事故物件
百物語十話になります
「俺が住んでる部屋なんだけど…なんか調べてみたら事故物件らしいぜ!今日遊びに来いよ!なぁ!」
大学の講義を終えると、俺は友人のケイスケが住むマンションへ向かった。俺は幽霊なんか信じていないし、事故物件なんて世の中にいくらでもあると思っていたから、特に気にしていなかった。
「ここが俺の部屋だ」
ケイスケが部屋のドアを開けると、中から同い年くらいの女の子が出迎えてくれた。ケイスケは、まだ彼女と同棲しているらしい。
「どうぞ!入って!」
女の子は俺たちを部屋へ招き入れると、リビングに置いてあるソファへ座った。
「あのソファが置いてある場所、女の腐乱死体が放置されていた場所なんだって!」
「おい…座ってるのに言うなよ…」
ケイスケはすぐに服を着替えると、部屋の中を案内しながら事故現場と思われるキッチンや風呂場を俺に見せてきた。
「あのキッチンでは自殺した爺さんが…風呂場ではバラバラにされた女の死体が見つかったらしいぜ…有名な事故物件サイトに書いてあったんだ!すげぇだろ?」
「お前なぁ…」
死体が放置されていた場所を楽しそうに解説するケイスケに半ば呆れていたが、特に変わったことも起きなかったので、2人揃って近くのコンビニへ晩御飯を買いに行くことにした。
「酒も一緒に買うか。彼女さんの酒も買った方がいいかな?」
ケイスケが部屋の電気を消すと、玄関で待っている俺へ笑いながらこう言った。
「彼女とは別れたよ。今は1人暮らし。あいつのこと思い出しちゃうからそういうのやめてくれよぉ…」
………
(じゃあ、あの女は?)
真っ暗になった部屋の奥から、無表情の女性が俺たちを静かに見つめていた。