26話 闇よ光へ還れ
今年最後の更新です。
「それよりエリン、なんか右手が光ってるぞ?」
さっき、ドラゴンマオークの右翼を斬り飛ばした時にはよく見えなかったが、エリンの右手は今、黄金色の光を放っていて輝いている。俺のこの掌が光って唸りお前を倒せと輝き叫ぶ指かな。
「え?……あ、ホントだ」
自覚無かったんかい。
「覚醒でもしたか?」
「覚醒?うーん、「アヤトを助けなきゃ」って思ったら、なんかこう、力が入り過ぎたっていうか、そんな感じ?」
あれだな、ピンチになったら急に強くなって一発逆転する、勇者特有の"ご都合主義"だな。
「よく分かんないけど、アヤトが助かったからまぁいっか」
軽っ、自分のことなのにそんなあっさり「まぁいっか」で済ませていいのか。
「とにかく、まずはブタさんを倒さないとね」
ショートソードを構え直して、踏み込むと同時にエリンが一瞬でドラゴンマオークの懐へ飛び込み、すれ違い様に一閃、ドラゴンマオークの左脚を鱗を斬り飛ばし、すぐに反転してまたすれ違い様に一閃、一閃、一閃、一閃……パワーアップ補正値高いな、圧倒的じゃないか。
「アヤト様、お怪我はございませんか?」
エリンがドラゴンマオークのあらゆる部位に傷を刻み付けていく中、クロナが駆け寄って俺の身を案じてくれる。
「少し背中を痛めたかもしれないが、動くには問題ない」
「一応、回復しておきますね。――『ヒール』」
キュアよりも効果は弱い分詠唱の早い下位互換の治癒魔法――ヒールを背中に当ててくれるクロナ。
「私も続きます」
俺がクロナに回復してもらっている間、再びレジーナが鎖鎌を手に接近を試みている。
ドラゴンマオークは縦横無尽に駆け回るエリンの動きを追うのに手一杯で、レジーナの接近に気付いていない。
「ふっ!」
左の鎖鎌を投げ付け、ドラゴンマオークの左脚の傷口を狙ったそれは深々と突き刺さり、抉りながら刺し込まれる。
今度は引き込まれないようにしっかり踏ん張っているレジーナは、ギチギチギチとチェーンを鳴らしながらも呪術のルーンを顕現させ、
「――『コローデス』」
黄土色の魔力光がチェーンを通じてドラゴンマオークの傷口に流し込まれていく。
コローデス……"腐食"って意味か?
さしずめ、防御力の低下を引き起こす呪術か。
過去の異世界転生で地球の防衛をしていた時、戦車くらいあるクソデカいアリさんから蟻酸を浴びせられた時、金属製のプロテクターが腐食して脆くなったり、皮膚がボロボロになったりしてエラい目にあったなぁ。
「エリンさんを巻き込まないように……――『スプラッシャー』!」
レジーナの反対側へ回り込んでいたリザは、水属性の初級魔法のスプラッシャー――高圧縮した水の塊を地面スレスレで放ち、ドラゴンマオークの右脚へ炸裂させる。
「ヴギァァァッ……!」
エリンの絶え間ない斬撃に翻弄され、レジーナに鱗や皮膚を腐食させられた上から、リザのスプラッシャーを叩き込まれたドラゴンマオークは、バランスを崩して転倒する。
「さぁ、もう万全ですよ、アヤト様」
「ありがとう、クロナ」
背中の回復だけでなく、複数のバフを掛けてくれたクロナは、回復強化の完了を告げてくれる。
「エリンとレジーナは下がってくれ!後は俺が決める!」
ロングソードを抜き放ちつつ、前にいる二人に呼び掛けると、それぞれ「あ、うん!」「承知しました」と応じ、すぐに攻撃の手を止めてくれる。
転倒し、起き上がろうとしているドラゴンマオークの眼前へ縮地。
――描き出すイメージ……一度放出した"氣"をもう一度自身の中へ閉じ込めて圧縮、練り上げるそれは、竜の怨嗟の如し。
怒りと憎しみと悪意が生み出す破壊的な"力"だけを抽出し、一点へ集中……集中…集中、集中集中集中集中集中、集集集集集中中中中中……!
