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第99話 5分前の発火

12/10の更新に間に合わなかった分、12/12に加筆しました。

 2019年3月のある日のこと。警視庁刑事部捜査一課所属の長谷(ながたに) 貞須惠(さだすえ)警部補は、資料室の管理台帳を眺めていた。ここに来ることは誰にも言っておらず、1人。

 リストには、川喜多(かわきた) 拓駕(たくが)巡査の名前が記載されていた。数日前に、毛利(もうり) 貴之(たかゆき)の怪事件について、被疑者3名に関する調査指示を出した。長谷警部補が、川喜多巡査に対して捜査資料の閲覧許可を出していたから、何ら不思議ではないことなのだが……。当時の事件に直接関係しないような資料も閲覧していたようだ。

 長谷警部補が川喜多巡査に対して疑問を抱いたのは、そのときからだろうか……


    *


 2019年6月18日火曜日の夕暮れ。警視庁警備部機動隊の1つ、爆発物処理班に所属する菊佳和(きくかわ)警部が、港近くにあるレンガ造りの倉庫街で、不審物の処理を行っていた。

 菊佳和警部は、偶然にも現場付近にいたため、本部からの応援が到着する前に駆けつけた。不審物は、小型の箱であり、腕時計のような小さな時計盤と、それに配線が繋がっている基板が見える。箱は少し重く、火薬の匂いを感じた。時計盤の時間は、12時を示すまであと6分ほど。

 もしも時限式の場合、長針と短針が合致する時間に爆発するかもしれない。その場合、応援が到着する前に、爆発する危険性がある。とはいえ、図面や防具もなく、安易に解体はできない。まずは周囲の人々に避難を促し、不審物に対して冷却処理ができれば、止めることもできるかもしれない。液体窒素はなくても、ドライアイスなどで完璧とはいかないが、その場凌ぎで遅らせることはできるだろう。少し離れたところには漁港がある。そこに行けば、魚の運搬に使用されるドライアイスがあるだろう。もし避難が完了し、その上で往復が間に合うのであれば、試す価値はあるだろう。しかし、ギリギリだ。

 時計の長針が55分を差すと、予想外の出来事があった。不審物が、突然爆発する。小規模ながら、破片が飛び散り、爆風で倉庫のガラスにヒビが入る。

 不審物に最も近い距離にいた菊佳和(きくかわ)警部は、燃える爆風を受け、その場に倒れ込む。


    *


 同日、午後7時。特課所属の佐倉(さくら) 悠夏(ゆうか)鐃警(どらけい)は、倉知(くらち)副総監に声をかけられ、会議室に集まった。ここには、3人しかいない。鐃警はロボットなので、厳密に言えば2人だが、もはやそういう訂正は……いい……かな?

 資料や写真などはなく、倉知副総監は口頭で説明する。

「早速で悪いが、おおよそ40から50分ほど前に、ある漁港で小規模ながら、負傷者が出た爆発事故が発生した」

「テレビやネットで、爆発音がしたという情報が出ていた件ですか?」

 鐃警が未公表の爆破事件のことかと確認すると、倉知副総監は(うなず)いて

「警視庁の機動隊1人が、やけどを負って搬送された。爆発時に、少し距離があったことと、規模が小さかった結果、幸い命に別状はないが、倒れて頭を強打している」

「何かがキッカケで爆発したってことですか?」

「負傷した菊佳和警部によると、不審物には腕時計サイズの時計盤があったそうだ。てっきり、長針と短針が12時を示したときに起爆すると思い込んでいた結果、爆発に巻き込まれたそうだ。当時、55分を長針が示した瞬間に爆発したそうだ」

「11時55分ってことですか? 犯人からのメッセージですかね……?」

「メッセージなら、その場で誰かに見てもらう必要がある。メッセージ性という可能性については、否定しないが……。今回の場合は、偶然通行人が見つけて警察署に通報があったことから、爆弾の存在が判明した。メッセージ性を持たせるなら、見つけてもらわなければ意味が無い」

