4話 海底洞窟
翌朝。
睡眠時間そのものは少し短いが、そのぶんというか熟睡は出来たようだ。
「すー……くぅ……すぅ……くー……」
左隣から聞こえてくる寝息は、エリンのものだ。
そう言えば昨夜はエリンと一緒に寝たんだっけな……
結局手を出さなかったというか、出せなかったというか。
だって彼女、まだ十五歳だよ?
そりゃ十五歳の若さで一大企業の社長で定刻通りに只今到着する勇者系主人公だっているけどさ、それとこれとは話が違うくない?
俺に言わせれば、まだ子どもなんだよなぁ……犯罪的に可愛らしいのは仕方ないとしても。
言い訳はその辺にしておいて、エリンが起きる前にそっとベッドを抜け出さないとな。
こうしておかないと、多分起きぬけに「なっ、なっ、なんでアヤトが私のベッドにいるの!?バカ!エッチ!スケベ!変態!婚約破棄!追放!ざまぁ!もう遅い!」とか朝から罵倒のオンパレードになりかねないから。後半部分はちょっと作品が違うかな。
ギャルゲーの世界の主人公に異世界転生した時も、ヒロインの方から甘えに来て、コンシュマー版ならカットされそうなシーンを過ごしたのに、翌朝になったらツンツン姫モード全開で、耳と心臓と股間に悪いことが何度もあった。
さて起き上がろうとして――左腕にちょっと違和感。
何かと思って見れば、エリンが俺の左腕を枕変わりにしているではありませんか。
あ、これ下手に動いたら起きちゃう奴ですね、分かります。
「んんっ……」
というか俺が身動ぎしたせいで、起きちゃった。
「ぁ……おはよぅ、アヤト」
「……おはようエリン」
まだ半分微睡んでいるのか、エリンが甘ったるそうな顔で見つめてくる。
いやいやちょっとこの娘可愛すぎじゃありません?
よし、怒られるかもしれないが撫でよう。なでなで。
「ふあ」
そっと手を伸ばして、エリンのりんごみたいに紅い髪を優しく撫でる。なでなで。
「ア、アヤト……?」
「ん、寝癖ついてたからな」
うーん、我ながら苦しい言い訳だ。なでなで。
「えへへ……」
すると喜んでいるのか、エリンは顔を綻ばせる。なでなで。
「小さい頃に院長先生がね、こんな風によく頭を撫でてくれたから……」
「そっか」
あー、そっちかぁ……なでなで。
でも嬉しそうだからまぁいいのか。なでなで。
もうしばらくなでなでして、そろそろ起きないといけないので、俺は一足先に顔を洗って身嗜みを整えて、部屋の外で出立準備を整える。
エリンの着替えとかもあるからね。
着替え終わって呼ばれたので入ると、エリンが何だか恥ずかしそうに「わ、私、寝言とか言ってた……?」とか恐る恐る訊いてきたけど、そこは紳士のマナーで「いいや、寝てたから聞こえなかったと思う」とスルッとスルーしてあげたら、ホッと安心してくれた。
機会があったら、サプライズでアップルパイを焼いてあげようかな。
宿を引き払って、海底洞窟へ向かう前に、エリンは教会で御祈りをしておくと言った。
孤児院育ちならではの信仰深さかな。
ゲーム世界ならばセーブという概念があるが、この世界はゲームではない現実だ、御祈りをしたところで何の意味があるのかと思ったが、しかし俺の存在自体が女神様の遣いそのものだ。
もはや気兼ねないと言ってもいいくらいには、俺も女神様も互いに慣れ過ぎているが、まぁ……たまには形だけでも信奉しても良かろうさ。
などと自分に言い訳しつつ、エリンに倣って神父さんの前で手を合わせて瞑目。
――この旅が、エリンにとって幸あるものでありますように。
さすがに、「エリンとイイ感じの関係になれますように」とかだと、いい加減過ぎて罰が当たりそうなのでやめておいた。
