58話 キマイラ強襲
冥王ノーヴェンネアの再封印のため、遥か北西のロスタルギアへ向かう俺達。
まずは、スプリングスの里へ温泉旅行に行った際にも立ち寄った、アトラスの町で一泊を過ごして。
そこから進路を北西へ切り替え、西へ北へとジグザグと進む。
いくつかの町で夜を過ごして、旅の始まりから五日目には。
「……ここが、『アルカンシエル山脈』か」
地勢図と照らし合わせても、このデカデカと描かれた山道なら間違いない。
オルコットマスターから事前に、ロスタルギアへ向かうにはアルカンシエル山脈を越える以外に陸路は無いと聞かされている。
海路で迂回するにはあまりにも遠回りになる上に、北西部の海域は危険極まりない水棲の魔物が犇めき、通るには魔物の攻撃程度では沈まないような大型軍艦辺りが必要とのこと。
有翼の魔物も多く、さすがの俺も一人で空路を突破しようと思っても、余計な手間と時間が掛かりそうだ。
なので、ここは正攻法で山道を進むしか無い。
「山頂部が雲に隠れているわね……ヴァレリオ霊峰と同じか、それ以上の山道になりそう」
この中で最も山道に対する造詣の深いピオンが、目を凝らして山頂部を睨む。
ここからは狭い道の中で馬車を守りながらの戦闘が続くだろう。
「よし、俺とピオンで先導する。馬車の左右はレジーナとクインズでそれぞれ守ってくれ」
馬車の守りの振り分けを指示する。
「かしこまりました」
「うむ、承知した」
レジーナが左側、クインズが右側に、それぞれ守りにつく。
馬車の後方の守りはリザ、遊撃はナナミに任せ、エリンはもしも背後からの敵を追い払えない時のセーフティーだ。
クロナは馬車馬の手綱を握ってもらっているが、戦闘中は回復・補助役に専念してもらう。
「この山脈を越えれば、ロスタルギアは目と鼻の先です。皆さん、気を抜かず慎重に進んでください」
エレオノーラの役割?……えーっと、馬車番?
「アヤトくん?今何か余計なことを考えましたね?」
「エレオノーラの役割ってなんだろう?って思っていたんですが、総大将ですね。何があっても堂々と偉そうに踏ん反り返っているのが、総大将の仕事ですし」
嘘は言ってないよ、ほんとだよ、うそじゃないよ、おれうそつかないよ(大嘘)
危険な山脈というだけあり、冒険者による踏破や間引きもあまり行われていないのだろう、馬車の車輪が悪路にガタガタと揺れ、そうして歩みが鈍ったところに見計らったように、オークの上位種である『ギガントオーク』や三ツ首犬の『ケルベロス』、赤毛の熊型の魔物の『レッドベアー』が現れたり、空から中型飛竜の『ミドルワイバーン』や猛禽類の魔物の『スカイコンドル』が飛来してくる。
こいつらも、幾人もの冒険者達を"狩ってきた"強者だろう、なかなか戦い慣れた奴らだが、戦い慣れしているのはこちらも同じだ。
地上の魔物は俺とクインズが薙ぎ倒し、その俺とクインズを突破してもレジーナに捕らえられて首を落とされ、空から襲撃を仕掛けようにもピオンが真っ先に気付いて弓矢で撃ち落とし、群れが来たとしてもナナミがそのフォローに回り、馬車の後ろから近付こうにもリザの攻撃魔法が即座にブロックし、抜け出たとしてもセーフティーのエリンが抜け出た敵を確実に処理する。
クロナは前方、対空、後方の三局で応戦する俺達へ的確に回復と補助を重ねてくれる。
みんなも強くなってきたなぁ。
ギガントオークの振り下ろす石斧をすり抜け、すれ違いざまにソハヤノツルギで一閃、首を落としていく。
