第1-⑧話:ウラ世界のルール
ウラ世界にいる人は、もれなく全員が仲介人からルールを言い渡されている。それはウラ世界の秩序を守るためである。ルール違反をすれば、仲介人から手厳しい罰がある。
「基本的なルールについてまず説明します」
その一。ウラ世界のことをオモテ世界の人に話さないこと。
(私の場合は、取材中は知られないようにして、書いた記事を世に知らしめることだけ許されている。)
その二。相手の嫌がることはしないこと。
(過去を詮索したり、トラウマを逆なでしたりすること。道徳観を大切にするのは、記者として大切なことだ。不可抗力で知ってしまった場合は、罪に価しない。また、本人が許した場合のみは記事にしても良い。)
その三。本名を聞かないこと。
(記憶屋や仲介人といったように、仕事名でやり取りするようにする。もし知ってしまった場合は、言わないようにすること。記事として記録に残すことも禁止。)
その四。仲介人のルールは絶対であるということ。
(これに関しては詳しい説明はなかった。言葉のままということだ。)
「基本的なルールはウラ世界にいる全員に言い渡しています。そして、これから交わす特別ルールは、個人個人で異なるものになります。貴方には二点です」
その一。仲介人が紹介した相手とのみ取材すること。
(情報を統制するためだろうが、普通にしていても誰がウラ世界の人なのかわからないため、これは逆にありがたいことだ。)
その二。書き終わった記事は仲介人、もしくは記憶屋に渡すこと。
(原稿の内容を確認して、不備がないか確認するということ。慎重を期しているのはとてもよろしいことだ。)
「ルールは以上です。破った場合は罪を与えます。もちろん法に触れるようなことはしません。ただ、まぁ。法に抵触しないギリギリは責めます」
そういわれると逆に興味が出てくるが。表情の読めない彼の言うことは、本当なのか嘘なのかも見極められない。なので、ルールは破らないほうがいいだろう。取材を続けるためには、それが一番だ。幸いなことに、ルールは複雑ではない。破らなければいいだけだ。
なんて、この時は思っていたことを思い出した。
のちに語るだろうが、私はルールを破ってしまう。いやあ、そのことを思いだすと……。思い出すと…………。あれ。どういう罰だったかな。なんか恐ろしいことを体験したような気がするが、思い出せない。
まあ、思い出したら書こう。今はその時じゃないようだから。