「この間の御告の通り、運命の人に出逢えました。ありがとうございます!」
俺の隣でエリンは嬉しそうに神父さんに報告している。
彼女の言う「運命の人」が俺のことだと思ったのか、神父さんは微笑ましげに「それは僥倖。末永くお幸せに」と頷いている。
俺もエリンを大切にします。
御祈りが済んだら、今度こそ出発だ。
昨日にエリンが俺を発見した場所を通り抜け、そのまま北へ。
運良くと言うべきか、道中で魔物に遭遇することなく、海底洞窟の入口に到達する。
「ここが海底洞窟か」
「うん。ちょっと暗いから、気を付けていこうね」
エリンの一步後ろに続いて、階段のようになっている坂道を降りていくと、ジメジメした空気が肌に纏わりつく。
海底に近いだけあって、湿度が高いようだ。
確かに暗くて視界が悪いな。
こう言う場所ではこれだ。
「『ライトアップ』」
そっと右手の人差し指を天井に掲げると、指先から暖色光が満ち溢れ、俺とエリンの周囲を照らす。
「明かりを点けてくれたの?」
「あぁ。暗いままは精神衛生的に悪いからな」
ついでに能力値が少し強化されるけど、これは黙っておく。頼られ過ぎるのも良くないので。
「ありがと。ずっと暗い中で戦おうとしてたから、助かるよ」
町を出た時から、エリンは上機嫌だ。俺も機嫌が良くなりそうだよ。
……なんて時に、邪魔は入ってくるものだ。
バサバサと耳障りな羽音を立てながら天井辺りから降ってくるのは、蝙蝠型の魔物が二匹。
剽軽そうな面構えをしているが、牙を剝きながら威嚇しているところ、襲って来る気満々だ。
「『シャドーバット』だよ。フラフラして鬱陶しいし、噛まれたら血を吸われるし、嫌なのが出た」
以前に吸血されたことがあるのか、名前を教えてくれた当のエリンは嫌悪感を顕にする。
「どうする?嫌なら俺が片付けてもいいが」
気配から見ても、脅威度はゴブリンと大差ないだろうが、一応訊いてみる。
「うぅん、大丈夫。やってみる」
エリンはショートソードを抜き放ち、率先して前に出る。
すると、シャドーバット二匹はエリンに狙いを定めて飛んでくる。
前の一匹が、彼女のか細い首筋に牙を突き立てようと迫るが、それよりも先に、エリンの鋭い一閃がシャドーバットを斬り裂いた。
もう一匹も続いて牙を剥いてくるが、返す刀のようにもう一閃。
昨日とはまるで別人の動きだ。
「おぉ、やるじゃないかエリン」
「そう?なんかね、シャドーバットの動きが前よりもずっと遅く見えたの。こんな隙だらけなのに大丈夫かなって思った」
余裕かよ。まぁ、苦戦するよりは遥かにいいけど。
「その分なら、余裕そうだな」
「うん、多分そうだと思う」
黒ずんで消えたシャドーバットからゴールドを回収し、先へ進む。
サクサクと、本当にサクサクとダンジョン攻略は進んでいる。
ダンジョンの深層に近付くに連れて、蔓延る魔物も強くなっていくものだが、そんなもの、今のエリンの前には何の意味も為さない。
エリン自身、「何だか私が私じゃないみたいに強くなってる気がする……」と微妙に不安がっている。
昨日までの感覚と、今日の感覚とが、エリンの認識下において乖離しているんだろう。
これに関しては俺にもどうにも出来ない、慣れてくれ。
ふむ……この辺りが最下層で、ここからは地上に向けて登っていく感じだな。
カタツムリのゾンビである『エスカルゴン』は身を守る殻ごと叩き斬り、
実体のない『レイス』『ゴースト』といった霊体系は雷属性の魔法の『サンダーボルト』で消滅させ、
毒キノコの『ポイズンマッシュ』は毒胞子すら撒かせずに瞬殺し、