この遭遇戦も片付き、魔石や状態の良い素材を剥ぎ取っていると、
「アヤト、何か不自然だと思わないか?」
前方を警戒していたクインズが、そう声をかけてきた。
「奇遇だなクインズ、俺もそう思っていたところだ」
そう。
魔物の数が多いのは別段珍しいことではない。むしろ冒険者による踏破や間引きが進んでいない地では、普通のことだ。
では何が不自然なのかと言えば。
「そうね……何かこう、『目の焦点が合ってない』ように感じるわね」
ピオンも同じように不自然さを感じていたらしい。
目の焦点が合ってない、か。
「ふむ」
少し気になるな。
探知の範囲を広げてみると……ちょうど、俺達が通る山道でも高所の位置に、大きな気配がひとつ。この山脈の"ボス"だろうか。
だが……ボスだとしても、他の魔物達が自分たちのテリトリーを放ってまでこいつに従うほど強い相手にも感じられない。
「この先に大型の魔物の気配はするが、そこまで危険な相手でも無いはずだ。何かあるのか……?」
分からん。
だがここで足を止めるわけにもいかないので、馬車を進ませる。
戦闘が何度も続いているので、交代で休憩や仮眠を取りつつ、山脈を渡っていく。
日の位置を見れば、少しずつ下がり始めていた。大体お昼過ぎ頃だな、日が暮れる前にこの山脈を越えたい。
そろそろ、例のボスの気配が近くなって来た。
気配の位置は大きく動いていないようだが……しかしこのままでは確実にかち当たるな、戦闘は避けられないか。
「ボスの気配が近い、気を抜くなよ」
みんなに注意喚起をしてから、少しずつその気配へ近付いていくに連れて、他の魔物の鳴き声や断末魔、咆哮が聞こえてくる。
ちょうど、馬車の通り道を塞ぐような形で、そいつがいた。
レッドベアーと縄張り争い……と言うか、一方的な蹂躙をしているらしいその姿は、獅子の頭に山羊の胴体、尻尾の先は蛇の頭になっており、背中には竜の翼……『キマイラ』だな。
歯向かおうとするレッドベアーを前脚で地面に叩き付け、もがくところを尻尾の蛇が喰らいつき――恐らくは致死毒を打ち込んだのだろう――、弱ったところに獅子の牙が首筋を食いちぎる。
瞬く間に息の根の止まったレッドベアーを貪り喰らったところで、俺達の存在に気付き、威嚇も兼ねた咆哮を上げる。
ライオンと山羊と蛇の鳴き声が混ざった不協和音に、ナナミが「うわ、すごい合成音声」とぼやいた。言いたいことは分かるけどな。
さて、今回は防衛対象として馬車、及びエレオノーラもいる。
馬車馬達はキマイラの存在を前に狼狽えているし、奴が攻撃してこない内に、馬車を先に進ませるべきだな。
となると、キマイラの撃破と、馬車の護衛の二組に分けなければ。
0.5秒で思案して――
「エリン!クロナ!ナナミ!俺とこいつを討伐するぞ!他の四人は先に進め!」
リザ、レジーナ、クインズ、ピオンの四人が馬車を先へ進めてもらうのだ。
「分かった!」とエリン。
「はい!」とクロナ。
「オッケー!」とナナミ。
三人が馬車から飛び出して各々の武器を構えている間に、
「ピオン!山地先導は任せる!お前が頼りだ!」
山に慣れているピオンなら、人数が減ってもしっかり守ってくれると信じている。
「えぇ、任されたわ!」
力強く頷くピオンはクロナに代わって馬車の手綱を取る。
「行くぞ!」
ソハヤノツルギを抜き放って、無影脚――キマイラの注意を馬車から遠ざけるように左手側から接近し、一閃二閃。
