表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

37/74

35. 軍師(?)ベアトリス誕生

「今、マリアンヌ様は学園に行かない方がいいと思います」


 二人きりの応接間で、ベアトリスが開口一番にいった。

 朝一で直接マラルメ家に手紙を届けさせると、その場で「お昼に伺います」と返事があった。

 そして、本当に来てくれた。



 行動力、半端ない……!



「私の噂が広がっている、ということね」

「はい。マリアンヌ様がご想像なさっている以上に、お立場は悪くなっています」


 噂とは、婚約破棄と断罪のこと。

 いや、それら自体は事実だ。

 ラファエルが平民の娘・アニエスと恋仲になり、婚約者だった私を捨てた。

 しかも、アニエスを害した罪で、追放処分まで宣告した。


 レジナルドがその場で求婚してくれたことで、婚約破棄の不名誉はひとまず拭われた。

 追放処分も取り消しとなって、今や私は、モグリッジの皇帝の婚約者だ。


 しかし、一度ついた『経歴の傷』というのは、なかなか消えないらしい。

 たとえ本人は平気でも、アズナヴール家の両親や側仕え、そして友人知人にさえも影響を与えかねない。


「でも、堂々としているのが一番だと思います。マリアンヌ様」


 ベアトリス・ド・ラ・マラルメ。

 彼女の前世は、私のかつてのジャンル友達。

 でも私の死がきっかけで、彼女は『BELOVED SOUL』から離れてしまった。そのため、この世界の知識は私よりも少ない。


 だが彼女は、攻略対象のノア・バーリフェルト……前世の自身の最推しと、恋仲になった。

 ゲームではモブだったのにもかかわらず、だ。

 それはベアトリスとして、真摯にノアと向き合ったからなんだと思う。

 私のように、中途半端な前提知識に翻弄されることなく……。



 今、私達は、マリアンヌとベアトリスとして対話している。

 前世のことはあまり表にしない、と二人で約束した結果だ。

 とはいえ、確認したいこともあるので、今回は協力してほしかった。


 ノアを通じて、アニエス達と話す機会を作りたい。

 話し合いの場を学園にすれば、向こうもそこまで警戒しないはずだ。



「うーん、やっぱり我が家に呼ぶ方がいいのかしら」

「ノアは話を聞いてくれると思いますが……彼は今、アニエスさん達と距離を置いているようで」

「ええ……? そうなの……?」

「はい……ノアは、何もいいませんが……」


 ベアトリスが視線を伏せた。

 私は察した。


 ベアトリスは、マリアンヌの親しい友人。


 アニエスは今、ラファエルと恋仲になっている。マリアンヌの友人と交際しているノアには、複雑な思いがあるのかもしれない。

 あるいは、ノアの方が遠慮をしている可能性も。


「ごめんなさい」


 原因は、私だ。

 前世から好きという記憶と感情を引き継いで、相手にも想われて……浮かれていた。

 守られているばかりの存在で、好きな人との未来ばかり見ている。

 マリアンヌの悪評は、すなわち、ベアトリス達にも影響を与える。

 そんなことすら、思い至らずにいたんだ……。


「いえっ! マリアンヌ様が謝ることではありません!」

「貴女は優しいから、そういってくれるのね。……協力してほしいなんて、勝手すぎました」


 私は、ベアトリスに頭を下げた。

 そうだ。

 正面から、何度でもチャレンジすればいいじゃないか。


「そうです、勝手すぎます」

「ベアトリス……」




「勝手に諦めないでください! 私にお任せください!!」




 お? え? おぅ??


 戸惑っていると、ベアトリスが持参した大きいバッグをどーんと持ち上げた。

 それ、何のために持ってきたのかずっとわからなかったんだけど。




「名づけてっ! ドッキドキ学園潜入☆バッチリ変装大作戦ですわ!!」




 ベアトリス!

 前世のノリが出てきちゃってるよ!!

 そして作戦名、捻りもなくまんまだよ!!



「どうぞ、私のことは軍師ベアトリスとお呼びください」


 三国志じゃん!!

 そういや好きだったよね?!




(まさか、そのバッグの中身って……!!)



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