うーん、こりゃ魔物の方が可哀想になるな。
向かって来るこいつらが悪いんだろうけど、如何せん相手が悪過ぎる。
ご愁傷さま、と心の中で合掌しつつ、上層へ続く道を登っていく。
さて、もうすぐ地上に出られそうだと言う時だった。
「……ん?」
おや、少し強い気配がするぞ。
「どうしたの?」
ふと足を止めた俺に、エリンは声をかけてくる。
「エリン、少し気を付けた方がいい」
暗闇の向こう側から、ズルズルと何かを引き摺るような重音。
「どうやら、この海底洞窟の"ヌシ"のようだ」
別の言い方をすると、"ボス"だ。
ライトアップの有効範囲内にまで近付くと、全貌が顕になる。
見た目は、草や蔦、木の葉の塊。
その隙間からギョロリと覗く目と、腐って変色したタラコみたいな唇が生えたような異形。
何本もの触手がウネウネと蠢き、控え目に言って大変気色悪い。
「うっわ……」
思わずエリンもドン引きだ。俺も引くわ、マジヒクワ。
「こいつは……『オチュー』か」
植物系の魔物で、触手で対象を絡め取って大口で呑み込んでしまうという分かりやすい生態をしている。
だが、これはかなりデカいな、気配も先程からの小物とは違う、長らくここに棲み着いて君臨していたのだろう。
「どうする、エリンがやるか?」
「うん、頑張るよ……」
一応、自分の力でオチューの撃破を試みるエリンだが、露骨に顔を引き攣らせている。
オチューは、見た目の気色悪さを裏切らない、形容し難い奇声を発して威嚇してくる。
「こんなの絶対触られたくない……『ファイアボール』!」
エリンは即座に朱色の魔法陣を顕現、火属性の攻撃魔法のファイアボールを発動、火球を投射する。
火球はオチューを覆う蔦草に着弾、炸裂するが、分厚く集積された蔦草の塊は水々しく、エリンのファイアボール程度の火力では表面を焦がしただけだ。
するとオチューは触手を蠢かせ、数本のそれらをエリンに向けて伸ばし放つ。
嫌悪感は否めないながらも、エリンはすぐさまショートソードを抜き、絡み付かんと迫る触手を斬り飛ばしていく。
半ばから断ち斬られた触手は怯むような挙動を見せ、オチューの元へ引っ込んでいく。
しかしまだまだ触手はあるのか、エリンだけでなく俺にまで触手を伸ばしてくる。恐らくだが、オチュー本体に引っ込んで、再生とかするんだろうな。
「ほい、ほい、ほいっと」
ロングソードを振るい、触手を切断、切断、切断。
さて、触手ばっかり斬り落としても埒が明かないのはエリンも承知の上だろう。
「うー、近付きたくないけど、近付きたくないけどっ!」
二回言うほど近付きたくないのか、気持ちは分かるけどな……
手前の触手を斬り捨てたエリンはオチューに接近すべく、一気に踏み込む。
うん、踏み込み足の速さも昨日と段違いだ。
「たあぁッ!」
最後の一步を踏み込むと同時に跳躍、落下の勢いと共に一閃。ジャンプ斬りってやつだな。
巨躯に纏う蔦草もろとも斬り裂き、草汁のような体液が噴き出し、オチューは悲鳴のような奇声を上げて蹌踉めく。
「一気に、行くッ!!」
荒々しく流麗で、美しく猛々しい、剣撃の乱舞がオチューの天然の鎧を次々に斬り飛ばしていく。
すると、不意にオチューの挙動がゆらりと揺らぎ――
「やった?」
あ、こら待ちなさいエリン、それフラグです。
「エリンッ、避けろ!」
オチューは大口を閉じ――そこから紫煙が漏れていることに気付いた俺は、すぐに注意喚起する。
あれは――毒ブレスだ!
「えっ?」
しかし、エリンは俺の注意喚起に気を取られてオチューの挙動に注意を外してしまっている。違う、俺のことじゃなくてだな!
