表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
487222760年間女神様に仕えてきた俺は、そろそろ普通の異世界転生をしてもいいと思う  作者: こすもすさんど
最終章 真の異世界無双

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

72/72

最終話 俺達の休暇は、これからだ!!

最終話です。

 ――むくりと起き上がって見れば。


「知らない天井だ」


 多分病室かどこかだろうと思ったら、


「アヤト様っ!」


 傍らにいたのか、クロナがいきなり声を上げて俺の右手を包み込むように握り、早口で捲し立ててくる。


「お身体は大丈夫ですか?まだお疲れではありませんか?おっぱい揉みますか?」


「おいちょっと待て最後のはなんだ最後のは」


 さり気なく胸を寄せて上げて見せているのはわざとですね?待て 慌てるな これはクロナの(ハニトラ)だ。


 ……じゃなくて。


 クロナの素晴らしくけしからんお胸様を揉みしだいてやりたい気持ちは大いにあるが、今はそれよりも状況の確認と把握が先だ。

 えーっと、ぶっ倒れる直前に何してたっけ?


 ――確か最後にみんなにオールリジェネレイションして、その反動が決め手でぶっ倒れたんだっけか……


「クロナ、ここはどこの病室だ?」


「エコールの町の診療所です」


「どのくらいぶっ倒れてた?」


「ほぼ半日以上、もう夕方頃になります」


 なんてこった、十三時間近くも寝てたのか。


「あーーーーー……すまん、本っ当にすまん。みんなまだまだ忙しくて疲れてるって時に、思いっきり寝過ごしてた」


「何を仰るのですか、アヤト様が今回の事でどれほど身を砕いていたか、皆さんもご存知の上です」


 クロナがそう言ってくれるのはありがたいし嬉しいんだけどなぁ……申し訳無さの方が上回る。


「他のみんなは?」


「レジーナとリザさんは、この町で炊き出し作りを手伝っており、他の皆さんは王国の方で復興作業です。そろそろ帰って来る頃合いかと……」


「よし、なら出迎えに行くとするかぁ……」


 ベッドから起き上がって背伸びしようとしたら、軽く立ち眩みがして足がふらついたのでクロナが支えてくれる。すまんな。




 魂の方はともかく、肉体には過大な負荷が掛かりまくっていたようで、寝起き特有の気怠さもあって、身体は重く、しかし足元はふわふわしているように錯覚する。

 クロナに支えてもらっていると言う自覚が無ければすぐにまたぶっ倒れているだろう。


 エコールの町の片隅――王国からの避難民達が滞在するために、天幕をいくつか張っただけのお粗末な野営地に連れてこられると、そこには数人のおばさま方の中に混じるように、リザとレジーナが調理を手伝っていた。


「あっ……アヤトさんっ!」


「え?っ、アヤト様!」


 二人と目が合うとリザはその場を放り出して、レジーナは近くのおばさま方に「すみません、お任せします」と頭を下げてから駆け寄って来る。


 胸に飛び込んできたリザを受け止めて。


「良かったっ、気が付いたんですね……!」


「心配かけたな、リザ」


 本当にすまんな、なでなでしてあげるから許してクレメンス。なでなで。


「アヤト様、お身体はもう良いのですか?」


 レジーナはさすがに飛び付いてくるようなことは無かっ――いや、微妙にリザを見る視線が鋭いので、リザがいなかったら飛び付いてきたのかもしれないが。


「まだ倦怠感と立ち眩みはするが、飯食って風呂入ってもう一回寝たら治るから大丈夫だ」


「良かった……」


 ホッと胸を撫で下ろすレジーナは、俺に蝉のごとく密着しているリザの手を掴むと。


「さぁリザさん、アヤト様の無事もご確認出来ましたから、炊き出しの準備に戻りましょう」


「いやですっ!まだアヤトさんになでなでされたいですぅっ!」


「私もアヤト様になでなでされたいのですよ?ですが、今はそれよりも優先しなければならないことがあります」


 さり気なく本音が出てるぞレジーナ。


「いーやーでーすーぅっ!」


 なんだなんだ、今日のリザは随分と構ってちゃんだな。

 でもレジーナが困っているので、助け舟を出そう。


「リザ、そんなわがまま言っちゃいけません。なでなでなら後でいくらでもしてやるから、今はレジーナを手伝ってやってくれないか」


「う〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜、………………分かりました」


 渋々、本当に渋々と俺から離れたリザは、しょんぼりしながらレジーナに連れられておばさま方の元へ戻っていく。すまんな。


「アヤトくん?もう身体は大丈夫なのですか?」


 リザとレジーナに入れ替わるようにやって来たのは、エレオノーラだった。


「万全とは程遠いですが、まぁなんとか」


「エリンさんから、アヤトくんが倒れたと聞かされた時はさすがの私も驚きましたよ?アヤトくんが数万体の魔物程度に遅れを取るとは思いませんが、過労で倒れたなどあまりにも久しぶりでしたから」


