ジェルムーのジュース
まさかSランクミッションに参加するための条件があるなんて夢にも思っていなかった。
「Sランクミッションはかなり危険だからね。認められた一部の人間にしか出来ないようになってるの。その境目がランク二十位以内って感じね」
「確かに考えてみれば、誰でも参加出来たら危険よね」
「ごめんね、もっと先に言えば良かったんだけど、せっかくあんたがやる気になって前向こうってときに止めるようなこと言いづらくてね」
ララはそこまで頭が回らなかったことを少し恥じた。
「いや、ポーラは悪くないよ!普通に考えれば気づく事だったんだよ」
そう、普段ならこれくらい考えつくはずなのに、クルーガーとの対面の事ばかり考えてしまっていた。
「クルーガーどうする?」
ララは後ろで黙って聞いているクルーガーに尋ねた。
「僕はランクを上げたいんですけど、どうしたらいいですか?」
クルーガーは弱々しい声で聞いた。
まぁ、高額報酬のミッションに参加出来ないのは残念だけど、農家をやるよりは稼げるだろうし、金さえ稼げればSランクだろうがGランクだろうがなんでもいいよ
という本音を隠して聞いた。
「そうねぇ、ランク外のあなた達が参加できるミッションはかなり限られてるのよねぇ。例えばコレとかどう?」
ポーラがパンフレットを指差した場所に書いてあったミッションはF難度であった。
「Fランクミッション:ジャルムーのジュース」
「ジャルムーのジュース?これはどんなミッションなの?」
ポーラが指差したパンフレットには可愛らしいスライム状の生き物と2人の男女が草原に座ってジュースを飲む絵が書かれている。
「これはまぁ、ダンジョン参加者が1番初めにやるミッションかな。ジャルムーって言う、そう、ここに書かれてるプニプニしたモンスターを倒してジャルムーのジュースの素材を取ってくるってミッションよ」
「へぇ」
ララは絵を見て思う。
これはただのレジャーじゃない?
「ジャルムーはダンジョンの入り口付近にいるから危険も少ないし初心者にぴったりのミッションね」
「これはどこのダンジョンなの?」
「えーっとね、ちょっと待って、今調べるから」
[探索魔法 ソートブック]
ポーラの後ろにある本棚から一つの本がひとりでに飛び出し、該当のページを開いた状態で空中に浮遊した。
「やるねー、ポーラさん」
「たまには魔力使っとかないと鈍っちゃうからね」
ポーラは開かれたページを読んだ。
「あら?偶然ね。このジャルムーのミッションのダンジョン、あなた達がさっきやりたいって言ってた竜のウロコのミッションとおんなじ場所よ」
後ろでそれを聞いたクルーガーの直感が働いた。
このジャルムーのミッションは何か金の匂いがする。
ララの後ろで、ずっと仏頂面だったクルーガーの口角が少しだけ上がった。