玄関前で仁王立ちしてゲームソフトを迎えてやろうかと思った
ゲームをスタートするところまでかけませんでした……。
一週間をそわそわと落ち着きなく過ごし、ついにゲームソフトが届く日となった。今日が楽しみ過ぎて昨日は眠れず、目がバッキバキの状態で大学に行った結果、数少ない友人に怯えられ、周りの人に少し距離をおかれながら過ごした記憶に新しい出来事を頭の隅に追いやる。部屋の中をぐるぐるウロウロと徘徊する不審者と化しながら、インターホンが鳴るのを今か今かと待っていた。
いっそのこと玄関の外で仁王立ちしてソフトを迎えてやろうかという思考に陥りかけたとき、待ち望んでいた普段は誰も押さないインターホンが鳴った。今すぐにでも玄関に飛んでいきそうな体をなけなしの理性で抑え、極力平常心を心がけながら、玄関を開ける。
暑い中来てくれた配達員さんにありがとうございますと言って、印鑑を押し、荷物を受け取って鍵を閉める。次の瞬間、ダッシュで部屋に移動し段ボールを丁寧に床に置いた。そして拳を掲げて喜びを噛み締める。ようやくスタートラインに立つことできるのだ。発売日から約一ヶ月。それなりに早い方ではあるが、それでも私にとっては長い戦いだった。本当はSNSで自慢したいところだが、まだ当選していない人たちに配慮して心の中で自慢するだけに留めておく。
今日は木曜日だから、土曜日、いや金曜日の午後から目一杯ゲームを楽しんでやろう。午前は確か大学の講義が入っていたはずだ。まだ当選してない人たちの分まで楽しむから安心してね、と勝手なことを考えながら段ボールにカッターの刃を入れる。途中まで切ったところで面倒くさくなって手で引きちぎってしまうのは私だけではないだろう。段ボールを放り投げて中に入っていたものを丁寧に丁寧に取り出し、都合のいい夢ではなかったことに心から安堵した。
今開けると絶対にプレイし始めて徹夜か寝坊をしてしまうから、明日の午後に開けよう。それなら徹夜も寝坊も心配する必要がなくなる。それに週末の予定なんて今までヒトカラか買い出ししかなかった。遊ぶ友達なんているにはいるがみんなインドア派のためわざわざ予定を組まない。今だけは週末の自分がぼっちであることに感謝した。
そうだ、土日に家に引き篭もるならば日用品を今から買い足さなければいけない。道ゆく人全員に、私は新作ゲームに当選しましたよ、と声高らかに宣言したい気持ちをグッと堪える。いつもならば暑い夏の真っ昼間に外に出るなんてしないけれど、今日は感情が昂っていたためそんなことは気にせず外に出た。晴れ晴れした気分の今にもスキップを始めそうな足で、庶民の味方である業務スーパー様に向かった。
次回こそゲームをスタートしてくれるはずです。
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