「確かに、そうですね。そこまで犯人が考えているのであれば……」

 メッセージ性については、今は議論しても分からない。飛び散った爆弾の部品は、鑑識が回収して調査をしている。

「爆発の規模は小さい。だが、来週のサミットに向けて、不安要素は排除しておきたい」

 来週の6月28日金曜と29日土曜の2日間において、G20サミット。正式名称”金融・世界経済に関する首脳会議”が開催される。各国の首脳が集まるため、今月は政府や警察も緊張が高まって、ピリピリしている。

「つまり、倉知副総監は、僕らに犯人捜しのお仕事を?」

「簡単に言えば、この事件の捜査協力。担当は、公安になる」

「公安部……?」

 よくドラマなどでは、刑事部と公安部が、火花をバチバチと散らしている描写が印象的だ。特課は刑事部でも公安部でもないので、いずれにしても関係ないが。


    *


 2019年6月19日。都内某所の居酒屋個室で、悠夏は公安部の人物と会った。厳密には、公安部の協力者だったが。

 悠夏が個室に入ると、すでに1人の男性が始めていた。お皿には、すでに中身が無くなった枝豆。ビールジョッキが半分減っている。小板橋さんは、50歳から60歳ぐらいだろうか。

「佐倉 悠夏です。もしかして、すでに始めて……?」

「俺は小板橋(こいたばし) 寿光(じゅこう)。どうぞ、座って」

 対面で座ると、どうしてもジョッキに目がいく。

「気になるか? 俺はもう公務員じゃないからな。これも、仕事ではないし。単純に、俺がプライベートでここに来たあと、あんたが来ただけだ」

 悠夏は心の中で首を傾げつつ、すでに酔っているのかと疑問視する。

「倉知さんが仰っていたんですが、小板橋さんは元一課だったと」

「いつの話だよ。それより、倉知が副総監ねぇ……。そうかいそうかい」

 やはり酔っているのだろうか。半分のジョッキしかないが、もしかしてすでに何杯も飲んでいたり……。そんな風に考えたが、初対面でそんなことを言えるほど、強くはない。

「あんたも、何か頼め、頼め」

 小板橋はメニューを悠夏に渡し、注文用のタブレットも渡す。

「じゃあ、私は烏龍茶で」

 それを聞いた小板橋は、おちょこで飲むような仕草をして

「なんだよ? 飲まないのか?」

「私は仕事中ですし」

「飲んでもいいんだぞ? 俺は告げ口しねぇし、共犯だ、共犯」

 なんだか、警察官とは思えないような発言が続いているような気がする。いや、分かっている。この人は協力者なだけで、警察官ではない……のだが……。

 烏龍茶が届き、一緒に小板橋が頼んだと思われる焼き鳥やら刺身も届いた。

「食え、食え」

 悠夏は「いただきます」と、一口食べると、小板橋が笑って

「あんた、最後に領収書、忘れるなよ?」

 いや、小板橋さんの奢りじゃなくて、これうちの経費ですか!?


To be continued…


ついに、こっちも間に合わない状況に陥りましたね……。

さて、タイトルと内容加筆は後日します。100話の前に99話を完成せねば、ね。


【12/12追記】

全体的に、加筆修正しました。12/10更新に間に合わなかった分です。当時、校正チェックもできないぐらい焦ってました。

今回はいつもより長い話になりそうですね。年内にどのくらい進むのか。今年は最後の更新日が大晦日ですし、次回は第100話で3桁になりますね。もう100話というべきなのか、ついに来たと言うべきなのか。ただ、やっと100話だなという気持ちは無いですね。毎週の積み重ねでしょうか。本当にやるかどうかわかないですが、ブログ掲載時の最多話数をもつ『黒雲の剱』を超えるまでは続けたいな。鐃警がロボットという特性が最近活かせてないので、どこかでそういう話もやりたいな。さて、これから第100話を書くか。

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