山羊の毛皮を斬り裂かれたキマイラは呻き声を上げながら仰け反り、俺に怒りを向けてくるが、
「はあぁっ!」
俺と一歩遅れたタイミングでエリンも閃光のごとくキマイラに迫り、その勢いでエクスカリバーをキマイラの右側の横腹に突き入れ、えぐり抜いた。
キマイラの敵意と注意が俺とエリンに向けられたタイミングを見計らって、クロナがピオンに発進の合図を送る。
「よしっ」
ピオンは馬車馬に手綱を打ち、走らせる。
これで後背の憂いは無くなった。
あとはこいつをサクッと始末するだけだ。
「――オフェンスドシャープ!」
クロナから筋力強化の広域援護魔法が放たれ、赤い光がこの場の全員を包む。
ナナミも素早く魔筆を振るい、
「スターショット!」
五芒星型の星型弾をいくつも描くと、勢いよく投射する、
キマイラは竜翼を羽ばたかせて星型弾を回避しようとするが、五芒星は途中で曲がり、回避するキマイラを追尾し――これは予想していなかったのか、キマイラは驚いて挙動を止めてしまい、星型弾が接触、炸裂する。ホーミングミサイルだな。
飛行中にダメージを受けて、やむを得ず不時着するキマイラに、エリンが一瞬で距離を詰める。
前脚の爪でエリンを斬り裂こうと襲い掛かるが、エリンは即座にその場から飛び退いて前脚の一撃を回避――飛び退いて着地すると同時に跳躍、空中でぐるんと一回転して、
「でぇやぁぁぁッ!」
回転と落下、二重の加速を受けた、ジャンプ縦回転斬り。
回避と反撃がほぼ一連の動作として結びついた攻撃は、キマイラの右の翼爪に叩き込まれ、打ち砕く。
怯んだそこへ、
「行けスライムちゃん!体当たりだ!」
さらにナナミの魔筆が輝くと、水色のプニプニしてそうなヤツ――スライムが飛び出した。
本物では無いとは言え魔物の召喚も出来るのか。
プキュー、と可愛らしい鳴き声を上げながら、スライムちゃんはキマイラに向かって勢いよく体当たりをぶちかまし――
瞬間、キマイラは何事も無かったかのように"お手"を振り下ろし、スライムちゃんはぷちっと潰されて消失した。
「あ、あれ?効いてない?」
「ナナミさん、ドンマイです」
戸惑うナナミに、クロナは苦笑した。
……魔物を召喚し、なおかつそれなりの攻撃力を期待するには、ちょっと魔力が足りなかったようだ。
まぁ、ちょっとした御愛嬌ってことにしておこう。
すると、この四人の中では弱いと見たのか、キマイラはナナミに襲い掛かろうとするが、
「凍吹け風、結べ華――『六華龍乱』!」
そこは俺がインターセプト、ソハヤノツルギに高濃度の氷属性を纏わせて、雪の結晶を描くような斬撃をキマイラの左脇腹に叩き込み――刻まれた傷口に雪の結晶が突き刺さり、凍結していく。
傷口を結晶に抉られながら、しかも凍結によって結晶が傷口と癒着して抜けなくなり、身体の内側から凍らされていくと言う、殺傷性よりも長期的に苦痛を与えることに特化した技だ。
苦痛に喘ぐように唸るキマイラに、
「――アクアブラスト!」
クロナがアクアブラストを唱えて鉄砲水を放ち、ナナミから遠ざけるようにキマイラを押し返していく。攻撃魔法のエキスパートであるリザよりは一歩劣るが、それでも十分な破壊力だ。
押し返されたその背後からのエリンが迫る。
これは尻尾の蛇がエリンに咬み付こうと毒牙を剥くが、
「エリン……パーンチッ!」
その蛇に向かって、盾でおもっくそぶん殴った。
エリンパンチて……俺のアヤトパンチの真似か?
