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今日も数少ない友人に引かれながら過ごした

主人公がようやくゲームを始めました。まだ設定だけですが……。文字数今までよりも多めです。



 爆速で大学から帰ってきた金曜日。大学では常に挙動不審で落ち着きがなく、講義が終わった瞬間に荷物を引っ掴んで講堂を飛び出した私は、今はヘッドセットの取扱説明書を読んでいるところである。ペラペラと流し読みをし、大体は他のゲーム機と同じのようだった。注意しなければいけないことは、使用時は柔らかいものの上で仰向けに寝転場なくてはいけないこと、使用前に食事、睡眠、排泄等は済ませておくこと、とあった。それと、ゲームを起動させてから十二時間が立つと強制的にログアウトされるらしい。なんでも脳に負荷がかかり過ぎないようにするためだとか。


 大まかに理解した私は早速ご飯を軽く食べ、トイレにしっかりと行ってから布団の上に寝転んだ。ヘッドセットを着けて、念願のゲームを起動する。その瞬間、まるで自分突如空中に放り投げられたかのような浮遊感を感じ、軽くパニックに陥る。例えるならば、夢の中で転んだり、階段から落ちたりしたときのような感じだ。


 無意味に手足をばたつかせたりして落ち着きを取り戻した私は、辺りを見渡してみる。今いる場所はなんというか、真っ白なタイルの床だけが空中に浮いているみたいな場所だ。高いところが無理な人ならばこれだけでログアウトしてしまうのではないだろうか。まあ私は絶叫系もお化け屋敷も大好きな図太い女なので何も問題はないが。


 それはさておき、辺りを見渡してみると恐らく案内役であろう綺麗なお姉さんが目に入った。恐らく私が落ち着くのを待ってくれていたのだろう。僅かに申し訳なさを感じつつそのお姉さんに話しかける。


「あの、えっと、こ、こんにちは……?その、あなたは誰でしょうか」


 いくらなんでも(ども)りすぎではないだろうか。己の会話能力の低さに心の中でツッコミをいれる。相手は生身の人間ではなくゲームのキャラクターだというのに。だが、幸いなことにお姉さんは特に気分を悪くした様子はなく、笑顔で自己紹介をしてくれた。


「初めまして、ようこそ【Free World】へ。わたくしはリーシャ。キャラクタークリエイトのサポートを務めさせていただきます。まずはあなたの名前を入力してください」


 そのセリフを聞き終わると同時にタッチパネルのようなものが空中に現れた。どうやらこれに入力すればいいらしい。


「あの、これって本名じゃなくてプレイヤーネームですよね?」


「はい。こちらで入力された名前はプレイヤーとなったときの名前になります。本名でいいという方は本名を入力していただいても構いません。ただ、表記がカタカナしかございませんので、その点だけお気をつけてくださいね」


 確認程度の質問だったのにめちゃくちゃ丁寧に返されてしまった。さて、名前はどうしようか。考えるのも面倒くさいし本名をもじったものにしよう。そうだな、下の名前がレイナだから……イナでいいか。たぷたぷとキーボードを操作して、イナ、と打ち込む。変更はできないらしく最終確認の画面が表示された。名前を"イナ"で決定しますか、という質問に対してはいを押して送信した後で、レイでも良かったんじゃないかと思ったがまあいいかと思考を切り替える。


「イナ様でございますね。名前の入力が完了したら、次はキャラクタークリエイトに移ります。今から表示する画面を操作して、自分の体を好きにいじってみてください。」


「これって顔とか身長とか体型は変えられない感じですか?」


 少し気になったので聞いてみると、リーシャさんは嫌な顔ひとつせずにこやかに答えてくれる。


「体型等をいじることは、あまりに現実世界との差が大きいと動きに支障が出てしまうため、あまりおすすめはしません。ただ、顔などは自由に変えられますよ。他のプレイヤーの皆様が主に変えるのはカラーリングや髪型、衣装などですね」


 なるほど。ならば私は自分の体が悪い方ではないと自覚しているので体型はそのまま、顔もそのままで行かせてもらおう。これでも高校時代では何回か告白されているのだ。あの時の男子たちの審美眼を信じて私はカラーリングの設定に移った。


 目の色、髪の色、肌の色などが変えられるようで、結構種類が豊富である。しかもかなり細かく指定できるようなので、自分の満足いく姿に仕上がりそうだ。早速設定をいじっていく。


 まずは髪の毛。色は黒以外だと視界に入った時に違和感が強くなりそうだから黒色。グラデーションなどもできるようなので、毛先にかけてすこし紫がかった黒にする。結構いい感じではないだろうか。髪型はロングヘアで少しウェーブするようにした。


「素敵な髪色ですね。例えるならば夜空の色をそのまま髪に溶かしたかのように感じられます」


 リーシャさんが大分詩的な褒め方をしてくれる。ここまで直球で褒められると少し照れてしまう。まあ、それは置いといて。続いては目の色だ。どうせなら現実感のない目の色がいい。私は少し悩んで、目の色を金色に近い琥珀色にした。


「髪の色と合わさってぱっちりとした目がまるで満月のようです。よくお似合いですよ」


 姿を変えるたびに褒めてくれるリーシャさんにむず痒い感情を抱きながら、その後も設定を続ける。


 そうしてできた私のアバターはこのようになった。何故かある鏡で今の自分を見ると、黒と紫のグラデーションになっているロングヘアで琥珀色の目をした美少女が映っている。黒いパーカーに白の短パンというシンプルな格好が、鏡に映る少女をさらに可愛く見せていた。


 満足した私はリーシャさんに声をかけて、次の設定に進んだ。

読んでいただきありがとうございます。次回こそ、次回こそ主人公は冒険を始めてくれるはずです。

誤字脱字等ございましたら優しくご報告してもらえると嬉しいです。ちくちく言葉はご遠慮ください。

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