60話 立ちはだかるは八岐の大蛇
百魔夜行……基、洗脳されていたであろう魔物の大群を残らず殲滅した後。
長距離ジャンプを数回繰り返してロスタルギアに到着し、里長宅の窓からそっと入り直す。
「おかえりなさい、アヤトくん」
この部屋で待っていたらしい、エレオノーラが律儀かつ、どこから用意したのか紅茶を片手にエレガントに出迎えてくれた。
「ただいま戻りました。とりあえず接近していた魔物の群れは全部焼き払っておきました。あ、俺にも紅茶ください」
「お疲れ様でした。……やはり、魔王ヴィラムの差し金でしょうか」
そう言いながらも、エレオノーラは紅茶を用意してくれない。けち。
「あれだけの数の魔物が、尋常現象で一箇所目掛けてやって来るとは思えません。生態系を大きく狂わせるほどの強大な存在も確認出来なかったので、アルカンシエル山脈の時と同じく、魔物を洗脳していたと見るべきでしょう」
軍戦力として統制されたものでも無い限り、種や縄張りに関係なく多数の魔物が一箇所目掛けて押し寄せてくると言うケースは、強大な存在に脅えて逃げ出して来たものがほとんどだ。
それが当てはまるような気配は感じられなかったので、やはりこれもヴィラムの洗脳によるものだろう。
「一存在がそこまでの力を持っているとなると、魔王ヴィラムの力は、チート転生者のそれに並ぶものか、それ以上かもしれませんね」
エレオノーラの目が細まる。
ヴィラムが冥王ノーヴェンネアに捧げる生気は、闇ギルドの連中のように"反社組織"に属していたり、それに類する犯罪者達に限っていた。
ヴィラムは人類に敵対するつもりは無いと言っていたし、人の世に悪意がある限り、争いや犯罪が絶えることは"絶対に無い"から、そう言った『殺しても構わない命』などいくらでもあるだろう。
けれど、短期間でアウトローな組織を人員すら残さず潰して回っていれば、いずれはそう言ったことは裏表に関わらず"噂"になる。
何者かが犯罪者達を"狩っている"と。
そうなれば、犯罪者達も迂闊には動けなくなってしまい、『ゼロになることは無いが、数は確実に減る』。
犯罪者狩りだけでは生気を賄えなくなれば、いずれは……と言うのは想像に容易いことだ、それが必ず起こり得ることは、有史以来既に人が人の手で証明している。
「まぁ、固く構えても仕方無いでしょう。真っ向勝負なら真っ向勝負で、インチキ勝負なら遠慮なく滅してやればいいだけです」
「怖いことを言いますね」
エレオノーラは苦笑する。
実際、俺は正々堂々とした勝負は好きだし、そう言う相手には敬意を以て向き合うべきだと思っている。
あの船の墓場にいた、スカルリザードみたいにな。あの雄の魂は、来世の新たな生命に受け継がれただろうか。願わくば、堂々たる武人として生まれ変わり、いつかまた刃を交えたいものだ。
「んじゃ、俺はもう一回寝ますんで、お休みなさい」
「はい、お休みなさい」
エレオノーラが部屋から出るのを見送って、身体の汗を拭き取ってからもう一回ベッドイン、おやすみスヤー!