――集中――
「ぅ る あ ァ ァ ァ ァ ァ ァ ァ ァ ァ ァ ッ !!」
集中に集中を重ねた"力"を、竜の息吹のごとく吐き出し、切っ先に乗せて叩き込む!!
ロングソードの切っ先がドラゴンマオークの眉間へ沈み込み――一拍の後、ドミノ倒しのようにドラゴンマオークの龍体が吹き飛んでいく。
本来ならば、相手から受けたダメージすらも自身に受け入れ、それを攻撃に乗せて放つカウンター系の必殺技だが、俺はこれを自分の中の"力"で自分を攻撃し、それを受け入れ直して一撃に乗せる技に昇華させたのだ。
だってわざわざ痛い思いする必要ないし。
「ヴア"ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"!?ワ"ジノ"ッ"ワ"ジノ"ヤ"ボウ"ガァ"ァ"ァ"ァ"ァ"……」
ありとあらゆる"龍"の部分が消し飛ばされたドラゴンマオークは、弱々しく光に包まれ――満身創痍の元のマオークに戻り、倒れる。
「……お、のれ……ゆ、うしゃ、め……ワ、シの、ワシ、が…、ワシはっ、……グフッ」
魔王、墜つ――
と、言いたいところなんだが。
「……これで倒した、とは言えないよな」
軽く息を吐き出して、ロングソードを納刀。
「うーん……このままほっといたら、きっとまた復活するよね?」
いつの間にか右手の輝きが消えていたエリンが、俺の隣に歩み寄って、マオークの死体を見下ろす。
「以前にエリンさんがトドメを刺した時は、確かに息の根を止めたんですよね?」
リザが注意深くマオークを観察する。
もしかしたらまだ生きているかもしれないと思っているのだろうが、奴から"生命の音"が聞こえない以上、完全に絶命しているのは間違いない。
「そうだ。いつどこでどうやって復活したのかは、ハッキリしないままだが……」
まぁ多分あのアリスAちゃんに拾われたんだろうなぁ、とは予想しているが、何故死に体だったマオークを拾って蘇らせたのかは、やはり分からない。彼女が言うには「彼はアリスじゃないけど、アリスになれる」だそうだが。
「だが少なくとも、このまま死体を残しておくのは良くないだろうな」
マオークが復活可能だったのは、肉体が残っていたから、という可能性もある。
俺のオールリジェネレイションが、髪の毛一本でも残っていれば完全再生可能なのと同じ原理だ。
この時空から、マオークの遺伝子を欠片のひとつも残さず完全に滅すれば、まぁ……これでもし復活するのだとしても時間稼ぎくらいにはなるだろう。
「――『ジャッジメントレイ』」
白金色のルーンを顕現、光属性の上級魔法だ。
光の柱を生み出し、それをマオークの死体へと注ぎ込む。
聖なる白光に、マオークの肉体が浄化されていく。
数秒間の照射の後、マオークの死体は完全に消滅した。
辺りに奴の魔力も、魂の残滓も感じられない。
「俺を悪く思え。俺を呪え。俺を憎め。そして俺を殺せ。お前の恨み辛み、全部受けてやる。だから、先に逝っていろ」
鎮魂詞を呟き、ジャッジメントレイの照射を止め、祭壇に沈黙が訪れる。
「……さぁ、戻ろうか。これでひとまずの問題は解決しただろう」
ウィンディーネは (俺がどつき回して)正気に戻ったし、(多分)呪いの元凶であるマオークも消滅させた。
後は経過観察して、その結果次第だ、俺達に出来ることはもう無いだろう。
さて、帰るとしようか。
「アリスはアリスのちからをえて、アリスはアリスにうたれた」
水の霊殿の外から、黒ウサ耳のゴスロリ少女――アリスはそう呟いた
そして――自身の傍らにいる存在に向き直った。
「アリスのせかい。だれもくるしまなくていい、みんながたのしいせかいまで、あとすこし。それをじゃましたアリスをころすまで、あとすこし」