瞬間、オチューは勢いよく毒ブレスを吐き出した。
毒々しい紫色の強風がエリンを包み込み、吹き飛ばす。
俺との鍛錬の甲斐あって、すぐに受け身を取ったエリン。
だが、
「うっ……ぷ、気持ち、悪、ぅ……っ」
立ち上がろうとする足はフラつき、見るからに顔が蒼白になっている。
致死毒が血液中に侵入し、急速に細胞の壊死や抵抗力が弱化しつつあるのだ。
いくら肉体を鍛えようと、体内を侵す間接攻撃には無力だ、時間が掛かればオチューよりも先にエリンが中毒死する。
無論、毒に"慣れた"――耐性ではなく、単なる我慢強さ――人間なら少々の害を無視して戦闘続行ということも可能だが、さすがにエリンもそこまでは戦い慣れしていない。
これはさすがにまずい、手出しさせてもらうか。
「――『リカバー』」
瞬時に状態異常回復の魔法を詠唱、エリンに向けて放つ。
すると、血液中を侵蝕する致死毒が瞬く間に中和され、見る内に彼女の顔に生気が戻る。
「……あっ、治った」
「俺が治したんだよ。すまん、手出しするつもりはなかったんだが」
「うぅん、ありがと」
ショートソードを握り直し、再びオチューへ突進するエリン。
オチューは再生したらしい触手を伸ばすものの、エリンは慌てることもなく、ヌチョヌチョしてそうなそれらをショートソードで斬り飛ばしていく。
距離を詰めてきたエリンに、オチューは息を大きく吸い込み、もう一度毒ブレスを吐き出そうと頭を振りかぶるが、
「さすがに二回目は、ねっ!」
エリンは横っ飛びでオチューの左側面へ回避し、一歩遅れてオチューが誰もいない空間に毒ブレスを吐き出す。
そうそう、大技を放つには大抵、予備動作ってものがあるし、その隙も大きいものだ。
毒ブレスを吐き出していて無防備な側面、オチューの頬 (?)へ向けてショートソードを突き出す。
「やあぁっ!」
切っ先は体表を突き破り、口腔内へ滑り込む。
ショートソードが口腔内に刺し立てられ、オチューは唇を震わせて怯むが、エリンはそこで攻撃の手を止めず、
「こ、のぉッ!」
突き込んだショートソードの柄を両手で握りしめ、オチューの口腔を抉り出すように斬り抜いた。
これは効いただろう、オチューは体液を垂れ流しながら、地面に打ち上げられた魚のようにビタンビタンとのたうち回る。
息の根を止めるなら今だ。
エリンはショートソードを構え直し、止めを刺すべく迫る。
しかしオチューはやぶれかぶれのつもりか、一本だけ残っていた触手を放ち――攻撃に意識を割いていたエリンは反応が遅れてしまった。
「ひぅっ!?」
瞬く間にエリンの脇から、肢体を弄るように絡み付き、持ち上げてしまう。
「くっ、ふっ、んぁっ……!」
触手による凌辱プレイがお好みとはなかなか悪趣味だなオチュー……じゃない、これは助けるべきか。
と思ったが、
「やっ……は、な、し、てっ、――ファイアボール!!」
身動きが取れない中でもファイアボールを唱え、ちょうどエリンを呑み込むつもりだったのか、火球がオチューの開けられた口の中へ放り込まれる。
あ……(察し)
一拍置いて、腹の中でファイアボールが炸裂し、オチューは耳障りな奇声を上げながら口から黒煙を吐き出した。
――この一撃が決め手になったか、オチューは事切れたように斃れ、黒ずんで消滅していった。
「わっ」
触手の拘束が消えて、持ち上げられていたエリンは宙に放られる。
「おっと」
すかさず回り込んで、受け止める。
大怪我するほどの高さじゃないが、落ちたら普通に痛いと思う。
「大丈夫か?」
「あっ……」
お姫様抱っこするみたいな形になったが、許せエリン。
「う、うんっ、大丈夫。毒も触手も気持ち悪かったけど、怪我はしてないから」
「そうか、なら良かった」
そっと優しく下ろしてやる。
「あ、ありがと」
エリンはちょっと恥ずかしそうにそう言うと、ぱっと俺から踵を返して、オチューが残していったゴールドを拾いに行く。
うん、やっぱり普通に可愛い系、略してふつかわ系だよ、エリン。
