ルイーゼ・ララは恋愛感情になりたい
パーラーの家を出てから、ララはまっすぐ家に帰る気にはなれなかった。
これから家に帰っても、爺やがいるだけで何もないから。
今まで私はパーラーをいずれ好きになって、恋愛感情になれるものだと思っていた。
パーラーのためにと、たくさん本を読み、魔術を勉強し、体の鍛錬も忘れなかった。
でも、どこか虚しさがあった。
それはやっぱり、私がパーラーを好きではなかったからだろう。
パーラーのために、ずっと一生懸命やってきたけど、心のどこかで本気になれず、私自身の貴族ランキングもどんどん落ちて今では119位。
パーラーも結局、地位が好きだっただけみたいで、他の有力な貴族と政略結婚をするつもりなんだろう。
歩きながら、さっきのパーラーの言葉を思い出してみると、ララは不思議と気分が高揚していた。
パーラーのやつ、私を見捨ててもっと地位の高い女と結婚するつもりなんだ。
馬鹿だな。
でも、二年付き合ったわりにそんなにムカついていない。
その理由は、ハッキリしている。
パーラーに恋愛感情じゃなかった。
それだけ。
私ももう、22歳。そろそろ本当の恋愛をしたい。
いや、しなければならない。そうよね、お母さん。
いつのまにかララは5年前に亡くなった母親の墓前に来ていた。辺りは緑の芝生一面に覆われ、春の小風が爽やかにルルの髪を靡かせる。
「お母さん、ごめんね。また私、振られちゃった。これで3人目だね」
ララは母親の墓に手を合わせる事なく、腕を後ろで組んで、語りかけるように言った。
まるで、そこにまだ、母親が生きているかのように。
「お母さんと約束したのにね。絶対素敵な人を見つけて、素敵な恋愛をするって」
ララは涙を流していた。パーラーと別れた事が悲しかったわけではない。亡くなった母親との約束をまた果たせなかった自分が不甲斐なかったのだ。
「お母さん、私、これからどうしたらいいんだろう。婚約破棄もされちゃったしね」
ララは少し笑って、墓を撫でた。冷たかった。
「もう帰るね、お母さん」
その時、後ろの方から話し声が聞こえてきた。
「お婆ちゃん、天国で見守ってくれてるかい?今日はお婆ちゃんに俺のお嫁さんを紹介しにきたんだ。こちら、ダンジョンで出会ったコーラ。俺の大好きな女性さ」
そこにいたのは若いカップルだった。青少年とショートヘアの女。2人とも嬉しそうにハニカミながらお墓を参っている。
ララの頭の中に彼らの話すワードが引っかかった。
ダンジョン…出会った…大好き…?