毒牙は勢いよくぶち込まれた盾にへし折られ、尻尾の蛇は悲鳴を上げて仰け反る。
「……エリンパンチじゃ語呂が悪いなぁ」
エリンパンチ(仮)をぶち込んだその本人は、その手応えに、と言うかネーミングに不満があるようだ。
素手の拳じゃなくて、盾で殴ってるから、まずそこが違うがな。
ちらりと馬車の方を見やれば、どうにかここから離脱しようとしているようで、殿を務めているクインズと目が合う。
大丈夫だ、と頷いてくれたので、サムズアップで返す。
しかし、馬車の方に意識を向けたのが迂闊だったのか、キマイラは前脚を振り回してエリンを追い払うと、翼を羽ばたいて馬車へ向かっていく。
「しまったっ……!」
風圧に身体を煽られてしまい、縮地でインターセプトしようにも間に合わない。
「こちらを狙うつもりか、やらせん!」
キマイラの狙いが馬車だと見たか、クインズは馬車から離れてトゥーハンドソードを抜いて迎え撃つ。
それを見てリザも続き、
「――ヘルファイア!」
上から馬車を襲おうとするキマイラに対し、リザはヘルファイアを薙ぎ払うように放つが、火炎放射が触れる寸前にキマイラはひらりと躱してしまう。
が、キマイラが馬車に接近するまでの時間を確実に遅らせてみせ、その稼いだ時間を活かすのがクインズの役目だ。
彼女は駆け寄りながらトゥーハンドソードを地面に突き立て、棒高跳びのように跳ね上がり――
「せぇいッ!!」
跳ね上がりの勢いも併せた、クインズ渾身の振り下ろしが、キマイラの左翼の付け根に叩き込まれる。
自重を浮かせるための力を直接攻撃され、平衡感覚を失ったキマイラは墜落する。
同時に着地したクインズは、トゥーハンドソードを左翼の付け根から抉るように引き抜き、もがくキマイラの顔面にトゥーハンドソードで斬り付けていく。
一撃、二撃、三撃、と柔剛併せ持つクインズの流れるような斬撃が、キマイラの目玉を傷付け、牙を砕き、鼻先を潰す。
しかしキマイラもやられるばかりでない、起き上がり様にクインズを喰らおうと砕け折れた牙を剥く。
「ふっ!」
即座、クインズはトゥーハンドソードを寝かせて構え直し、全身ごとぶつけるように体当たりし、ガァンッ!!と音を立ててトゥーハンドソードの刀身とキマイラの牙が激突し――キマイラのほうが怯んだ。
元より欠けた牙をさらに傷付けられたのだ、これは痛いだろう。
「これで終わりだ……!」
もがくキマイラの獅子の顔に、クインズは容赦なくトゥーハンドソードを突き込んだ。
脳を破壊されただろうキマイラは弱々しく唸り――そこで力尽きた。
「無事か、クインズ!」
「あぁ、問題ない。手柄を横取りして、悪いな」
俺達が駆け寄ると、クインズは俺に視線を向けて、冗談めかしながらトゥーハンドソードをキマイラの鼻っ面から引き抜く。
「でも、どうして急に馬車を狙おうとしたんだろ?」
エリンが先を進んでいる馬車との距離を気にしつつ、キマイラの行動の意味を推し量ろうとしているのを見て、クインズは「馬車を止めてくる」と馬車へ向かって走っていく。
「単に、馬車の近くにいる方が弱いって思ったからじゃない?」
ナナミがそう応える。
まぁ確かにキマイラからすれば、そう思っただろうな。見当違いも甚だしいが。
すると、思案に耽けていたクロナが、馬車に目を向けながら。
「もしかすると……馬車が、と言うよりは、『エレオノーラ様が狙いだった』のでは無いでしょうか?」
「エレオノーラが?」
それは何故かと先を促すと、
「今回の冥王再封印の旅は、エレオノーラ様が的になっている側面もありますよね?魔王ヴィラムが、何らかの方法でこの山脈の魔物を使役……いえ、洗脳して、私達を攻撃するように仕向けたとすれば、魔物達の様子がどこかおかしいのも納得いくかと」
そこでクロナは、魔物の使役ではなく、"洗脳"と言う言葉を使った。