「いやぁ、さすがの俺も今回は疲れましたからねぇ……」


 体感的には一昨日の深夜から今日の明朝までノンストップで戦闘したり、一度天界に戻ったり、ノベラリオンを操縦したり、復興作業したり、色々アレやコレやしてたし、そもそもここ二週間くらいはまともに眠っていなかったからなぁ、主にアリスさんのせいで。主にアリスさんのせいで。主にアリスさんのせいで。(大事なことなので三回復唱)


「まぁ何にせよ、意識が戻って何よりです。今日くらいは何もせずにぼけーっとしておきなさい」


「いや、俺もこれから炊き出し作りを手伝おうと……」




「アヤトくん。"命令"です、何もせずにぼけーっとしておきなさい」




 不意に、エレオノーラの声に神性が纏われ、俺の精神に直接"命令"される。


「………………承知致しました」


 エレオノーラ――女神様の"命令"には逆らえないと、俺という存在はそのように"作られている"。

 まぁ仕方無い、今夜は命令通り何もせずにぼけーっとしておこう。




 しばらく、クロナとエレオノーラに付き添ってもらいながら黄昏れていると、町の出入り口の方からぞろぞろと多くの人々がやって来る。王国の復興作業から戻ってきたんだな。


「あっ……アヤト!!」


 その中から、俺の姿を見つけたらしいエリンは、その場を駆け出し――一瞬で俺に飛びついてきた。おぅふっ。


「良かった……良かったよぉ……っ!」


 ぎゅぅぎゅぅと俺を抱きしめ――いででででで、肋骨折れるからもうちょっと加減して。


「おかえりエリン。心配かけたな」


 とりあえずなでなでして落ち着かせよう。なでなで。


「もっとなでなでして」


「はいはい」


 なでなでなでなでなでなでなでなでなでなで……


「全く、往来で何をしているのだ君達は……」


 そこへ、同じように復興作業に従事していたのだろう、クインズ、ピオン、ナナミの三人もやって来た。なでなで。


「アヤト、身体はもういいの?」


 気遣わしげにピオンが案じてくれる。なでなで。


「立って歩くのも一苦労だがな」


 まだ身体がちゃんと起きてないからな。なでなで。


「アヤトくんも人騒がせだよ、倒れた時はほんと焦ったのに」


 ナナミは呆れたように「やれやれだぜ」とジェスチャーをして見せているが、その表情は本当に心配していたのがよく分かる。なでなで。


「すまん、さすがの俺もあそこでぶっ倒れるとは思わなかったから」


 抱きついているエリンをなでなでしながら引きずるように、野営地まで戻る。なでなで。






 エレオノーラの命令通り、俺は何もせずにぼけーっとしながら待ち、リザとレジーナ、おばさま方が作ってくださった炊き出しのスープをいただいた後は、念には念を入れてということで診療所に蜻蛉返りして、もう一晩はここで眠ることになっていた (病室ひとつを丸々貸し切りにしているのはエレオノーラとクロナの根回しによるものらしい、ありがとうございます)。




