現状を見つめて(2)
「傭兵ギルドか」
傭兵ギルドは冒険者ギルドの機能の一つだったものが独立したものだ。
元は冒険者が身持ちを崩して街道を荒らす盗賊になってしまう問題を解消するために、ギルドから指定された依頼を受けさせてそれを支援するという、いわゆる救済制度だ。この試みが成功した結果、街道を襲う盗賊の脅威度は大きく低下した。その後この救済制度は規模を大きくして、冒険者ギルドの中には置いておけなくなり独立した。それがいつの間にか傭兵ギルドと言われるようになり、今では冒険者ギルドに次ぐ勢力の一つとなっている。
「でも僕の目的はダンジョンの探索だよ。数合わせにしかならないんじゃない?」
傭兵ギルドはその生い立ちから実力のない冒険者などが多く集まる場所だ。実力があるのなら冒険者として大成していて傭兵ギルドにはお世話にならないだろう。だからアンナの言うように雇うだけならいいかも知れないが、相応の実力がなければ意味がない。
「ミアンさん傭兵ギルドについてあんまり知りませんね? 傭兵ギルドの人達は冒険者ギルドから流れてきた依頼をこなす時以外は、ダンジョン探索で生計を立てている人がほとんどなんです。それに冒険者が肌に合わなくて傭兵をしてる人も居ますから、かなりの実力者だって抱えこんでるんですよ」
「そうなんだ……。知らなかったな、アンナは詳しんだね」
「なんたってこの酒場の看板娘ですから! このくらいの情報は持っていますよ」
看板娘であることは関係ないんじゃ……。
でも確かに彼女の言うことが正しいのなら、僕の目的に合った人も見つかるかもしれない。一度行ってみよう、他にやれることもないし。
「そっか、ありがとうアンナ。傭兵ギルドに行ってみるよ。」
「そうですか、参考になったみたいで良かったです」
「僕もまずは一歩踏み出さなきゃね」
僕が居なくなった後の【流星の軌跡】の話は僕の耳にも入ってくる。
どうやらさらに最新階層の更新を進めていたらしい。僕が宿屋に居たこの三日間の内にだ。
――追い付かなきゃならない、絶対に。必ず追い付いてみせる
「……」
「……? アンナ、どうしたの?」
気付けばアンナがジッとこちらを見ていた。
「どうやら元気になったみたいですね。良かったです」
「え?」
「三日間も部屋に閉じこもりっ放しで少し心配していたんです。部屋の前にご飯を置いたりもしたんですが、それにも手を付けていなかったみたいですし。それが下りてきたと思ったら、何かずっと悩んでるし……。」
「心配かけてごめん。でももう大丈夫、アンナのお陰だよ」
「……そうですか。でも何か悩み事があったらいつでも相談してください。一人で悩んでても仕方ないんですからね!」
「ありがとうアンナ、次からは相談するようにする」
「はい、素直でよろしい」
「――アンナー。こっち手伝ってくれー!」
「はーい。じゃあミアンさん、父さんが呼んでるから私はこれで。頑張って下さいね!」
店主の親父さんに呼ばれてアンナは仕事に戻っていった。親父さんの視線がいつになく鋭い気がするが気のせいだろう。
親父さんの警戒度は増したかもしれないが、アンナのお陰でこれからの方針は大体定まった。
――傭兵ギルドに行くとしよう。




