表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

ないものねだりをしていたのです。

作者: 疲労男

ないものねだりをしていたのです。

昔の話というのは、どんな人間に聞いても必ず出てくる話ですが、それぞれが別の話をするものです。


昔は良かった。辛かった。今もいい、今はダメ、それぞれの話をしているものですが、それぞれ過去の感想が違う。


ただ、過去の話をしていると、話を終える時には必ず、今の話が出てくるのです。


それは人は必ず比較をするということか、それとも辛いことから逃げたいということなのか、良くも悪くもわからないものだと感じております。


さて、戯言を述べていましたが、そんな私にも昔の出来事があるのです。昔の話をしてみましょう。


今から12年前、当時10歳のころのお話です。

当時私はいじめられており、学校では汚い、気持ち悪いと言われ続けていました。学校の先生に相談しても解決せず、親からはお前が悪いと言われていました。ですが話当時の私には一つだけ居場所がありました。


当時所属していたサッカークラブです。過去のことを考え、そりゃもう活躍している…というわけではなく、悲しいことになかなかに上達はせず、ボールを蹴るのは苦手でキーパーをやっていました。


と言っても、キーパーの才能が特別良かった訳ではなく、やれる人がいないからやっているだけの凡人です。


そんな当時の私は、コミュニケーション能力も低く、同じサッカークラブの子から遊びに誘われたことはなく、かと言って邪険にされることもありませんでした。


いたら話す。そんな人に収まっていたのです。まあ当時の私は今より変わり者なので、仕方がないと思っていたのですがね。


さて、私のサッカークラブには夏と冬に合宿がありまして、秋に系列クラブ内での大会があり、クラブ同士の熱い戦いが起きるのです。


なので夏の合宿は特に練習が暑く、かなり根気強く教えてくれるのです。

そんな中、私はそんなことなど気に留めず、合宿というだけでテンションが上がってしまっていました。


朝バスにのり、札幌にある実家を出て、田舎町の山の中にあら合宿場に行っていました。

それぞれが荷物を持って降りて、一つしかない大部屋に沢山ある荷物を置いて行きました。


「いくぞー」


そんなコーチの言葉を聞き、私たちは急いで整列し、体育館へと向かいました。そこには別クラブの子達もいたのです。


「2日目に練習試合があるって」


そんなクラブの子達の話を盗み聞きしながら、私はただ練習をしていました。


最初は基礎の練習を積み重ねていました。リフティングやパス練習、ドリブル練習、学校の体育館の半分程度しかない場所で、さらに他クラブで半分に分けて練習を行なっていると、スペースが足りなくなっていくのです。


当時の私たちは1番年上で11歳、到底我慢できるような環境ではありません。

ですが、私たちのコーチはかなり厳しい方でして、皆キレることはせず、ちゃんと練習を行なっておりました。


そんな中、私はどうだったかといえば、何も気にせず、いつも通り過ごしていました。

そもそもが苦手なものはどれだけやろうができない性格なので、失敗してもため息を吐いて放っておられておりました。


昔の私は何も気にしていませんでしたが、きっと諦められていたのでしょうね。


さて、練習が終わり、昼食に入ります。合宿の定番といえばカレー、私たちが食堂の前に行くとコーチが口を開きます。


「食べ終わったやつから自由時間に入れー、13時から1時間程度、近くにある部屋のトランプとか将棋とか使って遊んでもいいぞー」


そんな声を聞き、周りは盛り上がりました。私も盛り上がりました。なのでみんな早く食べようと必死になっています。


カレーを皆が取り終わり、皆でいただきますと言ってから食べ始めましたが、皆食べるのが早い。私は食べるのが遅かったので、みんなより遅く食べ終わり、オセロをしに別の部屋に向かいます。


ですが、もう皆取り終わっており、私の分はないわけです。仲間に入れてもらおうともしましたが、変わり者の私が入れてもらえる訳はなく、仕方がなく他の場所に行こうと歩み始めました。