グッドモーニングおはようござ、
「ふあぁぁぁぁぁ……ねむ」
おっと、思わず欠伸しちまったぜ。
全く、昨夜はヴィラムが余計なことをしてくれやがったせいでちょっと寝不足気味だ。
あんにゃろう、今日顔見たらフルボッコにしたる。
「アヤト、何だか眠そうね。寝不足?」
里長宅で朝食をいただいている最中に欠伸してしまったせいか、ピオンに身を案じられてしまった。すまんな。
「ちょっと寝付きが悪くてな」
ほんとは真夜中に出掛けてた(意味深)んだけどな。
「まぁ、アヤトくんなら寝不足くらいでどうこうするような鍛え方はしてませんし、問題ありませんね」
エレオノーラの言う通り、何なら一週間フル徹で働いても戦闘に支障をきたさない自信はあるが……エレオノーラ、あんたはぶっちゃけ過ぎだ、俺だって寝なきゃ死ぬんだぞ?その前にぶっ倒れて昏睡状態になるのが先だろうけど。
「そうですね、魔王冥王もろともサクッと滅殺して、さっさと帰ってゆっくり寝ます」
「寝不足のアヤトさんは、より危険な存在になると言うことですね」
うんうん、とリザは頷いている。ひっでぇ認識だ。
「でしたらアヤト様、此度の任務を達成しましたら、私の膝枕でお昼寝はいかがでしょう?ついでに、子守唄のおまけ付きです」
クロナがニコニコしながら名案を挙げてくれる。
クロナの太腿で膝枕+子守唄か……それは大変魅力的だ。
「ついでに耳かきして、それが終わったらちょっと屈んで、胸と膝の極楽サンドとかされたら死ぬなぁ(いいなぁ、よく眠れそうだ)……」
「アヤト様……本音と建前が逆になっていませんか」
瞬間、クロナの隣に座るレジーナの、ハイライトの消えた瞳から発される殺意のナイフが首筋に突き付けられる。こわい。
「あら、アヤト様がお望みならお膝のみならず、私の身体のどこを枕にしても良いのですよ?例えば、」
「クロナさんっ、それ以上はダメッ。いくら婚約者同士でカラダの関係を築いていても、そう言うえっちな相談は二人きりの時にどうぞ!」
慌ててナナミがクロナを止める。ナイスだ、下手すりゃR−18になりかねないからな。
「アヤト」
今度はエリンに呼ばれたので、そちらに振り向くと、
「頑張ろうね」
清々しいにっこり百点満点の笑顔。
守りたい、この笑顔。
「あぁ、頑張ろう」
そのために今世を生きてると言ってもいいね。
世話になったカークス里長に礼を言って、もしかするともう一晩厄介になるかもしれないと付け足したら、「狭い家で良ければ喜んで」と頷いてくれた。すまんな、ありがとう。
いざ、魔王と冥王の待つ"大穴"へ征かん。
昨夜の夜襲で洗脳出来る魔物を使い果たしてしまったのか、ロスタルギアから"大穴"へ向かう道中で魔物とエンカウントすることなく、到着。
「ここが例の"大穴"か」
デカいな。
西暦世界のベースボールドームくらいはありそうな広さの穴が、深淵を広げて待っている。下に降りればもっと広いだろうけど。
「深過ぎて底が見えんな」
クインズが俺の隣から穴を覗き込む。
だが、この穴の奥から、より強くなったと思われるヴィラムの魔気と、それとは別の禍々しい邪気を感じる。恐らくこの邪気が、冥王ノーヴェンネアのものだろう。
「オルコットギルドマスターの情報通りなら、確か、昔に土竜族が使っていた螺旋階段が残っているはずです」
リザが辺りを見回し、「あれですね」と指差した方向には、確かに穴の壁を沿う形で螺旋階段が、下へ降りるように続いている。
「土竜人族が地上に行き来するために作ったのね。……相当古くなってるでしょうし、降りている途中で崩れたりしないかしら」
階段が朽ちていて踏み壊れないかとピオンが懸念しているので、この螺旋階段の情報をディスクローズで調べてみる。
「……作られて千年以上は経っているが、300年前くらいまでは何度も補修工事が行われていたようだな。少なくとも、人間数人が乗ったくらいでは壊れはしないだろう」
でも、もしかしたら壊れて崩れる可能性もあるので……まぁ、その時は俺がなんとかすればいいや。
それでは早速階段に足を踏み入れて、下へ下へと降りていく。
………………
…………
……
階段をある程度降りてきた"大穴"の中は、遺跡のようになっており、かつて土竜人族が住んでいたらしい文化の面影が残っている。
が、魔物らしい魔物の姿は見えない。
「やけに静かだね」
結構な高度を降りてきたところで、ナナミがそう呟いた。
ここまで来て、魔物の一体ともエンカウントしていないのだ。
とは言え、待ち構えられてもそれはそれで面倒で困るんだが。
「何も無ければそれで良しとしましょう。何も無いとは思えませんが」
ナナミの呟きにレジーナが応じる。
俺としても、妨害の魔物がいてもおかしくないと思っているんだが、やはり現れない。
まさか、本当に昨夜の夜襲で万策尽きたのか?