傍らの存在――下品な紫色のフードを目深に被ったその姿。
「うんうん。キミのその純粋な願い、このボクがちゃーんと聞き届けたよ♪」
顔の下半分しか覗えないが、白髪と中性的な顔立ちが見え隠れする。
「まっ、そんなに心配しなくてもいいけどねー。ボクは今までにいくつもの世界に介入して、その全部で上手く立ち回れてるし♪」
フードの奥から、その青年――水の霊殿から出て来たアヤトの姿を捉える。
「あのアヤトとかいう、なろう系インチキチート転生者も、どうせトラックに轢かれたとかテキトーな理由で殺されて、異世界転生の女神様にチートでハーレムが出来るようにしてもらっただけだろうしね♪」
「それでもかれはアリスだから、アリスもきをつけて」
「わーかってるよー、へーきへーき♪」
「あなたは、アリス。かれも、アリス」
フッ、とアリスが消える。
「えー?無視しないでってばー、ははっ♪」
そうして少し間を置いてから。
「…………ハァ、ボクはしょせん"退会"して、作品ごと存在を無かったことにされたのに、どうしてこんな頭の悪いなろう系世界に引っ張り出されてるんだろう……ほっといてくれりゃいいのに」
水の霊殿を出た頃にはもう霧が晴れており、燦々と日が降り注いでいる。
生温かった気温もいい具合に凉しくなり、日が海面に照り返してプリズムに輝く。
いい景色だ、これが本来のアトランティカの海なのだろう。
……なんだけど、なんか遠くから誰かの妖しい気配を感じたけどすぐに消えてしまった。
あの、寂しさと諦念が綯い交ぜになったような、あれはなんだったんだ?
「ん、眩しい……」
海の輝きにエリンは目を閉じて、少しずつ開く。
「どうやら、霧が晴れたようですね」
リザは霧の晴れた海原を見つめている。
「海水温も元に戻りましたが……元の生態系に戻るまでは今しばらくの時間が必要でしょう」
レジーナは浜辺から海水に触れて水温を確かめている。
この辺もヨルムガンド湿地帯と同じだなぁ、環境そのものは元に戻っても、自然はすぐに戻らない。
自然は悠久の時をかけて構築されるのに、それが乱れて崩れるのはほんの一瞬だ。
「さぁ皆様、船に戻りますよ」
最後にクロナが水の霊殿に祈祷を行い、再び扉が封印によって閉じられる。開けっ放しはあかんやで。
停泊してくれていた船に乗り込んで、アトランティカへ針路を取る。
緩やかに揺れる船室の中で寛ぐ俺達。
ぼけーっと窓から海を眺めていると、ぽすんと右肩に何かが触れた。
「すぅー……くぅー……すぅー……」
エリンが転寝して俺の肩に寄り掛かってきたようだ。
自覚が無かったとはいえ、なんか覚醒して一気に強くなってたし、その反動が来たのだろう、船が揺り籠のようにいい感じに揺れているのが決め手か。
よしよし、このまま寝てていいからな。
「ん……ふみゅぅ……すぴゅ……」
そしたら今度は左側――リザからも。
それにつられるように、俺の向かいの席に座るクロナも「はふ……」と欠伸をかみ殺して、窓際にもたれかかって転寝……転寝?まぁいいか。
なんだかんだいって連戦が続いたし、疲れたよなぁ。
唯一起きているのは、レジーナだけか。
「………………」
そのレジーナは、なんだかソワソワしている。
一度クロナの寝顔を見て、次にエリンとリザの寝顔も見て、最後にもう一度クロナの寝顔を見てから、俺に向き直る。どうしたんだろう。
「あ、あの、アヤト様……」
「ん?眠たかったら、レジーナも寝ていいからな」
「いえ、そうではなく……」
ソワソワしていたと思ったら、今度はもじもじし始めるレジーナ。
お花を摘みに行きたいのかなぁと思ったのだが。
「私にも、その……な、なでなで、をしてください……」