使役であれば、魔物達はもっと理性的に俺達を襲っただろう。
だが、それが"洗脳"であれば話が変わる。
使役は、心服させることで成り立つ"関係"だが、洗脳は心に関係なく操り人形にすることと言ってもいい。
だとすれば。魔物達の目の焦点が合っていないように感じたと言うピオンの着眼点は見事と言う他無い。
しかしヴィラムめ、この山脈一帯の魔物のほとんどを洗脳するほどか、なかなか手の込んだことをしてくれるな。よほど女神様=エレオノーラのことが嫌いらしい。
馬車が止まるのを確認してから、キマイラの魔石や翼爪、牙などを剥ぎ取り、合流してから再出発だ。
この山脈で最も強かったのだろうキマイラを倒しても、他の魔物もやはりエレオノーラを狙っているのか、積極的に馬車に襲い掛かってくる。
魔物が来る度に対処は出来ているが……ここまでに何度も戦闘になっているせいか、さすがのみんなも怪我こそしていないが、疲労が見え始めてきた。俺?俺はまぁほら、鍛えてるし、へーきへーき。
交代で食事や休憩は取っているが、その最中にも遠慮なく魔物はやって来るので、一休みもままならないし、神経も尖らせっぱなしだ。
肉体以上に気が休まらないのだ。
「ふぅ……アヤトくん、まだこの山脈は抜けられないの?」
今しがた魔物を倒してみせたナナミも、度重なる戦闘にそろそろうんざりしてきたようだ。
「地勢図が間違って無ければ、そろそろ出口のはずだが」
懐にしまっている地勢図を確認し、周囲の地形から大まかな現在地を割り出しても、そろそろ抜けられそうなんだけど。
「……あの、アヤトさん」
ふと、何かに気付いたのか、リザが神妙な声で話しかけてきた。
「どうしたリザ?」
「もしかしてわたし達……同じ場所を回ってませんか?」
ふむ?言われてみればそんな気がしなくも無い気がする。
「それに、なんだか霧も濃くなってきているような……」
「え、でもそんな回り道とかしてないよね?」
そんなはずはない、とエリンは言いたいだろうが、ちょっと待ってね。
周囲環境の情報を読み取って……
「これは……どうやら霧が原因のようだな」
魔力を含んだ霧だ。
道なりに進んでいるように見えて、その実同じ場所をぐるぐる周回していたと言うわけか。
「霧が原因だと?」
クインズが目を細めて、周囲の霧を睨む。
「霧……となると、幻覚の類でしょうか」
呪いに関する造詣のあるレジーナが、いち早くその正体に気付いた。
「霧に原因があるのは分かったけど……だからって、どうするのよ」
原因は分かってもどう解決するのかとピオンは言う。
そうだなぁ。
「霧を媒介にして俺達を惑わせているなら、霧ごとふっ飛ばすか」
「「「「「「「え?」」」」」」」
霧ごとふっ飛ばすと言う俺に、エリン以外の七人の声がハモった。
「なんかまたアヤトがとんでもないこと言ってる」
エリンはもはや平常運転だ。
「よし、みんなは馬車の中に入ってくれ。外にいたら吹っ飛ばされてしまうかもしれないからな」
みんなを馬車の中に避難させてから、俺は馬車に手を添える。
詠唱するのは風属性の魔法だが、これから俺が使うのは"禁呪"の類だ。
「――荒べ狂飆、吼えよ烈風、竜を巻け叢雲――『ゲブリュルヴィント』」
最初はそよ風、しかし少しずつ風は強まり、やがては台風に匹敵する暴風となる。
町で使ったら建物が吹っ飛ぶレベルだが、俺という台風の目――中心にあるため、馬車は強風でちょっと揺れるくらいだ。お利口さんしてくれているお馬さん達には悪いが、あとでニンジンたくさんあげるから許してクレメンス。
この暴風を制御し――霧を吹き飛ばす!
数分ほどかけてゆっくりと霧を押し出して……空がカラッと晴れるのを確認。
「よし、もう大丈夫だぞ」
みんなゾロゾロゾロゾロと馬車から出てきて、さぁ再出発だ、急いでこの山脈を抜けなければ。