いや、結構ノリノリだったかもしれません。


合宿場所は1階に部屋が溜まっており、玄関の前にある螺旋階段からレクリエーションルームにある2階に上がれる構造になっておりました。


さて、小学生の男の子とは馬鹿なもので螺旋階段に少しワクワクしていました。


2階に上がり、どんなものがあるだろうとさまざまな場所に行ってみる訳です。

そこに立ち入り禁止になっている場所を見つけました。

ですが、私は変わり者、そんなことは気にせずに、そこに入ってしまったのです。


歩みを進め、少しずつ歩みを進めて、やがて1番奥にたどり着くと、そこには何もなく、窓が一つしかありませんでした。


ただ、そこに差し込む太陽の光が綺麗だったことを覚えております。


さて、少年の冒険が終わり、さて元の場所に戻ってみる訳です。一階に戻る螺旋階段の前で、ある話し声が聞こえてきました。


「…あいつきもいよな」


「なんでいるんだろうな、あいつ」


それは私のクラスの人の声でございました。さてさて、彼らが話しているあいつとは話を聞いてみると私のことでございました。


まあ無理もないでしょう。この頃の私は感情が抑えられず、ただ誰かに話しかけに行く。そんな嫌なやつではありましたから。

学校の人たちと同じように嫌われても仕方がないこと。


ですが、少年時代の私にはかなりのショックでございました。今考えれば間抜けな事でございます。

何せ、自分は周りに好かれていると思っていたのですから。誘われもせず、ほっとかれていた私に好かれる要素がどこにあるでしょうか。


ですが、それをその人と喧嘩できるほど、私の心は強くありませんでした。さてさて、その後の練習もありましたが、私は何も覚えておりません。

きっとショックだったのでしょうね。


さてさて、話は代わり練習試合へと移ります。

そんなショックの状態でも、ちゃんと試合は始まります。

そんな試合ですが、私のことを嫌っていた人間がただシュートを決めまくり、10対0というかなり悲しい結果になっていました。そんな中私はキーパー、ただ暇で昨日のことを考えてしまいます。


当時の私は元気な性格でしたが、それでも今までの性格を否定されるのはかなりくるものがあります。


さて、練習試合が終わり、よその合宿所から来た人達と負けたチームとの試合が始まりました。


私は誰からも話しかけられることはなく、ただ座っていました。嫌なことが反芻し、ただ悲しい気持ちだったことを覚えています。


ですが、そんな状態であろうと、話しかけにくる人はいません。それが気持ち悪い人間の接し方なのでしょう。


それでも、信じたくありませんでした。自分の居場所に否定されるのは誰だって苦しいものです。


何も考えたくなく、誰かと話したい。でも、周りの人とは話せない。そんな時、得点板の前にいた2人の男の人が目に入りました。


大人なら否定しないで、話を聞いてくれるかもしれない。

そんな希望を抱き、近くに向かいます。


結論から言えば、ちゃんと話は聞いてくれました。

相手もちゃんと話してくれて、色んな話をしていました。


ですが、そんなことがゆるされるはずもなく、コーチはこちらに駆け寄ってくるのです。


最終的に私はコーチに怒られてしまいました。

結構怒られて、回復しそうだった私の心は少しずつ崩れて行きます。


「…二度とそんなことするなよ。本当にめんどくさいやつ」


そんなため息混じりの声に最後の私の心は崩れてしまったのです。


練習試合が終わり、夕食でした。私は夕食をほとんど食べず、食べたふりをして食器を下げ、2階に向かいました。


コーチはついては来ませんでした。面倒ごとを嫌ったのでしょう。


私は2階に上がり、立ち入り禁止の中に入り、突き当たりに向かいました。


そこにある窓からは星が見えます。2階には電気が付いておらず、尚且つ山中の合宿所であったため、星の光が本当に綺麗でした。

その日は、天の川が本当によく見えるのです。光り輝く星空が綺麗ない夜空がまるで一筋の希望のように感じました。


嫌なことを全部忘れられそうで、それでいて連れて行ってくれそうだ。と感じたのです。


「あの先にある惑星に行きたい」


ただ、意味もなくそう思いました。窓を開ける場所を探して、引き戸を見つけて、かかっていた簡易的な鍵を開けて窓を開け、窓の先まで進んだのです。


空を飛べる気がしたのです。


私は浮遊感に襲われました。ですが登っているのではなく、落ちていく。星空は私を肯定せず、地球へと戻してしまったのです。


地面に落下した私は足への痛みと共に意識を失いました。


それから、私はサッカーチームを辞めて、笑顔になることをやめてしまいました。おしまい。


…オチのない話ですねと言われるかもしれません。ですが悲しいことにこれは私の現実でしかないのです。

現実にオチは存在しませんから。


ああ、でもそうですね。

オチとして、現代の話をしましょう。


今私は何も得ておりません。何も誇れるものはありません。自分なりの幸せを探し、そんなものはないと10年間探してから気がついた。そんな青年に成り下がりました。


ヒーローが救うのはヒロインだけ、女性だけで男性はそのまま悪役として生涯を終えるか、ほっとかれるかの二択でございます。


幸せというのは、どこにもなく、能力がない人間には手に入らない。そんな事実がただ苦しい。そんなことを考える日々でございます。


なので、今と昔のどっちが楽しいか?と言われたのならば。


どちらも地獄である。と答えさせていただきましょう。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