なにこのかわいいがオーバーヒートしてる生き物。
恥ずかしそうに上目遣いでそんなおねだり大作戦を決行しているのに、断れるわけないじゃないか。
「よしきた」
こっちに来なさい、と手招きすると、レジーナはそーっと、それはもうそーっと頭を差し出してきた。
なでなですると、さらさらと彼女の黒髪ロングが揺れる。なでなで。
「わっ……」
さっきクロナをなでなでした時もすごい気持ち良かったんだよなぁ。なでなで。
「レジーナも、なでなでしてほしかったんだな」
きっとクロナがなでなでされるのがちょっと羨ましかったんだろう。なでなで。
「ち、違いますっ」
あれ、違うの?なでなで。
「その……姉上になでなでしたのですから、私にもなでなでするのが礼儀……そう、礼儀なのですっ」
一生懸命「仕方なくなでなでされてます」的な照れ隠しをしてるレジーナかわいい。なでなで。
「そうか、礼儀か」
「そうです。ですから、アヤト様は私にもなでなでをしなければならないのです」
むふん、とドヤ顔しながらもなでなでされているレジーナ。なでなで。
……ふと、俺の中で悪戯心がむくりと首を擡げる。なでなで。
なでなでをする手を止めて、レジーナの髪をするりと指で梳く。
「ひぃっ」
すると俺の手付きが変わったことに気付いたレジーナが、びくりと肩を竦ませた。
「レジーナの髪は綺麗だな」
ちょっと声のトーンを甘めに、イケボで囁くように。
「あ、あ、あの、アヤト、様……っ?」
演じるな、心から言の葉を口にしろ、思いのままに。
「さっきクロナをなでなでした時と、感触が違うな。双子姉妹と言えども、髪一つでこうも違うものなんだな」
「わ、私の髪など、姉上には遠く及びませんっ……」
「そんなことはない。確かにクロナの髪も綺麗だが、『レジーナだって綺麗だ』」
レジーナだって綺麗だ、と敢えて『の髪』を意図的に抜く。
「はうぅっ」
ちょっと褒めただけで真っ赤になってやがる。へっ、おもしれー女……というのは嘘だが。
でも綺麗なのは嘘じゃない。
控えめに言っても、レジーナは綺麗だと思う。
「お、お褒めに預かり、光栄です……」
さらさら、さらさら、さらさらと梳く。気持ちいいなぁ。
「い、いえっ、やっぱりそんなことありませんっ。今日は戦闘の後ですから、汗や返り血などで汚れて……!」
はっはっはっ、その程度の言い訳で俺が引き下がると思ったら大間違いだぞぅ?
「汚れていてこれなのか?じゃぁ、髪を洗って乾かした後はもっと綺麗なんだろうな」
「っっっっっ……」
レジーナの顔が見る見る真っ赤に、真っ赤っ赤になりつつある。そろそろ頭から湯気が出てきそうだ。
「……あぁ、そうなると風呂上がりだから、髪だけじゃなくて肌も綺麗になって……」
「アヤト様いけませーーーーーんッ!!」
「おぅふっ」
瞬間、レジーナの張り手が俺の鼻っ面にぶち込まれた。いてぇ。
「はっ……もっ、申し訳ございません!」
張り手をぶち込んできたと思ったら、すぐ慌てて謝ってきた。
「その、男性の方からあんな風に褒められるなど、初めてで……」
「いや、俺もレジーナがそんなに慌てるなんて思わなかったよ、ごめんな」
ほんとはからかうつもりだったけど、それを言ったら「レジーナは綺麗でもなんでもない」と捉えられてしまいそうなので伏せておく。
「い、いえ……、あっ」
ふと、俺の顔を見てレジーナが何かに気付いた。
「どうした?」
「鼻血が出ています……私が思い切り叩いたから、ですね……」
鼻血?
軽く手の甲で鼻を拭うと、確かに血が付いた。
「姉上に手当てを……」
「はい、私がどうかしたのかしら?」
あれ?いつの間にかクロナが起きて……って、なんかニコニコしてらっしゃるぞ?
