第52話 日常を当たり前へ
翌朝、8時にセットしたアラームで目を覚ます。
昨日、夜遅かったせいか、まだ睡魔が残っているが、ここで二度寝したら絶対に起きられない自信がある。
俺は、眠い目を擦りながらも体を起こした。
「おはよう……」
「兄さん、おはようございます」
紗良は洗面所で洗顔を終えた所だった。
「よく、ちゃんと起きれるな」
「朝は得意ですから!」
紗良は若干のドヤ顔で言った。
そんな顔も可愛いのはずるいぞ。
「俺も顔洗うわ」
「これ」
そう言うと、紗良がタオルを渡してくれた。
「おう、ありがとうな」
タオルを受け取ると、それで顔を拭いた。
「さて、朝飯はどうする?」
「そうですね。向こうに着いてからでもいいんじゃないですか?」
「まぁ、それもそうか」
準備して浅草に着く頃には、お昼前くらいになるだろう。
どうしてもお腹が空いている訳では無い。
お昼までは食べなくても大丈夫だろう。
「じゃあ、準備するか」
「はい!」
それぞれ、着替えるために部屋へと戻る。
今日の俺は白のワイシャツに黒のスキニを履いた。
俺としては珍しい、白のワイシャツだ。
「お待たせしました」
俺の方が早く準備が終わったので、リビングで待っていると、紗良も階段を駆け下りてきた。
今日は、薄いピンク色のワンピースに白の小さな鞄を斜めにかけていた。
うっすらだが、メイクもしているようだ。
「いや、そんなに待ってないからいいよ」
「どうか、しました?」
思わず見とれてしばらく言葉が出せなかった。
我が妹ながら、本当に美しいと思う。
「白シャツは珍しいですね」
紗良が俺の服装を見て口にした。
「ああ、たまには気分も変えたいからな」
今日は、何となく白の気分だったのだ。
毎日暗い色のシャツでは飽きも来る。
「さて、行こうか」
「はい!」
2人は家を出ると駅に向かって歩く。
時間にして10分ちょっと。
俺にとっては、もうすっかり見慣れてしまった光景である。
「不思議ですね」
「ん? 何が?」
紗良が唐突に口にした。
「こうして、兄さんとこの道を歩くのが日常になっています」
「あぁ、確かにな」
ほんの数ヶ月前までは、こんな事になるとは、夢にも思っていなかった。
まさに、人生はどう転ぶか分からないという事だ。
「俺は妹が出来て嬉しいぞ」
「私も、兄さんと過ごすようになってからは、毎日が楽しいです」
そう言って、紗良は微笑んだ。
目を細めて笑う、その表情はとても優しかった。
「それは良かった。俺も楽しいぞ」
そんな事を話しているうちに駅へと到着した。
交通ICカードで改札を通る。
そして、俺は紗良2人で電車が来るのを待った。
この日常がずっと続く事を願いながら。
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