ヴィラムがそこまで浅はかとは思えないが、何せ相手は神々に喧嘩売ろうって寝言言ってるような奴だ、何をしてくるか読めん。
もう少し進んでみると、ちょうど俺達の道を塞ぐような位置に、巨大で禍々しい石像――邪神像が聳え立っていた。
「これは……何かしらのキラートラップでしょうか」
クロナは鉄扇に手を添えつつ、注意深く邪神像を見つめる。
迂闊に近付いたら突然動き出して踏み潰してくるとかありそうだな。
「あたしが小突いてみるわ。魔物なら矢が当たれば、何かしらのリアクションはするでしょ」
ピオンが折り畳んでいた弓を抜き、矢をつがえ――一矢。
ぱひゅんっと小気味良い風切り音と共に矢は放たれ――邪神像の頭に突き刺さる。
が、何も起こらない。
「……本当にただの石像なのか?」
邪神像に何の反応も無いことに、クインズは訝しがる。
いや、こいつは多分……
「アヤトくん、私が爆弾で爆破しよっか?」
ナナミは魔筆を抜いて、爆発物を描こうと毛先に魔力を纏わせているが、それは制止させる。
「いや、ここは俺が破壊しよう。無駄に魔力を消費することもない。石の破片が飛んでくるかもしれないから、気を付けてくれ」
軽く右肩を回して、グッパと手首を鳴らしながら邪神像に近付くと、
「ノックしてもしもーし」
必殺、アヤトパーンチ。
瞬間、ズドガァンッ!!と轟音を上げて、石像が粉々に砕け散った。
石の破片に巻き込まれないように飛び下がって、
ズズズズズ……と地鳴りのような音を上げながら、『石像の中にいたものが動き出した』
「やっぱり中に何かいたか」
粉々に砕いて立ち昇った砂煙の向こう側から現れた巨躯。
苔生した暗緑色の体表に、八つの龍頭。首は蛇のように長く、腹部だけが血のように真っ赤に染まっている。
「――『ヤマタノオロチ』だと?」
西暦世界の、日本の神話における怪物のそれによく似ている。
八つ首……まるで俺を除いて、この場の女の子達を一人ずつ喰うような構図だな。
そう言えば神話のヤマタノオロチも、八人の娘達を年に一人喰らっていたとかなんとか。そんなことさせねぇけどさ。
グガジャァァァァァァァァッ!!!!!!!!と、八首の龍頭がそれぞれ咆哮を上げ、ビリビリと大気を震わせる。うっせ。
「またなんか変なのが出てきたね」
この禍々しくおどろおどろしい邪龍を前にしても、エリンはいつも通りだ。ちょっと鍛え過ぎたかもしれん。
「なんだっけ……確かヤマタノオロチって、お酒で酔わせて、眠らせてから倒すんだっけ?」
前世の知識なのか、ナナミが魔筆を抜きながらそう言ったが……今の俺達にそんなもの持っていない。
「相手はこっちを喰う気満々だぞ。そんな状態で酔わせたら眠るどころか、思考力が鈍って何をしてくるか分からなくなるから、むしろ逆効果だな」
バカはバカでも、賢いバカと頭の悪いバカの二種類とその派生形が何千万種類といるが、中でも『酔っ払ったバカ』は最悪の派生、その究極完全体だ、次に何をしてくるか全く予想できん、頭が良い天才よりよっぽど厄介で危険で質が悪い。
などと余計なことを考えている内にも、ヤマタノオロチはどすんどすんと脚を踏み鳴らしながら近づいて来る。
さて、こいつは何属性が有効かね。
「――『タケミカズチ』!」
初手は、リザの雷属性の上級魔法だ。
ヤマタノオロチの頭上に魔陣が結ばれると――ゴズドォンッ!!と自然災害の雷そのもののような一撃が"落っこちた"。
