描く未来
何から…はじめようか…。
逆算しろ。今まで見た光景から逆算するんだ。まずひっかかるのは…
『また会いに来るね』
ヴェインのこの言葉…。殺すでも無く、また会いに来る…。そして次に欺瞞の王団…。隊長…。敵は少人数では無く大規模な集団。俺一人では勝てない。仲間を作る…いや、すぐには出来ない。しかも敵の持ってる能力は計り知れない。
「会いに来る…最高のおもちゃ……」
ここだ。俺の次の行動は。
まずは粗相をしなければまず殺されない。
そしてヴェインの言った会いに来た時、なにかしら話にくるはずだ。
ここで俺からいくつか仕掛ける。
戦いではなく会話で。
それにはもしかしたらまた大量な被害が出るかもしれない。
でもそれでも俺は守れる物も守りたいものも決まっている。自分の命を初めて懸けてもいいとそう思ったんだ。何か行動する時、取捨選択はどんな時でも必ず起こる。
見誤ることがないように目を濁らせることがないようにしなくては…。
そう考えながら自分の家へ足を向ける。
来るならいつだ。いつ…
『あらあら帰るにはまだ早いんじゃない?もしかしてサボり??』
心臓の鼓動が一気に早くなる。
この声、この身体全身を覆う。俺の身体が覚えている。振り向けない。
「ヴ……ヴェイン…」
『僕の名前覚えててくれたんだね♡』
そう言いながら俺の目の前に来る。
「な…何しに来た…。」
『あれ?怒ってる?そりゃそっかーー。でも君に先に伝えとこうと思って。』
『君さ…俺たちの仲間にならない?』
はっ…?こいつ何言ってる…?仲間?
あの襲撃を手伝えってのか…?
「断ったらどうなる?」
『もちろん殺すよ。君の仲間もね。ちなみに言っとくけど僕たち全員元は君たち側なんだよね。信じてたのにさ…裏切られて…
そんな時信頼とかけ離れ絶望しか無かった俺たちにあの御方は希望をくれた。』
元は人間だと…?!
『君、似てるんだよねー。その時の僕と。きっと強くなるよ。どうする?』
強くなる?どういう事だ。
いや待て。次の回答が俺の運命を決める。
どうする。考えろ。奴らの行動を逆算するんだ。
やつらの行動、目的を把握。そして全てを壊す。
俺らに信用を強いて居るということは、もちろんこいつらも同じく信用は仲間同士していないということ。
それなら……
───こいつらは内側から壊したほうがいい。
答えは決まっている。
「フッ。それな付き合ってやるよ。その信用もクソもねぇそのお仲間ごっこというのに。」
『うっひょー!!そう来なくっちゃね♡』
「ただし…条件がある…!!
俺を…!!俺をお前らの団体の幹部に置いてくれ!!」
『んー。それは決められないけ…』
「ならいい。今すぐここで俺ら全員殺してくれ。」
多少雑な仕掛けをしてしまったが、ヴェインの行動から全て逆算して考える。まずこいつは俺がどうしても欲しいみたいだ。なんせわざわざ1人で俺だけ先に伝えに来たんだ。誰かに見られるかもしれないのに。それなりの覚悟があるはずだ。そして先に伝えに来た。恐らく俺が他に殺されないように交渉という場を設けたかったんだろう。
そして幹部という立場になれれば全てとは言わないが、ほとんどの情報が手に入る。それに動くとなっても幹部くらい組織の上位にいた方が手っ取り早い。いくつも部隊を連なる王団で下級の兵から探るには無理そうだし、それに出来るだけ時間をかけたくない。
未来は見えてきている…!
まずこの条件が通らないなら仲間になる必要は無い。
『ハハハハッ本当に僕そっくりだね君。いいよ。僕が認めてあげる。きっと君なら呪鎖させた時隊長クラスにはなりそうだもんね。』
笑いながらヴェインは答えた。
『その代わり僕もいいかな。条件つけても。』
『きみの大事なものくれない?僕に。』
「大事なもの…?」
『そう。君が隊長になるのは必然だろう。あの御方も一目置いていたし。でもその君がもし反乱を起こそうって裏で動いていたら僕たちは内側から壊れてくという最悪の結末になる。だから監視役も込めて1人君のことなら何でも信じちゃう子、その子を僕に預けて欲しいんだ。例えば翔真君とかさ。』
大事なもの…なぜ俺の数値は反応しなかったのに翔真が大事だとわかる…!?
それに俺の未来が微かだか読まれている…。
もしや…!!?
俺はもしかしたら…今まで大きな勘違いをしていたのかもしれない…。
「──なぁヴェイン。お前、本当は“敵”じゃないんだろ?」
続く