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逆算の刻

『クッキーどうぞ』


「あ…ありがとうございます。」


俺はクッキーを貰いながら考えた。

涼太の事、あの事件の事を口に出さずに探ることが出来る質問。そうだ、逆算だ。俺は昔から全ての事を逆算して考える癖がある。そうすれば余計な行動をしなくて済む。


考えろ。逆算して考えるんだ。

常に思考や行動には理由がある。その理由を逆算して考えるんだ。それが今1番聞きたい答えになる。


「あの……なんで俺の事知ってるんですか??」


涼太の母親の呼吸のリズム、瞬きの速度、視線、身体の動き。全てに集中させながら答えを待った。


『え?…なんで……。』


母親は黙り込む。

人は嘘をつく時まずは初めに少しの間のズレがある。そして呼吸は通常より焦れば焦るほど浅くなり不安にさせれば呼吸が深くなる。呼吸のリズムが崩れるのだ。更に嘘をつく前は瞬きの数が増える。視線は微かでも動きがある。防御を本能的にする。だから必ず何か違和感を感じるはずだ。


『そういえばなんで知ってるの…?貴方のこと。なにか接点あったかしら…?地区の集まりかしら?…ええ!?なんで私貴方のことこんな詳しく知ってるのー!!』


涼太の母親は焦りながらも少し笑いだした。

それが不気味にも感じたが脳内処理が追いつかず笑ってしまう事は多々ある。それだろう。

そして俺は1番聞きたかった質問をぶつける。


「そういえば、何人家族でしたっけ??」


人は1番最初の質問が1番警戒して考える。

ただここで動揺する質問をぶつければ次の質問はガードが緩くなる。嘘もつきにくくなり、行動の違和感はより強くでる。


『え、あ…うちは3人家族よ。』


ここでかけるは強く確信した。

死んだら存在自体無かったことにされる。

記憶も、写真の中でも全て。

この状況で当たり前かもしれないが、涼太の名前はもちろんそれを匂わせるものは何一つ出てこなかった。それが余計に不気味に思わせた。


かけるは少し母親と話したあと涼太の家をあとににする。


念のため、もう1人の家にも向かった。

可能性を全て潰すために。

もし涼太だけが消えたのなら、まだ別の可能性も考えられる。

でも——結果は同じだった。


二宮絢香。日直が一緒だった時絢香の方から話しかけてくれた。俺は人との会話を避けてきたから女の子から話しかけられた際とても動揺したのを覚えてる。

それがきっかけだった。そこから帰りを一緒に帰ったりもする仲になった。

俺は覚えてるのに…全部…無かったことになるって…。


はぁ…。そっか……。そうだよな…。

あいつら敵にとってはその方が都合いいもんな。


「……いや。そんなの、あってたまるかよ。」


俺はできるだけ人とは関わりたくない。

労力もかかるし、人はすぐ裏切るし、変わってしまう。


でも…それでも…。

涼太と絢香も、そして翔真も——

俺に興味を持って、本気で向き合ってくれた。

それが、嬉しかった。

それなのに、俺は突き放した。翔真の信頼を、踏みにじった。

——だったら、次は俺が向き合う番だ。

「俺は……戦う。あいつらと。」

全部を壊してやる。お前らの行動、その全てを逆算して。


そして終わったとき、翔真はもう俺を許してくれないかもしれない。

それでも、俺は——

「翔真に、謝るんだ。」


                        続く



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