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13. 前世編:オフ会と友情とピザと

 『めかぶ大好き娘』が異世界転生をする少し前の、日本。


『戦い? 違うな。これは、蹂躙と呼ぶのだ! 愚か者ども!』

「ぎゃああああああ!! 陛下ぁー! 蹂躙してぇぇーーーー!!」


 私、『めかぶ大好き娘』は思う存分絶叫した。

 何せここはカラオケルーム。マンションでは絶対にできない。


 『BELOVED SOUL』愛好の友達2名と一緒に、ゲーム機を持ち寄って(もちろんお店の許可は貰っている)大画面でプレイ中だ。

 フリータイムを利用して、今日はオールナイトオフ会なのだ。

 今、私がやっているのは、もちろんレジナルド戦。開幕の台詞で私は叫んだ。


「あっはは、めーちゃんは相変わらずレジナルド推しだねぇー」

 友人Aこと、ラファエル推しの『あいこ』ちゃん。

 ちなみに「めーちゃん」とは、私の愛称。めかぶ大好き娘だと長いからだ。


「いやー、めちゃくそ愉快だわ、人が狂っている様子を見るのはな!」

 ワイングラス片手に笑っているのは友人Bこと『芭蕉』ちゃん。ノア推し。


 おいおい、あんたらだってさっきまでそれぞれ狂ってたやないかい。


「だってえげつなくて……油断するとマジで蹂躙される……心臓もたん……」

「アニエス最強プレイで高難易度5ターンで沈めた最速記録の持ち主がいうなよ」

「あれは自分もびびった。でもノアの開幕結界術がないと事故るし、ラファエルの聖属性付与を入れてのダメージだから、純粋に最強プレイでもないんだよね」

「「うちの推しのおかげじゃん!!」」


 そして三人でゲラゲラと笑い合う。

 いくら大声で笑ったって、誰も文句はいわない。

 朝なんて来てほしくない。いっそもうみんな一緒に暮らそ?



 『BELOVED SOUL』シリーズは乙女ゲームだが、戦略シミュレーションゲームとしてもかなり力作なのだ。

 もっとも、恋愛だけを楽しみたい人のために、戦闘スキップや難易度設定も用意されている。

 私は普段は難易度:中にして遊んでいる。低は楽だけど、アイテムのドロップ確率やキャラとの好感度上昇率がよくない。

 それに低だと、剣豪皇帝レジナルドの特殊技が一部封印されてしまう。

 最推しのスキル全てを見るためには、中以上じゃないとダメなのだ。



 剣豪皇帝レジナルドの固有スキル(一部)

 

 『雲消霧散』……低確率で物理攻撃を無効化。

 『電光石火』……ターン開始時に、通常と別で1回行動をする。

 『雌雄一対』……常時全体2回攻撃(陽剣・陰剣の二振りが武器)。

 『()(ざん)()()』……全体にステータス:気絶付与の無属性魔法攻撃。

 『活殺自在』……単体に防御無視の貫通ダメージ。一定確率で即死。※

 『剣豪皇帝』……全体に連続3回の物理攻撃。必中。

 『魔神降臨』……倒された後、魔属性で復活。HP全回復+全能力値上昇。



 字面も効果も、強っ。

 ……と思うけど、攻略法はハッキリしている。

 ※は難易度:低だと封印されている。HPも低くなるので安心。


 占星師のノアが開始時に結界を張れるので、それで『電光石火』での攻撃を凌ぐ。

 レジナルドには命中率を上げるスキルがないので、とにかくまずは下げる。

 だけどやりすぎると、必中の全体攻撃『剣豪皇帝』の発動率が上がるので、適時、攻撃力低下の方に切り替える。

 盾役にヘイトを集めさせながら、こまめに回復して、猛攻に耐えつつHPを削っていく。

 事故が多くて危険なのは『電光石火』からの『無慙無愧』。気絶効果は結界ではレジストできない。

 これが来ないだけで勝率は一気に上がる。


 そして『魔神降臨』は、魔属性付与でさらに攻撃が強くなる。

 でも実はレジナルド本人は無属性で、特定の属性による強弱が関係ない。

 むしろ魔属性がつくことで、聖剣士のラファエルの聖属性付与術が味方にかかってからは、一気に弱体化してしまう。



 かなり強いせいで、戦い方の正解がハッキリしているのだ。

 でも初見殺しが多すぎるので、攻略本にはしっかりと前述の戦い方が書かれていた。

 だが私は初プレイでは攻略本を見ないので、自力でこの戦い方に辿り着いた。




「はー……御二方御清聴感謝感激。さて、沈んどくか」


 レジナルドの圧倒的蹂躙プレイ(ボイスとかカットインとか)をご満悦で堪能した私は、全て『防御』を選んでターンを終えた。

 そして必中攻撃で、見事にアニエス達は戦闘に敗れたのだった。


「「な ぜ こ ろ し た」」

「だってぇーー!! 敗北時の特殊台詞は回想機能に残らないんだもんー!!」


 ラファエルとノアはちゃんと戦線から外しましたよ。ええ。

 でもさ、理不尽じゃん。君らの最推しと、私の最推し。敵、味方。

 こうなる運命なのよ?



『息が苦しいか? 俺が手を貸してやろう。駒鳥姫殿』



「くっはぁぁ!! 斬られたあああああ!! あざまーーーーすっ!!」

「「めーちゃんうっせぇよ!!」」


 それでも直後にまた笑い合うのだから、二人とも私の大事な友達だ。

 結婚式に呼んだら、どういう縁なのか説明に悩むんだろうけど。

 たとえ将来、ジャンルが変わっても、SNSのアカウントが変わっても……。


 こうして集まって、馬鹿みたいに笑っていたいな。





「あ、スケブにレジナルド描いていい? ラファ×アニも」

「「芭蕉ちゃん、貴女が神か」」

「じゃあちとモデルしとくれー。アナログ久々だー」



 アカウント名『芭蕉』。

 同人壁サーの神絵師である。



 私と『あいこ』が自分史上最高の決めポーズを取った瞬間、店員が隣の部屋と間違えてピザを持ってきたのも、いつか良い思い出になるよ。きっと。



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