ハーピーの恩返し
今年の書き納め~。
なろうに投稿した中では短編は初めてかな?
とある小国の更に辺境の村に、一人の青年が住んでおりました。
ある日、青年が森の中に仕掛けた罠を見に行くと、見慣れない生き物が罠に足を挟まれていました。
「なんだろう。人のようだけど、鳥みたいな姿だな」
それは、ハーピーと呼ばれる魔物でしたが、村から出たことのない青年には分かりませんでした。
「魔物……かな? 退治するべきなんだろうけど……」
必死に逃げようとするハーピーの泣き顔を見た青年は、その魔物を殺すことは出来ませんでした。
怯えるハーピーに武器を捨てるところを見せた青年は、優しい手つきで罠を外してやりました。
「もう大丈夫だよ」
けして安くはない傷薬を付けてやると、ハーピーは不思議そうに青年を見た後、笑顔になって飛び立っていきました。
「いいこと……だよね」
ハーピーを見送った青年は、森を周り、狩りをして家に帰りました。
その日の夜、何者かが青年の家の扉を叩きました。
「えっと、どちらさまですか?」
小さい村では、全員が顔見知りなので、わざわざ戸を叩くような相手は思い付かなかったのです。
「急に大雨に降られて……しばらく雨宿りさせてもらえませんか」
そこには美しい少女が立っていました。冒険者の類いだろうと、青年は考えました。近くの森を目的にする冒険者は少なくないので、宿屋もないこの村ではこうしたことがたまにあるのです。
「どうぞどうぞ。何もないですけど、お茶くらいは用意出来ますよ」
その少女は雨宿りと言いましたが、その晩の雨は一向に止まなかったので、青年は自宅に泊めることにしました。
翌朝、雨はすっかり上がっていました。しかし、少女は何か恩返しがしたいと言いました。青年は構わないと伝えましたが、結局は押し切られ、狩りを手伝ってもらうことになりました。
「すごいですね。僕とそう変わらない年でしょう?」
少女は素晴らしい風の魔法の使い手でした。索敵から攻撃、いざというときの防御など、全てにおいて優秀だったのです。
狩りから戻った後で、青年は少女に料理を振る舞いました。青年としてはお礼のつもりでしたが、少女はご飯の代わりに翌日も手伝いをすると言いました。
もちろん青年は断りましたが、少女の悲しそうな顔に根負けしてしまいました。青年としても、まんざらではなかったのです。
次の日から、二人は一緒に狩りを行うことになりました。青年の経験と少女の魔法で、辺りでも1番の狩人として他の村でも知られるようになりました。
そんなある日のことです。青年の家に村長が訪れました。
「村の近くに大鬼が現れた。村一番の狩人である二人に、狩猟を頼みたい」
大鬼は魔物の中でも強力な部類で、数十人がかりで挑むべきとされています。その指標は知らなくても、大鬼の危険さは青年もよく知っていました。
「この村に大鬼と戦える者は他におらん。引き受けてはもらえないか」
「分かりました。どこまで出来るか分からないけど、やれるだけやってみます」
準備を整え、二人は森に入っていきます。普段よりも奥の方へ進んでいくと大鬼はすぐに見つかりました。鹿を捕まえ頭からかじっているようです。
「今の内に仕掛けよう」
二手に分かれ、青年は矢を、少女は魔法を大鬼に撃ち込みます。しかし、矢は弾かれて、風の刃も僅かに傷をつけるだけでした。不意討ちを受けた大鬼は、警戒して周りを見回しています。
「どうしよう。私が魔法を打ち続ければなんとかなるかな?」
「君1人だけに押し付けられないよ。矢がダメならこれがある」
青年は腰に下げた大振りの鉈を手に取りました。これならたとえ切れなかったとしても大鬼に痛みを与えられるかもしれません。
「行くよ、3,2,1……!」
青年の合図で飛び出し、二手に別れて大鬼を挟み撃ちにします。
「風よ、斬り裂け!」
少女が注意を引き━━━
「うぉりゃあ!」
━━━青年が鉈を叩きつけました。
グオオオオォォォォ!!!
「やった、効いてる?」
勝機を見出だせたかに思えた直後、二人ともが予想していないことが起こりました。
大鬼は痛みを感じている様子も見せず、青年を捕まえては無造作に放り投げてしまったのです。
「かはっ!?」
強く地面に叩き付けられて身動きが取れなくなった青年に、少女が慌てて駆け寄ります。
「大丈夫!?」
「う、うん……。生きてはいる、みたい」
息も絶え絶えな青年の姿を見て、少女は何故か一瞬だけ苦しそうな顔をすると、覚悟を決めたように表情を引き締めました。
「ゴメンね。もう一緒には居られないけど…………ありがとう」
大鬼が迫るこの瞬間に一体何をしようというのか。不思議に思う青年の前で、少女は単身、大鬼に向かっていくではありませんか。
「ダメだ……逃げて…………」
青年の言葉も虚しく大鬼の拳が少女に向かって振り下ろされました。
少女の身体が潰されるかに思えたとき、何者かの影がそこから飛び出して、空に舞い上がりました。
「あれは……そうだ、前に見た……。そうか、そうだったんだ…………」
青年には、その影が少女の姿と重なって見えました。少女の正体は、以前助けたハーピーだったのです。
そこからの戦闘は、正に一方的なものでありました。ハーピーが――――少女が生み出した風は、大鬼の体を容易く切り刻み、僅かな時間が経つ間には、すでに決着はついていました。
「あっ、待って……!」
少女は――――ハーピーは、青年に一度だけ寂しそうな表情を向けると、そのまま山の方に飛び去ってしまいました。
その後、痛む身体と心を押して青年が村へ戻ると、村人達が青年を出迎えます。
村人達は、大鬼が討伐されたことを大層喜びましたが、少女がいないことを不思議に思い、青年に尋ねました。
「彼女は死んではいません。でも、もう一緒にはいられないと……」
そんな1日が過ぎてから数年後。とある山の中に、あのときの青年の姿がありました。
彼は、微かな音や風の動きを頼りにして、何かを探している様子でありました。
「…………! 見つけた!」
青年が駆け出していった先には、空を飛ぶ1つの影がありました。それが何だったのかは、もちろん語るまでもありません。
あらすじの最初の一文は、例の“大いなる本”の一片をかなり意識した感じです。
元ネタ分かる人、きっと居るよね?