 そうしてもう一晩を過ごして、翌朝。


 ルナックスからの支援物資と人員がエコールの町に届いたのを確認してから、俺達九人はここでお別れだ。


 王国や町の皆さんからは別れを惜しまれたが、人手も揃っている中でこれ以上いてもただの穀潰しでしかないからな。


 別れの前に、マイセン王国の王子が代表して挨拶に来てくれた。


「勇者エリン一行の皆。我が国を支え、民を守ってくれたこと、国を代表して礼を言わせてほしい……本当に、ありがとう」


 深々と頭を下げる王子。


「うぅん、私達は自分に出来ることを、出来るだけやっただけだから」


 こちらも、エリンが代表として応じる。


「あなたも、自分に出来ることを精一杯すれば、きっと国を立て直せるはずだから、頑張って」


「あぁ、頑張るとも。君も、達者でな」


 最後に握手を交わすエリンと王子。

 握手の後、王子はクインズにも向き直り。


「腐っていた僕を叩き直してくれたこと、感謝する。あなたに打たれたおかげで、僕は自分が為すべきを思い出すことが出来た」


「そうか。柄にもなく怒鳴った甲斐があったと言うものだ」


 クインズは満足げに頷いた。

 もう親の七光りに頼るだけの彼ではないだろう。立派な国王になり、それに相応しい后を迎え入れてほしいものだ。


「では皆さん、ひとまずはアトランティカへ帰還します」


 エレオノーラが時空を開き、その中へ一人ずつ入っていく――






 ………………


 …………


 ……






 ――アトランティカの集会所の近くに転移し、受付嬢さんには顔パスで通してもらい、エリックマスターの執務室へ。


「おぉ……よく戻られた、アヤト殿」


 三日ぶりに見たエリックマスターの顔は窶れ、寝不足なのが目に見えて分かる。

 とりあえず一礼してから。


「報告致します。超大型黒龍を追撃、無事に討伐完了しました」


 本当はもっと色々あったけど、エリックマスターにとって必要な部分だけを掻い摘んで話す。


「うむ、よくやってくれた。皆の勇気と力に、アトランティカを代表し、心から敬意を示そう」


 そこに、レジーナが挙手する。


「ギルドマスター、脅威は去りましたので、非常事態宣言の解除を」


「そのつもりだ。このあとすぐにでも、周辺のギルドに伝文を飛ばそう」


 そうか、アリスさんが現れたから、ここら一帯は非常事態宣言を発令していたんだったか。非常事態宣言が出たままじゃ船は出せないから、俺達も帰れないところだった。


 よし、俺も挙手。


「エリックマスター。多忙を承知でお願い致します。俺達の送迎の客船は、早くていつ頃出港可能でしょうか?」


 出来れば早く帰りたいからね。


「今から準備を急がせれば、明日の朝には出港準備が整うはずだ。早速手配しよう」


 明日の朝か、急に言った割には融通利かせられるのな。ありがとうございます。






 エリックマスターの言葉の通り、翌早朝には既に出港準備が整っていたので、ご厚意に甘えさせてもらい、朝一番出港、のんびり惰眠を貪るとしよう。




 そうして出港してからニ日目の夜、俺は一人甲板で寝転がり、夜空を眺めていた。


 ざわめく波の音をバックに一人の夜長と洒落込み……

 

「やっぱりここにいた」


 すると、エリンが甲板に登ってきた。


「おぉ、エリンか」


 よっこらせ、と上体を起こして。


「船内のどこ探してもいないから、もしかしたらって思ったの」


 俺の隣に座りこむエリン。


「こんなところに一人で、どうしたの?」


「ん、夜空を眺めてた」


「そっか。……ねぇアヤト、くっついていい?」


「よしよし、来なさい」


 エリンが擦り寄って来て、俺は彼女の肩を抱き寄せる。


「えへへ……」


 はい、はにかみ笑顔かわいいエリンいただきました。ありがとうございます。ついでに頭もなでなで。


「半年ぶりだったなぁ、孤児院に帰ったの」


「あぁ。あの時は孤児院に挨拶に行ってる場合じゃなかったしなぁ」


 半年前のあの日、エリンを攫うために城壁ぶち抜いて、王子様をポイッとボッツシュートして、王様に顔面ドロップキックかまして。


「院長先生も、みんなも元気にしてたし……アヤトのことも紹介出来たし……うん、良かった」


 ずっと気にしてたもんなぁ。

 

「俺も、院長先生に「カッコよくて素敵な人」認定されて、嬉しいな」


 エリンの本当のご両親には悪いが、院長先生がエリンの育ての親だから、その人から認められたのは一人の男として嬉しく思う。


「……えいっ」


挿絵(By みてみん)


「おっと」


 不意にエリンが身を乗り出すと、俺の左頬にチューをかましてきた。びっくり。


「やるじゃないか、エリン」


「えへへ、この間のお返しー」


 いたずらっぽく笑うエリン。かわいい。

 だが俺もやられっぱなしじゃないぞぅ?

