2人の男
「じゃあ、僕はダンジョンを出るよ、バイバイ2人とも」
「じゃ!バイバイ、ララ。久しぶりにあっておもったけど、綺麗になったね!」
「え?なによそれ!どーゆー意味よ!?」
「別に、そのまんまの意味だよ。じゃあね」
ヤコが2人が来た道の方へ歩いて行き、やがてその背中が闇の中へと消えていった。
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「まさか、ララのやつに合うとは思わなかったな」
地面に生える短い草木を踏み締める音だけが響き、さっきの喧騒が嘘のようだった。
ヤコはここ三日間ずっと一人で探索活動をしていた。
「人と話すの久しぶりだったけど、ララと話すのは楽しかったな。ララも元気そうで安心したな」
植物のことが大好きでこの探索活動も全く苦ではなく、楽しいばかりなのであったが、先程の人との触れ合いを終えたヤコは少し物悲しい気持ちになっていた。
今までヤコは一人で平気だと思っていたし、実際そうなのであったが、ララとの人間的な会話によって人との会話の暖かさを思い出してしまった。
異常な植物好きのせいで他者から敬遠され、その恵まれた頭脳と容姿とはかけ離れた学生生活を送っていたヤコであったが、ララだけは異なっていた。
ララだけはヤコのその植物に対する知的好奇心の異常性に興味を示し、コミュニケーションを取っていた。
そのおかげもあって、ヤコはララがいなくなってからも多少の社交性を持ち合わせるようになり、人と普通のコミュニケーションを取れるようになったのである。
「やっぱり、ララと植物学について話してる時間は楽しいな。久しぶりに時間があっという間に感じたよ」
ヤコは1人、ダンジョンを後にした。
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「じゃ!私たちも先に行きますか!竜族に会いに!」
なんだか、ララの機嫌が良くなっているように思う。
俺と2人の時はあんな声のトーンではなかったが、ヤコと会ってから急に明るくなった。
女性に対する恐怖心はまだあるが、ララに対しては少し緊張しなくなっている。
そう思っていた矢先であった。
ヤコという旧友と会い、テンションに変動があったララに対し、クルーガーは少しの苛立ちと不安を覚えていた。
自分でもその意味は完全に理解していなかった。
ただ何か不安であった。
「じゃあ、クルーガーついてきて」
地図を覚えたララが先陣を切ろうとした時、クルーガーがララを追い越した。
「ちょっと!あんた道わかんないでしょ!」
「僕だって少しは覚えてますよ」
「え?なんで怒ってるの?」
「別に怒ってないですけど」
「怒ってるように見えるけど……あんたに着いていけばいいの?」
「最初らへんくらいは分かります」
クルーガーは何かの感情を踏み殺すように歩いた。
「張り切ってるところ悪いんだけど、そっち行ったら行き止まりよ」
「知ってますよ」
慌ててクルーガーはUターンした。
「知ってないでしょ」
ララにはクルーガーの感情が全く分からなかった。
こんな男と吊り橋効果があったとしても、恋愛感情なんてものになれるのかが不安になってきていた。




