俺のやり方
俺は二人の小汚いガキを土嚢のように担ぎ上げ、宿の親父の驚愕した視線を無視して、ギシギシと鳴る木造階段を大股で上がった。
「熱い湯を二樽用意しろ。今すぐだ」 冷たく言い放ち、さらに言葉を継ぐ。 「それから、『世話役』を二人呼んでこい」
親父は察しのいい男だった。俺の放つ殺気と背中の漆黒の大剣を一目見るなり、余計な詮索はせず、揉み手で承諾して飛んでいった。
ほどなくして、廊下から軽薄でリズミカルな靴音が聞こえてきた。 年配の、そしていかにも場慣れした風塵の女たちが、肥えた腰をくねらせ、媚びるような足取りでやってきた。彼女たちは親父の言葉を誤解したのだろう。羽振りのいい客が二人同時に呼び出したと思い込み、わざと胸元を大きくはだけさせ、顔には粘りつくような職業的な笑みを張り付けていた。
「あら、旦那。一度に二人なんて、随分と体力が――」
言いかけた言葉は、先頭の女が喉を詰まらせたことで途切れた。 安物のアイシャドウで縁取られた目が限界まで見開かれ、俺がベッドに放り出した二人のガキを凝視した。灰毛の獣人と、人間の小娘。泥溜めから引き揚げた猿のように薄汚れたその姿。大人一人に子供二人、しかもその一人は少女というこの異様な光景は、人生の大半を底辺で過ごしてきた彼女たちにとっても、初めて目にする珍事だったに違いない。
「呆けてないで、さっさと動け」 俺は影の落ちる揺り椅子に腰を下ろし、肘掛けを指先で叩いた。 「この湯は俺のためじゃない。お前たち二人は、この小さいのを一人ずつ受け持て。頭の先から爪先まで、髪の毛の一本に至るまで徹底的に洗い清めろ。ついでに、身体に合った清潔な服も用意させろ」
彼女たちが反応する前に、俺は二枚の銀貨を指先で弾き飛ばした。卓上で金属が鳴らす清脆な響きが、彼女たちの意識を強引に引き戻す。
「これは手付金だ。きっちり仕事をこなせば、さらに上乗せしてやる」 情欲など欠片も含まない冷徹な一瞥をくれた。 「下の階で、悪臭漂う傭兵どもに身体を弄られながら稼ぐよりはマシな額になるはずだ。分かったか?」
最後の一言を聞いた瞬間、女たちの身体が僅かに震えた。 彼女たちは先ほどまでの媚びを売る醜いポーズを捨てた。瞳から軽薄さが消え、代わりに複雑な色が宿った――それは久しく忘れていた、一人の「人間」として仕事を託された時の、奇妙な厳粛さだった。彼女たちは返事をする余裕すらなく、ただ恐縮したように深く頷くと、まだ気を失ったままのラグとルルを左右から抱え上げ、音を立てないように慎重に退室していった。
俺は下に降りて適当な料理をいくつか頼み、一人で窓際の席に座った。太陽が地平線の彼方へと沈みゆき、残光が灰色の海面に砕けた金細工のような光を撒き散らすのを眺める。
疲れた。それも死ぬほどにだ。ガキの相手なんてのは、あの血塗られた下水道での死闘を演じるよりも、よっぽど精神を削りやがる。あの二人の厄介者が廊下の向こうへ消えていくのを見送りながら、俺はこめかみが激しく脈打つのを感じていた。
さて、これからどうすべきか。あのガキどもをコーシーに放り投げるか? それとも、本気であの腐りきった聖都までこの足手まといを連れて行くつもりか? そこまで考えが至ると、また頭が痛みだした。
「……くそ、考えても仕方がねえ。明日は明日の風が吹くってな」
独りごちて、俺も熱い湯をひと樽用意させ、その中に身体を沈めた。熱湯が傷だらけの背中を包み込む。立ち上る湯気の中で目を閉じ、俺はあの鬱陶しい責任感とかいう代物を、まとめて水の中に沈めてやりたいと願った。
翌朝。
俺はあの二人のガキが放り込まれた部屋の扉を開けた。 二人は既に目覚めており、ベッドの縁に並んで座っていた。昨晩の女たちは、金を受け取っただけの仕事はしたらしい。ラグの絡まりきっていた灰毛は滑らかに整えられ、泥だらけだったルルの顔は、洗ってみれば白磁の人形のように白く清潔だった。
俺が中に入るなり、二人のチビどもはシンクロするように首をすくめた。俺に向ける眼差しには、依然として強い警戒心が宿っている。まるで、いつ噛みついてくるか分からない野獣を観察するような目だ。だが、その警戒の奥底には、感謝や畏怖、そして……俺には説明のつかない、読み解くこともできない複雑な感情が入り混じっていた。
彼らに対して一度として優しさを見せなかったこの世道において、唐突に与えられた熱い湯と金貨は、俺の大剣よりも彼らを戸惑わせているようだった。