 乗り出してきたエリンの腰に手を回すと、ちょっと強引に引き込んで抱きしめる。


「わわっ……」


 ぎゅっと。

 エリンのいい匂いとか、吐息とか、さらさらの髪とか、絶賛成長期の胸の柔らかさとか、手に触れている肩甲骨の形とか、二の腕越しの腰の括れとか、緩やかな曲線を描く尻の丸みとか、彼女の"かわいい"を漏れ無く全部一人占めだ。


「好きだよ、エリン」


「ふぁっ、……ふ、不意打ちはずるいっ」


 耳を撫でるように囁いたら、エリンが真っ赤になった。かわいい。


「これでおあいこだ」


「むぅー、いっつも最後にはアヤトに転がされてる気がするぅ……」


 ぷくーっと頬を膨らませるエリン。

 転がされてる、ねぇ……悪いがエリンやみんなのためにも、まだまだ一本取らせてやるつもりは無いのだよ。そう言う意味での"転がされてる"ではないだろうが。


 俺がエリンを抱きしめて、エリンは俺に擦り寄って。


「私も、アヤトが好き。世界で……うぅん、異世界で……でもなくて、どこにいても……他の誰よりも、一番大好き」


 うっ、今のは効いた……心がときめいた。


「エリン」


「ん?なぁに、わぷっ……?」


 あまりにもエリンが愛おし過ぎて思わずキスしてしまった。


「ふあ、ぁむっ、ちゅぴゅっ……んゅっ、ゃっ、はぁっ、ちゅっ、んむぅっ……んぁっ……」


 このまま押し倒してコトに及びたい気持ちはあったが、さすがに今ここでは出来ないな。


「はぁっ……はぁっ……アヤトって、ほんとにえっちなんだから……」


「ありがとう、男としては最高の褒め言葉だ」


「褒めたわけじゃないんだけど……」


 キスしたあとは、もう一度抱きしめて。


「ふ……あぁ……」


 ふと、エリンが欠伸をする。そろそろ眠そうか。


「船室に戻るか?」


「うぅん……今日はここでアヤトを抱き枕にするぅ……」


「そうか」


 エリンの身体が暖かいから寒くないしな。


「おやすみ、エリン」


「ん……おやすみ、アヤト……」


 リクエスト通り、エリンに抱き枕にされて、おやすみなさい。スヤー!






 翌朝にハルカスの町に到着したら、その足でフローリアンの町へ直行だ。


 歩くこと半日、久しぶりのフローリアンの町に帰ってきた。


 自宅に帰る前に集会所に寄って、オルコットマスターに帰還の報告と、アトランティカの非常事態宣言の発令から解除までの経緯を掻い摘んで話して、ようやく解放されて帰宅。




 ――あぁ、二週間ぶりの我が家だ。




 思い返せば……エレオノーラ――女神様に休暇をお願いして、半年ぐらい経ったのか。一年くらいは過ぎたと思ったんだが。

 その半年間も、何とも濃密だったな……


 エリン。


 リザ。


 クロナとレジーナ。


 クインズ。


 ピオン。


 ナナミ。


 エレオノーラ。


 最初こそ、エリンと一緒に過ごせるならなんでもいいかと思っていたが、女神様にレッツハーレム!を強いられてから、いつの間にか六人も婚約者が増えて、エレオノーラももうほとんど家族同然だ。


 まぁ、ハーレムには慣れてるからいいんだけどな。


「アヤト?どうしたの?」


 家の前で立ち尽くしていると、エリンに声をかけられた。


「いや、何でもないよ」


 自然とエリンの頭をなでなでしていた。


「えへへ」


 くすぐったそうに肩を竦めるエリン。


「むーっ、エリンさんばっかりなでなでされてずるいですぅっ!わたしにもなでなでしてほしいですぅっ!」


 リザがぷーっと頬を膨らませて、エリンの反対側から頭を差し出してきた。

 はいはい、なでなでなでなで。


「あらあら。アヤト様、次は私にお願いしますね?」


「姉上をなでなでするなら、当然私もなでなでしなければなりません。これは我が家の掟であり、不文律です」


 次いでクロナがニコニコと、レジーナは至極真面目に恥ずかしそうな顔で、なでなでをおねだりしてきた。


「ふむ、序列から見れば、クロナとレジーナの次は私だな」


 クインズまで。


「べ、別にあたしはなでなでしなくてもいいけどっ、順番はきちんと守らなきゃねっ!」


 ピオンはそっぽを向きながら口を尖らせているが、その本音は実に分かりやすい。


「そう考えると私って何かと後回しになりそうだよねぇ。今回はいいけど、たまには私を最優先してね」


 ナナミもすっかりこの面々の中に馴染んだよなぁ。


「アヤトくんのなでなでは計測出来ないヒーリング効果が期待出来ますから、ぜひとも今後の参考に私も……」


「ところで、エレオノーラは天界に帰らなくていいんですか?」


「お い こ ら !」


「はっはっはっ、冗談ですよエレオノーラ。後でちゃんとなでなでしてあげますから」


 さて、そろそろ家に上がるとしようか。






 ――俺達の休暇は、これからだ!!






 FIN. 