普通の魔物ならこれで消し炭だが、さすがにここの番人だけある、八頭の龍頭がやかましく悲鳴を上げているとは言え、苦しむほどのダメージにはなっていないようだ。
「――サークルディフェンサー!」
続けてクロナの広域補助魔法、この場の全員の皮膚が硬質化――防御力が上がる。
「エリンは右、クインズは左からだ!行くぞ!」
「うんっ!」
「承知!」
俺がソハヤノツルギを抜くと同時に真っ先にエリンが右から回り込みながら突撃、一歩遅れてクインズも左側から回り込む。
龍頭のひとつがエリンを喰らおうと牙を剥いて襲い掛かるが、
「でえぇぃッ!」
その一歩手前でエリンは強く踏み込み、それを軸足にしてくるんと回転斬りを一閃。
鼻先をエクスカリバーに斬り裂かれた龍頭は怯み、怯んだところを顎下から上へと盾を使った裏拳で殴り上げて――エリン、最近盾が何のためにあるのか忘れてないか?――跳躍、空中でぐるんと一回転しつつ、落下の勢いと共にエクスカリバーを振り下ろし、龍頭の首筋を斬り付けるが、ぐねぐねと動くせいでクリティカルヒットは避けられてしまったようだ。
即座、別の龍頭がエリンの側面から回り込んでくるが、
「トゲトゲ鉄球!」
そこへナナミが魔筆で描いて実体化した、モーニングスターのようなでっかいスパイクが生えた鉄球が放たれ、エリンに咬み付こうとした龍頭に激突、龍頭は鉄球の重量に耐えられずに地面に叩き込まれ、弱々しくもがいている。
エリンも別の龍頭が回り込んで来ていることは既に気付いていたようだが、回避するよりも先にナナミの鉄球がブロックしてしまったので、「うわ、痛そう」と呟いている。余裕そうだな。
よし、俺も続くとしよう。
無影脚で距離を詰めると、正面の龍頭が牙を剥いて迫るが、そこへソハヤノツルギを投げナイフのようにヒュパッと投げ付ける。
当然それは龍頭の口の中、舌に深々と突き刺さり、悲鳴を上げて激しく血を吐き出しながら仰け反る。
こいつがどれだけ丈夫な鱗や骨で守られていようと、口の中の器官は無防備だからな、それをどうぞ狙ってくださいと言わんばかりにお口をあーんしてきたので、ソハヤノツルギをあーん (物理)してやったわけだ。
どうせなら俺もエリンの一生懸命大きく開けているちっちゃいお口にアップルパイをあーん (はぁと)してあげたかったな。今度してあげよう。
仰け反る龍頭に向かって縮地、舌に突き刺さったソハヤノツルギを掴み、舌をわざと傷付けるように回しながら雑に抜いてやり、
「吹っ飛べ」
親指、人差し指、中指に練気を纏わせ、傷付けたそこへ貫手、練気を流し込む。
瞬間、流し込まれた練気がパァンッ!!と炸裂し、龍頭の咽頭をズタズタに破壊、恐らくは脳にまでダメージが届いたのだろう、龍頭は血を吐き出しながら力無く項垂れた。
八つある龍頭のひとつを撃破っと。
クインズはどうかと一瞥すれば、彼女は二頭同時に相手取っている。
左右から不規則に襲い来る双龍頭に苦戦しているのかと思えば、
「ふっ、はっ、せぃッ!」
そんなことはなく、むしろクインズの方が龍頭二体を押し込んでいるくらいだった。
薙ぎ払って龍頭を斬り付け、薙ぎ払ったついでにその場でトゥーハンドソードを地面に突き立ててぐるんと跳躍してもう一頭の攻撃を躱し、ついでに龍頭の頬を蹴り飛ばす。
再び牙を剥いて迫る龍頭は斬り上げ、斬り上げたトゥーハンドソードの重量を支点にしてバック宙、イニシアティブを取り直し、トゥーハンドソードを腰溜めに構える。
力を溜めているのか?
