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第92話 発覚のキッカケ

 大阪府枚方市(ひらかたし)京奈阪(きょうなさか)に位置する、京奈阪カントリークラブ。付近の4つのゴルフ場のうち、一番お客が少なく、ロビーで待機している間、お客が1人も来なかった。悠夏(ゆうか)はちょっと気になって、公式サイトに貼られたリンクから、オーナーのブログを見てみた。どうやら、すぐ近くの国際ゴルフ場や、戦略的に工夫されているコースのあるゴルフ場、アクセスしやすいゴルフ場があり、ここは集客力が弱いのだと、オーナーが自虐していた。

 2時間ほどして、悠夏の携帯が鳴る。どうやら、動きがあったようだ。発信者は、八尾(やお)巡査から。

「特課の悠夏です」

「八尾やけど、挨拶とか、そんなんどうでもええねん。思わぬもんが、地面から出てきおったで」

「まさか……」

 相談者の言うとおり、出てきたのだろうか……。

「鑑識が言うに、犬らしいで」

「イヌ……ですか?」

 どうやら、相談者の言う彼とは、犬のことだったようだ。ペットの場合は、刑事部ではなく生活安全部の担当だったような。

「ちょっと厄介やで」

「厄介? どういう意味ですか?」

「その犬、誰かの服を着とった。まだ未確定やけど、もしかすると、この犬が人かもしれんて」

 八尾巡査の説明に、悠夏は首を傾げた。どうすれば、そうなるのだろうか。

「服は別の人って可能性は?」

「詳しく調査が必要やけど、鑑識がそう言っとった。獣人かもなって」

 話について行けない悠夏は、困惑。会話を聞いていない、鐃警(どらけい)憲吾(けんご)君も、悠夏が困惑しているを見て、互いに首を傾げた。なお、電話は続く。

「それと、弥刀(みと)巡査も考えたことなんやけど、もしかしたら、今回の騒動で犯人が憲吾君を狙うような可能性も考えられるから、十分注意してや」

「それは、被害者の発見に至ったから、ってことですか?」

「せやから、帰宅するときは、警戒させてや」

「警護については、分かりました」

「詳しい話は、後ほど。ほな、切るで」

 電話を切ると、悠夏はどう説明するか悩みつつ、鐃警から「どうでした?」と聞かれても、即答できず

「警部。事件です」

「知ってます。そんな、どこかのリポーターみたいに言われても」

「いや、そんなつもりは……」

 一先ず、憲吾君には聞こえないように、少し離れて鐃警に説明する。特課として、この後どう行動すべきかも相談しつつ。

「状況は分かりました。その獣人とやらが被害者であり、事故なのか自殺なのか、あるいは他殺なのかは不明。そして、もし殺人の可能性が考えられるとすれば、相談してきた女性と、偶然にも発見に繋がる動画をアップした憲吾君の2人が、犯人から狙われる可能性があると。警護については、我々では判断できないので、倉知(くらち)副総監に相談するのが良いかと。それと、事件については、遅かれ早かれ今夜にもニュースになるでしょうし、ある程度説明しておく必要がありますよ。犯人は投稿者が分からないと思いますから、憲吾君だけではなく、葉陽君の友人という理由で狙われる可能性も考えられますし」

「困ったときの、副総監ですかね?」

「当然ですよ」

 鐃警にそう言われ、悠夏は倉知副総監の携帯電話に連絡する。3コールほどで繋がり

「こちら副総監の倉知。どうした? 佐倉巡査」

「実は、大阪府警の事件捜査中ですが、2月に亡くなった葉陽君の動画が事件に関連していて、仮に他殺だった場合、葉陽君の友人たちに危害が及ぶ恐れがあり、ご相談したく……」

「では、詳しく聞かせてもらおうか」

 悠夏が事件に関して、詳しく説明をすると

「なるほど。まだ未確定ではあるが、子ども達に危害が及ぶおそれが少しでもあるのなら、警護を考えた方が良いな。こちらで、人手を確保しよう。しかし、関東に戻ってくるまでの間は……」

「それについてですが、山梨県警の韮崎(にらさき)警部に相談しようと思います。確か、帰りは今日だったかと。もし都合がつかなければ、私か警部が同行します」

「そうか。こちらから迎えに行けないか、調整はしてみるが、間に合わないだろうから、そちらはそれで頼む。他には、大丈夫か?」

「あの……、警視庁で獣人関連の事件って、過去にありましたか?」

「残念ながら、その答えは持ってないな。関係者に当たれば、あるかもしれないが、怪奇事件扱いで、一般的には普通の事件として処理されていることが考えられる」

「そうですか。一先ず、今は以上です」

 電話を切った後、今度は韮崎警部へ電話をかける。こちらも3コールほどで繋がった。

「特課の悠夏です」

「韮崎です。何かありました?」

「まだ大阪にいますでしょうか?」

「えぇ。あと2、3時間ほどで、山梨に戻りますが」

「あの……、お願いがありまして」

 悠夏は、事件のことについて簡単に説明し、憲吾君と東京まで同行できないかお願いすると

「事情は分かりました。東京に着いたら、警視庁の刑事さんに交代ですか?」

「品川駅で合流できるかと……」

 リニア中央新幹線は、品川が終点である。そうなると、韮崎警部は山梨で降ればよいが、同行のため、終点までお願いすることになる。韮崎警部はそれでも、快諾し、合流場所は担当刑事から連絡することになった。

 さて、長々と電話をしたが、憲吾君に説明をしなくては。そう思って、憲吾君のもとへ戻ると、鐃警が先に説明していた。

「佐倉さん。このロボットが言ってることって本当ですか?」

 何気にロボット扱いされたのは、久しぶりな気もするが、そんなことはさておき、

「例の祠付近から発見されたのは、事実です。憲吾君が葉陽君名義で投稿した動画を、犯人が見ていないとも限りません」

「そんな……」

「同時に、発見できたのは動画のおかげでもありますよ」

 鐃警がフォローするけれど、憲吾君は気まずそうな表情だった。


    *


 その夜、京奈阪カントリークラブの建物内に、大阪府警がセットした小さな会議室で、事件の詳細資料に目を通す。相談者の名前は、柴垣(しばがき) 夏枝(なつえ)。被害者の名前は、柴垣 駿稀(しゅんき)。2人は夫婦であり、子どももいるそうだ。夏枝さんは、32歳の女性で人間である。駿稀さんは、31歳の男性で獣人である。子どもの姿も気にはなるが、獣人とは何か。事件資料に記載があった。獣の姿と人間の姿のどちらも持ち、厳密にはどちらの種族かはっきりしていない。本件では、人間として扱う。

 大阪府警の捜査一課は、駿稀さんかどうか確認をお願いした後、夏枝さんから詳しい話を聞いている。ショックで、話せる状態になるまで少し時間がかかったが、今は落ち着いているそうだ。鑑識からは、崖崩れなどの事故に巻き込まれた可能性は、低いという見解が出た。一層、他殺の線が濃厚になってきた。

 捜査一課の身辺調査も、明日になればある程度出揃うだろう。捜査会議は、朝から始まりそうだ。


To be continued…


今回、火曜に書き上げたものの、投稿予約するのを忘れて、急いで15分前に予約しました。

さて、今回はほとんど電話で終わりましたね。次回は、いつもの捜査会議なのかな。


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