こういう、素直で優しくて真面目なぐう聖ヒロインって基本的に人気高いし、好感も持ちやすいから、嫌いになる方が難しいんだよなぁ。
「あっ。アヤト、ちょっと来て」
「呼ばれた気がした」
エリンに呼ばれたのでそちらへ向かうと、大量のゴールドの中にぽつんと、杖が一本転がっている。
「これ……さっきの魔物が呑み込んでいたのかな?」
「だとしたら、どうして消化されずに綺麗なまま残っているかは分からんが、多分そうだろうな」
と言うか、さっきエリンのファイアボールがオチューの腹の中で炸裂してたけど、よく燃えなかったな。
拾ってみて――おぉ、これは。
「魔力を込められたセプターだな。けっこういい素材を使っているようだが……」
真鍮色の杖身の先端には鈍く輝く魔石、その周囲には羽根のような装飾が施されている。
当然、良いのは見た目だけではない。
この杖、かなり強い。
少なくとも、俺が今まで見てきた杖の中でも指折りの性能――神具とか、宝具の類だ。
どうも、本来持つ力の大半がセーブされているようだが、恐らくは使い手に応じて力が解放されるタイプかもしれない。
と言うか……なんでこんな物がオチューの腹の中にあって消化されないのか……いや、逆に捉えれば、オチューに呑み込まれても消化されずに残っていたのは、この杖の力のおかげだったのか?
唯一分かることと言えば、俺もエリンも選ばれた使い手じゃないってことだな。
「エリン、持つか?」
「うぅん、アヤトの方が魔法をたくさん使えるし、アヤトが持ってよ」
「そうか?まぁとりあえず俺が持っておこう」
いずれどこかで使うこともあるだろうし、あるいは好事家に見せれば高値で買ってくれるかもしれない。
セプターを拾い、腰のベルトの隙間に差しておく。
そろそろ地上に出る頃だ……と思ったら、
「あっ……アヤト!」
「あぁ、気付いてる」
振り向いた先――俺達が通って来た方向から、またオチューが姿を現した。
「復活……ではないな、もう一体いたのか」
しかも、さっきのよりもさらにデカいし気配も強い。
ヌシはこいつの方だったのか。
こいつはさすがにエリン一人じゃ厳しいかもしれないな。
「エリン、下がっていてくれ。こいつは俺がやる」
ロングソードを抜きながら、エリンを背に立つ。
「え?私、まだ戦えるよ?」
「俺の出番も残しておいてくれってことだよ」
さて……本気の二割くらいで相手してやるか。
ヌシオチュー(仮称)は、奇声を上げて威嚇するなり、即座に多数の触手を伸ばして襲い掛かってくる。
「――『エアスラッシャー』」
顕現させるは、風属性の中級攻撃魔法。
圧縮した真空の刃を無数に発し、ヌシオチューの触手を触れた先から斬り刻み、そのままヌシオチューの鎧たる蔦草も吹き飛ばしていく。火で燃えにくいなら、風で吹き飛ばしちゃえばいいじゃない。
そうしてヌシオチューが丸裸になったら、縮地と無影脚の合せ技で瞬時に距離を詰めて、
袈裟斬り、右斬り払い、軸足を入れ替えつつ逆袈裟斬り、さらにもう一回転し、遠心力を加えた回転逆袈裟斬り。
本当なら刀身に火属性魔法を通熱させて、魔法剣として使いたいところなんだけど、残念ながらこの銅の剣はそういうのに向いていない。下手に魔力を加えたら壊れてしまいかねないからな。
回転の勢いを一旦殺したら、軸足を入れ替えて腰溜めに三段突き、最後に兜割り。
ヌシオチューはズルリと頭から真っ二つになり、やがて黒ずんで消滅した。
宝具は無かったけど、結構な額のゴールドを落としてくれた。大漁大漁。
港町に着いたら、今日はちょっとお高い宿にしてもいいな。
「やっぱり私、いらない子かも……?」
「まぁまぁ、そう言わずにな」
エリンの目が死んだ魚のそれになっていたが、なんとかフォローしておく。
さぁ、今度こそ地上に出るぞ。
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