 ――――――――――






『ったくどいつもこいつも!チートをよこせだのハーレムをさせろだの悪役令嬢にしろだの溺愛させろだの!その気があるんやったらちゃんと完結させろや!!』


 ……天界へ還ってきて最初に聞いたのは、大変お怒りの女神様の罵声だった。


「おーい女神様ー、ただいまー」


 プンスカ極まる女神様に、"俺"はいつものように帰還の挨拶をする。


『あぁん?なんだテメー、テメーもトラックに吹っ飛ばされて死んだか?ったく、世の中コンスタントに人が死に過ぎだっつーの……ハイハイ、ご希望の転生先と特典を教えてどーぞ?』


 相変わらずやさぐれきってんなぁ、女神様。

 まぁた異世界転生チートハーレム無双悪役令嬢追放溺愛ざまぁもう遅い飯テロスローライフをご希望になられた転生者でも出てきたか?


「女神様、俺ですよ、俺。八十年間くらい休暇していた、アヤトですよ」


『はぁ?……あぁ、おかえりなさいアヤトく……いえ、今はもうその名ではありませんでしたね』


「えぇ。俺はもうアヤトじゃなくて、ただの"俺"です」


 俺達の休暇はあれからどうなったのかと言うと。


 最年少のリザの十八歳の誕生日に合わせて結婚式を挙げ、みんなにウェディングドレスを着せて、お揃いのエンゲージリングをみんなの薬指に通してあげた。


 それからは……怒涛の出産・育児ラッシュだ。


 七人の妻を持つ大黒柱たる俺は十数人の子どものパパとなり、毎日がわちゃわちゃして楽しく――そして死ぬほど忙しい日々を過ごしたものだ。


 幾星霜の年が流れ、我が子らも立派に育ち、これまたたくさんの孫達にわちゃわちゃされながら――愛する妻達は一人、また一人と世を去り、そして俺もまた天寿を全うし……


 休暇を終えて、女神様の元へ帰還したのだ。


『休暇は、いかがでしたか?』


「えぇ、もう十分楽しめました。と言うわけで、また女神様に仕えに戻って来ました」


 楽しかった休暇はもうおしまい。

 そうだなぁ……これからも、四億年に一度くらいは休暇を申請してもいいかもしれない。


『では……還ってきて早速ですが、あなたに攻略してほしい"世界"があります』


「いつでもどこでもどうぞ」


 休暇を終えて、英気は十分養われたんだ。どんなディストピアだってクリアしてやんよ。






『今回は、『487222760年間女神様に仕えてきた俺は、そろそろ普通の異世界転生をしてもいいと思う』の世界に異世界転生してもらいます』






 ……………………………は?


「なんですか、その、既視感しか無いような頭の悪いなろう系タイトルは?」


『異世界転生の女神様に仕える名も無きオリ主が、"休暇"と称して自由気ままな異世界転生をするのですが、一筋縄ではいかない……と言う、なろうに憧れる青少年の魂が形になったかのようなハーレム無双ストーリーです』


 いやいやいやいや、異世界転生の女神様に仕える名も無きオリ主って……どう考えても"俺"のことじゃねぇか!?


「は、はぁ……まぁいいでしょう。とりあえず、完結して転生特典ポイントを回収してくればいいですか?」


『はい。ではよろしくお願いします、"アヤトくん"』


 やっぱりその名前か!!


「…………んじゃ、行ってきますね。"エレオノーラ"」


『あら、懐かしい名前ですね。そうそう、向こうにいる"エレオノーラ"にもよろしくお願いしますね』


 あー、向こうにもエレオノーラ出てくるんだ……


 まさか『自分の実体験をそのままやり直す』ことになるとはなぁ……


 マァいいやサァいくか。


『では……あなたに神のご加護がありますように』


「はいはい、行ってきまーす」






 ………………


 …………


 ……






「ねぇ、生きてる?……ねぇってば、生きてる?」

完結!!

評価・いいね!を押し忘れの方はお忘れなく。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
うっわー、ラスト一文! 72話読んできてたどりついた、この一言に鳥肌たちました。こういうの大好きです! 冒頭を見に行き、逆さエリンのイラストにじーんとしました。 アヤトの口調のせいもあり、全体的にコ…
[良い点] 完結おめでとうございます✨ そして、休暇をおかわり………だと!? つまり、この機会に4億年以上の仕事分の有給消化しとけっていう事ですな?
[一言] いやはやまさか……いやでも本作らしいかもしれないまさかなラストでしたね(ΦωΦ)フフフ… とにかく完結までお疲れさまでした!!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