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第75話 コードネーム

 悠夏は商品を眺めつつ、周囲を確認し、インカムを使って報告する。

「こちら、異常なし」

 すると、インカムから

「ちゃんと、名前も一緒に報告してください」

 と、中学生男子の声で注意された。悠夏は仕方がなく

「えっと……、再報告。こちら、”マイビー”。異常なし」

「こちら、”シー”。店内の様子を窺うも、発見できず」

 と、青年男性の声で、笑わずに真面目なトーンで答えている。インカムからは、中学生男子の声で

「”ライトニング”、状況は?」

「こちら”ライトニング”。まだ大通りに、ターゲットの姿は見えません。”サンダーボルト”くん、そちらは?」

 ライトニングという人物は、ノリノリである。

「店内の監視カメラに異常なし」

 どうやら、サンダーボルトは中学生男子のことのようだ。

「こちら、”ラン”。駅前にターゲットらしき人影あり。”マイビー”の張り込み位置へ移動中。”フォーマ”さん、指示をください。あと、”フォーマ”さんは、いつ機種変するんですか? このままだと、使えなくなりますよ」

「大丈夫だ。26年までは使える」

「いやいや、機種変しましょうよ」

 ”ラン”が、”フォーマ”に機種変を薦める。さて、コードネームで書くのは大変なので、説明しやすいようにここまでの話を……

 2019年5月6日、昼下がり。東京都荒川区にて、捜査一課の3名と特課の2名が、斑鳩川(いかるがわ) 柊哉(しゅうや)からの通報で張り込むことになった。その際、コードネームを使いたいと提案があり、鐃警と藍川巡査が便乗し、呼称は各自の携帯電話などの通信端末が由来となった。悠夏は、2017年に買ったAndroidスマホがmicro-Bのケーブル端子だったため、”マイビー”。榊原警部は、今年Androidスマホを買い換えて、Type-Cのケーブル端子だったため、”シー”。藍川巡査は、iOSスマホを使っており(早い話がiPhoneである)、ケーブル端子がLightningのため、”ライトニング”。斑鳩川は、Mac OSのパソコンを使用しており、端子にThunderbolt 3があったことから、”サンダーボルト”である。そして、鐃警は携帯ではなく自身のコネクト端子がLANケーブルのため、”ラン”。最後に、今年で8年目という長寿のガラパゴス携帯を持つ長谷警部補は、FOMA端子だったため、”フォーマ”である。

 通報内容は、ストーカー被害である。斑鳩川のクラスメイト、鍋田橋(なべたばし) 啓汰(けいた)の姉、かなめという女子大学生である。直接的な被害は無く、斑鳩川が自力で容疑者を調べて、手書きの資料を作成していた。そこには、写真もあり犯人の名前も記載されている。

 斑鳩川は資料を悠夏達に見せつつ、

「依頼で遠出している兄ちゃんに、直接相談できないから、警察に通報するなら、連絡先を知っている人がいいと思って。子どもの言うことを信じないところには、相談するだけ無駄だと思ったし」

「被疑者は有城(うじょう) 秀康(ひでやす)。無職の男性。年齢は30代前半。住所まで。よく調べてたな」

 榊原警部が感心しながら資料を捲る。斑鳩川は、中学生とは思えない真剣な表情で

「依頼者は、直接的な被害はないと言っていたが、これを見て」

 指差した資料には、間接的な被害と書かれ

「SNSに、加工はしているようけど、盗撮した写真が上がってた。どうやら、投稿内容から察するに、恨んでいるみたい」

 長谷警部補は榊原警部から資料を受け取り、

怨恨(えんこん)か。しかも、とんだ妄想だな」

「それが妄想かどうかまでは、時間が無くて調べられなかったけれど、啓汰君が話してくれてた内容から、裏取りが1つ出来た。スーパーで値引きシールを貼ってくれなかった、っていう件。……で、電話した日の投稿を見たのが、通報した理由」