「あっ……あっ、姉上!?ま、まさか、最初から起きて……!?」
「ふふっ、さぁどうでしょう?アヤト様になでなでされたくて、頑張っておねだりをしてるレジーナ、可愛かったわねぇ」
「!!!!!」
あ、やっぱりあれは狸寝入りだったか。
転寝にしてはクロナの気配が"起きて"いたから、なんか変だなぁとは思ってたよ。
で、レジーナのおねだり大作戦からのアヤト様いけませーーーーーんを最初から見てました、と。
しかもレジーナの大声の中でもエリンとリザはすやすや寝ている。二人とも寝付きいいなぁ。
「そうそう、アヤト様に手当てですね。――ヒール」
ただの鼻血に法術って効くのだろうかと思ったが、クロナのヒールを受けると、鼻の奥がすっきりする。
耳鼻科で鼻詰まりを除去してもらった時の爽快感に似てるな、潮風のしょっぱい匂いが嗅覚を刺激する。
「なんかすまんな、クロナ」
「いえいえ、お気になさらず。レジーナの可愛らしい一面も見られたことですし♪」
「〜〜〜〜〜っ、姉上なんて知りませんっ」
ぷいっと窓の外へそっぽ向くレジーナ。
耳まで真っ赤だからバレバレだけど。
もうしばらく船に揺られて、アトランティカに帰港してきた頃には、お昼過ぎ頃だ。
朝早くから出港したけど、水の霊殿の仕掛けを解くのに時間が掛かったからなぁ。
クロナとレジーナのおかげで、攻略本を見ながらゲームするようにスムーズに出来たから良かったものの、これで仕掛けを自力で解かないとならなかったら、何時間もかかったかもしれない。
過去の異世界転生でも、"水"が絡んだ神殿やダンジョンの仕掛け、からくりは複雑である傾向があるんだよなぁ、水車を回したり水位を上げたり、時には水面を凍らせたり……
まぁそれはいいとして。
船の後片付けや整備は船員さん達に任せて、俺達は集会所へ向かう。
集会所の奥、エリックマスターの執務室に通してもらって。
「ギルドマスター。クロナ、ただいま戻りました」
「同じく。レジーナ、ただいま戻りました」
最初にこの姉妹が一礼。
「おぉ、二人とも戻ったか。それと、アヤト殿達も」
エリックマスターは、姉妹の一歩後ろで控えている俺達三人にも目を向ける。
ここは俺も一礼して応じるとしよう。
「報告致します。水の霊殿の守護霊、ウィンディーネは何者かの呪いを受けて暴走状態にありましたが、これを収束。その後すぐに、恐らくウィンディーネに呪いを掛けていただろう元凶も出現、これも撃破しました」
「ふむ、ウィンディーネ様は呪いによって暴走状態にあったと。しかし、今は霧が晴れ、海水温も元に下がったところを見る限り、呪いも解かれたようだな」
エリックマスターは襟を正して立ち、深く頭を下げた。
「此度は我らの不明が招いたことではあったが……アヤト殿、アトランティカを呪いから救ってくれたこと、この町を代表して感謝する」
「いえ、俺達は微力を尽くしたまでのことです」
瞬間、エリンとリザ、クロナ、レジーナから「あなたは微力という言葉の意味を覚え直せ」とでも言いたげな視線が刺さったけど、気にしない気にしない。
事務的な会話と、報酬の受け取りについていくつか交わした後は、もう今日のやることは終わったので、高給宿に戻ってのんびりするだけ。
しかし、何故かエリンとリザには残ってほしいとクロナとレジーナに言われたので、俺は一人で寂しく宿へ戻る。
とりあえず宿に戻って荷物を置いたり、武器の手入れをしたりして、それも済んだのでお風呂でも入ろうかなと思ったら、ドアノックされた。
「はい、どなた?」
「アヤト様、クロナです。お迎えに上がりました」
クロナか。
お迎えに上がりましたって、これからどこかに行くんだろうか。
とりあえずドアを開けて、と。
「ご苦労さん。お迎えに上がりましたってことは、これからどこかに行くのか?」
「はい。既にエリンさんとリザさん、レジーナもお待ちになっていますので、ご案内致しますね」
「よしきた」
必要最低限の手荷物だけ手にして、クロナの先導に従う。
どこに行くんだろう。
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それでは皆様よいお年をー。