クインズに一方的に攻められ、反撃も躱され、二頭の龍頭は怒りのままに迫りくる。
が、
「はいそこぉ――『氷樹』!」
そこへ、虎視眈々と機を窺っていたピオンが引き絞っていた弓を放ち、氷属性を纏わせた一矢が、クインズに襲い掛かろうとしていた龍頭の一頭の頬を射抜き、凍結させる。
急所へのダメージと凍結に怯む龍頭だが、残るもう一頭がクインズを丸呑みにせんと大口を開けて――
「ぃりゃあぁぁぁぁぁッ!!」
瞬間、溜めに溜めていた力を爆発させ、クインズは全身ごとぶつけるようにトゥーハンドソードを振り降ろす。
彼女渾身の一撃は、龍頭の鼻先を捉え――首元までを縦に真っ二つに断ち斬ってみせた。
二頭目、撃破だ。
八頭ある内の二頭を潰され、残る六頭(その内の一頭はナナミの鉄球に押し潰されて動けない)は目を血走らせて怒りを顕にする。
まともに動ける五頭は、全員同時に大きく息を吸い込み――その口元から朱や紫の煙が見え隠れしている。
……まさか、炎と毒の混合ブレスか?
「気を付けろっ、炎と毒、両方のブレスだ!」
すぐに注意喚起し、特に近付いているエリンとクインズは接近を止めて龍頭から離れようとする。
瞬間、五頭の内三頭からは激しい炎が、もう二頭が毒々しい紫色の瘴気を吐き出してきた。
「ッ――フリーズハンマー!」
すぐにリザはフリーズハンマーを唱え、火炎ブレスにぶつけて相殺を試みるが、実質三頭分の火炎ブレスだ、フリーズハンマー単体の面積ではとても防ぎきれない。
「レジーナ、アレを!」
「はいっ、姉上!」
すると、「アレ」で意思疎通したクロナとレジーナが阿吽の呼吸で飛び出し、俺達の前に立つと、
「「――『海護法陣』!!」」
二人同時に蒼光のバリアを展開した。
二人の――海巫女の力を合わせた広範囲の防御術のようだ。
海護法陣と、炎毒のブレスが激突する。
――しかし五頭分のブレスの威力は凄まじいらしく、少しずつ海護法陣が破れつつある。
「姉上っ、これ以上は……っ!」
「まだ、です……っ!」
二人は歯を食い縛って必死に耐えているが……このままじゃまずい。
仕方無い、ここは俺が
「――よしっ、出来た!」
と、思ったらナナミからそんな声が聞こえたので一瞥すると、そこに鎮座しているのは、柱の生えたバカでっかいプロペラ――
「せ、扇風機!?」
まさかの扇風機である。さすがの俺もビックリだ。
「これで逆風を起こして、ブレスを跳ね返すよ!」
ナナミがそう言うなり、プロペラが高速回転を始め――やがて強風となって吹き付ける。
クロナとレジーナが止めていたそこへ強風が吹き込まれれば、ヤマタノオロチの放つブレスを押し返し――やがてそれを吐き出している本体へと叩き付け返される。
まさか自分(達)が吐き出しているブレスが跳ね返されるとは思わなかっただろう、ヤマタノオロチは自分自身の激しい炎と猛毒の息吹に曝され、慌てるように後ずさる。
「あっ、消えちゃった……長時間の実体化はまだ無理かぁ」
ブレスの消失とほぼ同時に、ナナミが実体化させた扇風機が消失する。あの大きさの扇風機だと、実体化するまでの時間もかかっただろう、咄嗟には使えないか。
どうにか防ぎ切ったクロナとレジーナは、肩で呼吸しながらその場で立ち尽くしている。
「クロナ、レジーナ、下がれ!あとは俺達に任せろ!」
さぁー、反撃開始だ。覚悟しろぃ。