 そう言って、斑鳩川はパソコンにSNSの画面を表示させて、全員に見せる。悠夏が読み上げ、

「”今に見てろ、あの女。6日に懲らしめてやる”」

 さらに斑鳩川は、一枚のレシートを出し

「その日は、犯人を尾行していて、ホームセンターでコレを買ってた」

「ナイフか。直接結びつけるには時期尚早だが、最悪を考えれば……。これはどうやって?」

「購入したときに、レシートはレジのボックスに捨ててたから」

「依頼者にそのことは?」

 榊原警部が斑鳩川に確認すると

「本人は”まっさかぁ~”って、言ってた。顔は引きつってたけど」



 スーパーはコンビニサイズであり、店長を含めても3人ほどで稼働している。繁忙のときは、プラス1~2名である。

 時刻は21時過ぎ。レジは、パートのおばちゃんが対応しており、店長は斑鳩川と一緒に監視カメラを見ている。いざというときは、自分も飛び出して取り押さえるつもりである。その隣には、長谷警部補も待機している。商品が入った買い物カゴを持って、客に扮する榊原警部。(はす)向かいの服屋で、店先に並ぶ服を選定し、店員と話しながら客を装う、悠夏。大通りで通行人の装う、藍川巡査。駅前で、子ども達に風船配りをする鐃警。ちなみに、子ども達は斑鳩川が頼んだ小学生たちで、協力者である。

「被疑者、入店」

「こちらも確認しました。依頼者の安全を第一に」

 インカムを通して、監視カメラからの位置情報が流れる。藍川巡査と悠夏も買い物客を装って、店内へ。かなめは、お弁当や惣菜の値引きシールを貼っている。そこへ、被疑者が現れる。

 藍川巡査は、すぐ近くの冷凍食品の扉を開けて、カゴに商品を入れる。横目で気付かれないように、被疑者のほうを見る。榊原警部は、同じ列の乳製品や果汁飲料が並ぶ棚を見ながら、横目で観察。悠夏は一列隣で、タイミングを見ながら、お弁当の隣にあるパンを取りにいくつもりだ。藍川巡査が移動するタイミングで入れ替わる。

 かなめは、視線が気になり、被疑者に対して

「お客様? どうされました?」

「なんだ? 常連客のことを憶えてないのか?」

「あっ、いえ……その……」

 と、気まずそうな表情でその場を立ち去ろうとすると

「おい、待てよ」

 そう言って、被疑者がナイフを見せ

「日頃の鬱憤が溜まってんだ。悪く思うなよ」

 そう言って、ナイフを振りかざそうとしたが、後方から榊原警部が被疑者の腕を掴んで阻止し、悠夏は被害者を連れてその場から急いで離れる。すると、店長まで現れ、被疑者が投降するかと思えば、体勢をかえて榊原警部の方へ

「気をつけろ。手慣れてる」

 榊原警部は一歩下がる。今度は、犯人の後方を藍川巡査がタックルし、

「現行犯!」

 被疑者を押し倒す。「ナイス。ライトニング」と、言いながら榊原警部もフォローに入り、被疑者からナイフを取り上げる。

「おい! どういうことだよ! お前ら警察か!?」

 被疑者は、なおも暴れる。

「落ち着け。手錠で手首を痛めるぞ」

「落ち着けるか!」

 情緒不安定のようで、その後も叫び続け、パトカーに乗せても外まで聞こえそうなくらい、叫ぶ表情が窓越しに見えた。


To be continued…


今回は、コードネームで呼び合うことがしたかっただけです。各キャラの携帯電話事情はさておき、開発作業でたまにMacを使うことはあるけれど、Thunderbolt端子は使ったこと無いな……。作中での描写はないのですが、使うとすれば有線LANコネクタを接続してるとか……ですかね。店内のネットワークカメラの映像を見るために、ハブに差し込んでるとか。

さて、久しぶりの1話完結でした。都心に多いコンビニサイズのスーパーって、なんて表現すればいいんですかね。小型スーパー? なにかと便利ですよね。

斑鳩川君については、今後もちょくちょく登場するかも。あと、最近特課と捜査一課が合同で捜査することが多いので、そろそろ別の部署との話を展開しようかなぁと思いつつ、まだ次回の話は決めてないです。

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