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どんな乙女だってガニ股ガッツポーズで雄叫びあげる

初投稿です。完全に趣味で書いているので拙いところもあると思いますが、もし気に入っていただけたのならば、暇つぶし程度にご覧くださいませ。



 今日もスマートフォンを片手にベッドの上に寝転んで、意味もなくインターネット上の投稿を眺めていた。いつも画面をスクロールするだけで内容はあまり頭に入ってこない。普段は多種多様な投稿が入り乱れているのだが、その日はいつもより似たり寄ったりな投稿が多かった。新作のゲームが面白いだとか、新作ゲームの応募に当選したとか落ちたとか、新作ゲームを配信する者たちの宣伝などなど、先日発売されたゲームの話題で溢れかえっている。

 私もそのゲームの存在を勿論認知していた。世界初のフルダイブ型VRゲーム。フルダイブ型ということはつまり、自分自身が仮想世界に入り込み、現実じゃあり得ないことを体験できるということである。その仮想世界では五感も機能するため現実世界と同じように動けるらしい。 

 このようなゲームは前例がないため応募が殺到し、バグのような桁の倍率となったようだ。無論私もインターネットで情報を見つけた瞬間に応募し、当然と言えば当然だが敢えなく落選した者の一人だ。今は二回目の応募の結果を待っており、日課のネットサーフィンも待ち時間の暇つぶしを兼ねていた。


 画面をスクロールするタップ音だけが響く部屋の中で、ピロンとメールが送られた。すぐにメールアプリを開き、震える手で送られたばかりのメールを開く。


「うああ〜〜……」


 思わず口から漏れ出た呻き声が薄暗い静かな部屋に溶け込んでゆく。


 結果は落選。そりゃあそうだ、倍率は初回と同じかそれ以上。日頃の行いがとてもいいわけでもない自分がそんな簡単に二回目で当たるとは思っていなかったが、そう予想していたとしてもやはり心にくるものがある。


 しかしこの程度でしょげていてはキリがないので、めげずに三回、四回、と応募する。それから応募した数だけ落ち続け、ついに三週間が経過した。


 おそらく七回目となる応募の結果をあまり期待せずに待つ。三回目あたりまでは辛うじてあった、純粋な少年のような心は、落選続きのメールに打ちのめされて、ませた女子大生の心の中にすっかり引きこもってしまった。少年の心はおそらく当選するまで出てこないだろう。


 そんなくだらないことをつらつらと考えながら、三週間前のあの日のようにネットサーフィンをしつつメールを待つ。あの日よりも新作VRゲーム関係の投稿が多く目につき、当選した、落ち続けている等の自己満足に過ぎない報告に対して時に妬み、時に同情し、時に自分よりも下がいるとわかって安堵する。その繰り返しに終止符を打つように、ピロンと通知が来た。メールを開くまでの動作が三週間前とは比べのもにならないほど早く感じるのは恐らく勘違いではないだろう。


 これから襲ってくるであろう落胆に対する心構えとほんの少しの期待を胸に抱き、最新のメールをタップする。そのメールに思わず二度見、いや三度見してしまった。ついでに引きこもっていた少年の心が出てきて、「ッシャオラァ!」というおよそ乙女に似つかわしくない雄叫びをあげてしまったことをここに記しておく。


 けれど仕方がないだろう。だって、この三週間、心から望んでいた『当選おめでとうございます』という文言が目に飛び込んできたのだから、どんな乙女だって被っていた猫を脱ぎ捨てて、ガニ股ガッツポーズで勝利の喜びを声に出すはずだ。


 いや、そんなことはどうだっていい。


 応募回数が増えるにつれて応募者も増え、倍率もどんどん高くなり、希望はさらに薄れていった中で、自分よりも少ない応募数で当選した勝ち組の投稿が目に入る度に心の中で毒づく三週間が報われたような心地だった。

 

 悲しい記憶を思い返しつつ、メールを詳しく読んでいけば、ソフトだけではなくヘッドセット、つまりゲーム機も一緒に届くらしい。およそ一週間後だと。


 何はともあれ、これで私も勝ち組の仲間入りを果たし、遅ればせながらようやくスタートラインに立てる。


 最初のプレイは長時間やりたいから届いてから最初の週末にしよう。


 そう心に決めて、浮き立つ心を抑えながら布団の中に潜り込む。これが都合のいい夢ではないことを祈りながら、いつもより気分良く眠りについた。

誤字脱字等ございましたら、優しい言葉でご報告していただけると嬉しいです。ちくちく言葉はご遠慮ください。ネットに慣れていないため私が泣いちゃいます。

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