71. 私は、あなたと生きていく。
「いや……それはもう、きっぱりやめた。俺はな、自分の破滅を知っている」
「え……?」
「俺は流転輪廻の呪詛を受けている」
「流転、輪廻……の、呪詛?」
知らない。
そんなこと、ゲーム本編はおろか、設定集やコミカライズにもなかった。
もしかしたらファンディスクで追加された設定なの?
「『神』を目指し続けた……お前のいう前世と少し違う、何万回と繰り返した記憶がある」
「──……」
「まるで、人生をある地点からやり直し続けるような……そういう呪詛があると、書物を紐解いて知った」
なんかそれ、ちょっとデジャヴ。
いや、私が経験したことじゃないけど……ううん、したかも。
だってさ、なんか、一瞬だけど。
セーブとロードみたいだなぁ、って思った。
「それが俺の宿業と受け止めていた。だが、今この世界は違う。お前がいる。俺は運命を繰り返した果てに、やっと『最愛の魂』と巡り逢えた世界だ」
レジナルドが立ち止まった。
私もぴたりと、足を止める。
「惜しくなった。お前と触れ合ううちに、俺は、人として生きて、人として死にたくなった」
──ファンディスクをプレイしていないから?
転生してから、いろんなレジナルドを知った。
きっと、ただのプレイヤーとして遊んでいたら──野心よりも、愛を選んだ彼を、どう解釈していたんだろう。
前世の私は……。
「俺は、死ねるだろうか。人として」
「大丈夫!」
私は、ぎゅっとレジナルドの手を握った。
本当は抱きつきたかったけど、肩にノアを担いでいるからできなかった。
早く運ばなきゃと思うけど、一言だけ。これだけ伝えさせて。
「レジナルドは、人間だよ。ちゃんと生きてるよ!」
破滅なんて、絶対にさせない。
私は、レジナルドと生きていく。
人として──絶対に。
もう何も、迷ったりしないよ。きっと。
私も、あなたも。
でも、選択の時は刻一刻と迫っていた。
待っては、くれなかった。