仲間集め
「あんたこのままじゃダンジョンに参加できないよ」
ポニーおばさんは短くなったタバコの火を消した。
「え?なんでよ。私もう5年前くらいだけど、その時はダンジョンミッション参加できてたじゃない!」
「あんときは、母さんがいたじゃない。あなた知らないかったかもしれないけど、ダンジョンは1人でじゃ参加できないきまりなんだよ」
ええ?1人じゃ参加できない?
「あなたはずっと、お母さんと一緒だったからダンジョンに参加できてたの。基本的にダンジョン攻略は危険だからね。1人で行くことは禁止されてるの」
「そうだったんだ」
私、ずっとお母さんに守られてたんだ。
「それともなに?あなた一緒に来てくれる仲間でもいるの?」
一緒に来てくれる仲間…パーラーはもちろん無理、別れた男だし。あと私の知り合いと言えば…爺やくらいしかいない。父さんは役に立たないし、爺やはもう初老のじじいだし論外。
いない。
ずっとパーラーのために家にこもって王族になるための鍛練ばかりしてきたツケが来てるわ。
私は人脈がない。
「あなた、友達いないでしょ」
なんでわかるの?ポニーおばさんは!
今日あったの5年ぶりでしょ!?
「そういないの、どうしよう」
「そんなことだろうと思ったよ」
ポニーおばさんは奥の部屋へと消えていった。
どこにいったのだろう?とにかく待つことにした。
周りで他のダンジョン参加希望者がワイワイガヤガヤと騒いでいる。
そうか、今まで狭い世界で生きてきたけど、世間ではダンジョンがブームなんだ。
私が10年前に参加していた時とは違って、どことなく殺伐した空気は薄くて、ゆるい空気感が流れている。
「あった、あった。ちょうど一枚余ってたよ」
ポニーおばさんが奥の部屋から戻ってきた。
手にはペラペラの紙を一枚持っている。
「これがね、ペーパーフォン。通称パー」
「パー?」
「あらやだ、あなたパーも知らないのね」
恥ずかしながら私はずっとパーラー一筋だったのだ。
「これはね、魔力で人とお手紙が書けるのよ。ここに書いた文字は、魔力で相手のペーパーフォンに映し出される。これで遠隔地にいても連絡が取れるってわけよ」
「そんなものが本当にあったんだ」
ララは本で勉強はしたことがあったが実際には知らなかった。
「仲間募集って書いたこの普通の紙の下にあなたのパーのIDを書いてっと」
ポニーはその紙を掲示板の1番目立つ真ん中に貼った。
「これであなたに興味のある人がこのID宛に連絡してきて、一緒にダンジョンにいける仲間から連絡が来るってすんぽーよ」
ララはむしろ好都合だと思っていた。1人ではダンジョンに行けないということに。
なぜなら彼女の目的は恋愛感情になることだからである。
しかしこの後、このIDに連絡してくる人物も只者ではなかったのである。
ララ同様、普通の理由でダンジョンに参加しようとはしていない人物なのである。