切った。剣身に冷徹な光を宿し、跳躍する。狙うは装甲の隙間、頸部——。


「——ギィンッ!」 劈くような衝撃が耳を突き、手首に痺れが走る。刃は弾かれ、黒曜石の肌に僅かな傷をつけたに過ぎない。アイアン・ドワーフが緩慢に首を巡らせ、暗紅色の視線で俺を固定した。喉の奥から油圧回路の軋みのような咆哮が漏れ、鉄斧が頭上から振り下ろされる。


俺は横へ飛び退いた。斧は肩甲を掠め、地面の青石を粉砕化して深く沈み込む。息つく暇もなく、次の一撃が襲う。動作こそ鈍重だが、一撃一撃が地殻の崩落にも似た質量を伴い、俺は反撃の機会さえ奪われたまま後退を余儀なくされた。


「……こいつら、生身の道理が通じない!」


シルヴィアの冷徹な声が響く。彼女は青い嵐と化し、狼耳と尾を露わにして狂暴な魔力を解放した。アイアン・ドワーフが斧を振り上げた一瞬の隙を突き、奴の肩を踏み台に跳躍。魔力を込めた短刀をその隙間へとねじ込む。 クレアは後方で神聖結界を展開し、我々の傷を癒し、疲弊を押し留める。


「……蛮力だけじゃ埒が明かないな。マクベサがいれば話は別だが」


「……姉様を想い出したの? ふん!」


ようやく沈黙した鉄の塊を見下ろし、俺はラクドンへ問いかけた。


「生命の鼓動も、死の気配も感じられない。これで終わりか?」


「……分からん。今日の連中は、何かがおかしい」


予感は的中した。地に伏したはずの鉄屑どもが、さびった歯車を無理やり回すような音を立てて再び起き上がった。奴らは痛みの呻きを漏らすこともなく、機械的な足取りで互いに歩み寄り、密集していく。


「……融合だと?!」


シルヴィアの声が微かに震えた。 アイアン・ドワーフたちの装甲が激しく震動し、溝の紋様から溶岩のような暗紅色の光が溢れ出した。掌を合わせ、磁場に引き寄せられるように鉄の肉体が衝突する。金属同士がねじ切られ、黒曜石の殻が蝋のように溶けては再構築されていく。空気には、落雷の後のような強烈なオゾンの臭いが立ち込めた。青白き電弧が蛇のごとく這い回り、原子の配列を強制的に書き換えていく。


「……排除……反逆者……排除……」 共鳴する金属音が、歪な和音となって響き渡る。 十息と経たぬうちに、七、八体のアイアン・ドワーフは一体の銅色あかがねの巨人へと変貌した。身丈は二メートル半を超え、古銅色の外殻には高圧の電磁パルスが脈動している。


カッパー・ドワーフの瞳が、熾烈な橙金色に燃え上がった。 「……排除……反逆者」


「下がれ!」 俺は反射的に前に出た。カッパー・ドワーフの右腕が動き、電弧の鞭が空気を引き裂いて襲いかかる。


「——ガッ!」 大剣で受けるが、物理を超えた磁場に弾かれ、全身の筋肉が痺れに硬直する。奴が一歩踏み出すたび、足下の石板は質量の重圧に耐えきれず、粉微塵となって弾け飛んだ。


「物理攻撃が効かん!」 ラクドンの槌も磁場の障壁に阻まれ、虚しく火花を散らす。 シルヴィアが再び氷狼と化し、狂風を纏って突撃した。冷気が電弧を抑え込み、磁場の障壁に綻びを作る。その刹那、隙間を縫ってクレアの放った神聖なる光の矢が、奴の胸深くに眠る橙紅色のコアを射抜いた。


金属が引き裂かれるような断末魔が響く。俺はその亀裂に大剣を叩き込み、ラクドンの槌が膝の関節を粉砕した。 光核が爆ぜ、カッパー・ドワーフの巨躯は糸の切れた傀儡のように硬直し、次の瞬間、熱力学的な崩壊を遂げた。残されたのは、陽炎を上げる銅の残骸と、歪んだ金属の破片のみだった。


オゾンの臭いがゆっくりと薄れていく。


「……鉄の時より、遥かに手強い」俺は荒い息を吐きながら言った。


ラクドンは汗を拭い、顔を歪めた。


「進化してやがる。以前はこれほど統制が取れてはいなかった」


シルヴィアも人形に戻り、肩をさする。


「一体、何が起きているの?」


俺は足下の残骸を凝視した。胸の奥に、鉄錆に似た冷たい予感が広がる。


「……次があるとするなら、それはもう『銅』じゃないはずだ」


こいつら、本当に核融合反応フュージョンしていやがるのか。

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