恋愛感情になりたい【理由】その1
ララはお母さんが大好きだった。
お父さんは物心ついた時からいなかったけど、ララは寂しくなかった。
強くて優しいお母さんがいたから。
そんなお母さんと行くダンジョン探索も大好きだった。
言葉を巧み操る人鳥、畑を耕す小さなゴブリン、草原を駆け巡るケンタウロス。
お母さんは私に未知なる世界を見せてくれた。
そんなお母さんに褒められたくてララは魔術の勉強を頑張った。
お母さんの血を引き継いでいたのか、はたまたララの努力のかいか、おそらくその両方のおかげでメキメキと魔術の実力を上げていった。
魔法を学び、それをお母さんとダンジョンで実践する。
そのサイクルを繰り返すうちにララはいつの間にか「貴族ランキング1位」になっていた。
別にそんなもの目指してはいなかったが、お母さんに
「ララ凄いわね。やっぱりララは私の娘ね」
強く抱きしめてくれたので1位になってよかったかなと思った。
幸せだった。日々、楽しかった。あの日が来るまでは。
****
「このミッションはちょっと次元が違うのララ。ごめんだけど今日は一緒に行けないわ」
「なんでよ、私だって強くなったよ。一緒に行く!絶対一緒に行く!」
お母さんの顔つきがその日だけ違った。どうやら相当難しいミッションを王族から言い渡されたらしく今回ばかりはララとは行けないと言う。
「もう…庇いきれなくても知らないからね」
ララは無理を言って付いて行った。
そこまで深く考えていなかったのだ。このミッションの難易度について。
私も強くなってるんだ!そんな自負があったのだ。
****
「お母さん!!!!」
「早くあなたは帰りなさい!!まだ空間魔法一回分の体力はあるでしょ」
「ごめん、私のせいで。私が付いてきちゃったから…」
魔法を使うと数コンマのインターバルが私にはある。
まさかその数コンマを見抜いて攻撃してくる魔物がいるなんて……
「早く戻りなさい!」
「でも、お母さんが…」
「私はまだやる事があるの」
お母さんは傷だらけの体を動かして私の頭を撫でた。
手は暖かかった。
「ララ、魔法もいいけど、少しは他の人とお話ししなさいね。この世界は1人じゃ生きて行けないから。あと、着たものはちゃんと畳んで元の場所に戻すこと。爺やに頼ってばかりいちゃダメよ。自分で掃除洗濯もするのよ」
「ちょっと、何言ってるの?お母さん」
「あとは……そうね。恋愛してみなさい!ララ。恋愛はね、とっても悲しくて、とっても楽しいものなのよ。だからね、あなたに足りないものをきっと教えてくれるわ」
「なになに…嫌だよお母さん。一緒に帰ろうよ」
お母さんが私の胸をポーンと押した。
後ろでいつの間にか、お母さんの作った空間魔法の扉が開いていた。
ララはとっさに手を伸ばした。お母さんを触れるために。
でも、届かなかった。
「じゃあね!ララ、あなたの母親で良かったわ!」
お母さんが笑顔で手を振っている。
ララはそのお母さんの顔が今でも目に焼き付いて離れない。